第5話 お楽しみの時間2

少年は、怖いはずなのに私達に心配をかけまいと造り笑いをしながら拷問器具へとゆっくり向かった。

明らかに私よりも年下の少年が、見ず知らずの私達が争い会うのを見たくないという理由だけで拷問器具に自ら歩み寄る。これだけ見ても、かなり強い精神力なのだろう。

私が、少し強張った顔で不安を抱いていると、その不安を煽る様な放送が開始された。

「ルールの確認です。」

先ほどとは真逆の、冷静な口調で話始めた。私達が争いをせずに受け手を決めたからだろう。

「まず受け手は、ステージの椅子に固定されます。その受け手を切り手が、置かれているナイフで皮膚や部位を切り取って下さい。その後切り取った部位を天秤に置きます。出た血の量が3Lを越えれば皆さんの上から作動している器具が止まる事になります。もちろん、受け手以外から採血して、それを天秤に乗せるのはルール違反ですので、全員まとめて串刺しになります。それでは始めてください。」

ルールを聞いて少し安堵した。椅子の見た目がかなりおぞましく感じる物だったので、それとは裏腹な、簡単でシンプルな物だった。そもそも、拷問をシンプルと考えてしまう事ぐらい、私自身狂っていたのだろう。

「じ、じゃあ、始めるよ、なっ、なるべく痛くしない様にするから。」

狂人の顔は、高揚感に満ちていた。自分以外を切った事ない、そもそも信用できる人など彼の周りにいたのだろうか。

私が考えていると、彼はナイフを素早く彼の一番被害が少なく、血が出やすい足の太ももを選んだ。

「――――――!!」

狂人は驚いた顔をしていたが、その答えはすぐに分かった。

「こっ、このナイフ切れない。」

よく見ると、少年の足を見れば傷ひとつなかった。だが、あれだけ素早く切りつけられたのだ、赤く腫れていた。

少年は、痛みに苛まれながら必死に耐えていた。

ナイフ単体で見ると、切れ味の良さそうなナイフだが、よく見ると、刃の部分が研がれておらず、もはやナイフの役目を果たしていない様な粗悪品だった。

「――――――あっ、あれ?」

狂人のナイフを持つ手だけ吹き飛ばされ血飛沫を上げていた。

「言い忘れていましたが、切りつけるのを失敗するのに対して、切り手にはペナルティが課せられます。」

恐らく分かっていた様な口調で嘲笑うかのようにゲームマスターは言った。

そして、狂人の腕は飛ばされてから、元の姿に戻った。

「こっ、これじゃあ、切りつけれない。」

狂人は、すぐに切れ味が悪い方のナイフを捨て、自前のナイフを取り出した。

そして切りつけようとしたが、すぐに足が吹き飛ばされた。

「その付属のナイフだけをお使い下さい。それ以外は使用不可です。」

マスクから見える目は、笑っていないのに、心の底からケタケタと嘲笑う様なゲームマスターの口調だった。。

「どっ、どうすればいいんだろう。」

狂人は、焦っていた。ただ切れないから焦っていただけでなく、人を思う気持ちもあったという事だろうか。

「言ったはずです、僕を切って下さいと。だから、最大限の力と速さ、ナイフの場所を考えて切って下さい。」

少年は、痛みで脂汗をかいていたが、相変わらずの作り笑いを見せながら言った。



――――その答えに対して、狂人の答えはYESだった。――――――

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神人ゲーム~自殺はご法度です~ くぼってぃー @061511060801

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