第5話
「うみちゃんに,酷い事言うのは許さない.」
つきちゃんが話した.
何だか庇ってくれてるみたい…
「え…
んじゃ,お前,何を?
何か言って欲しい訳で,
こういうまどろっこしい事してるんじゃないの?
だいたい…
今,ボランティアで来てる俺に扱い悪過ぎよな.」
赤い髪の男の子が少しいらだったように話した.
「だって…
祓う時は手伝ってくれた方がいい…」
「…はぁ.
惚れてる弱みで言う事聞きますけどよ.
んじゃまぁ,
穏やかにお話ししませうよ.
うみさん…
だっけ.」
あぁ…
もう,ばれてるし出るしかないです…
「はい…」
「つきは,今,男です.
新月に向けて男になります.
んで,満月に向けて女になります.
日頃は,俺たち姿は見せません.
今回は,つきが希望しているから
合わせているだけですけど…
本当は今すぐ,つきを戻したい.
帰るように話してください.」
近くで抑えたように話す男の子の髪は赤かったし,
目も威圧感があって赤く燃えるようだった.
確かに…
女の子にしては違和感があったけど…
「今,男の子なんだ…
そして,女の子にもなる事が出来るんだ…
?」
右上見たり,
左上見たりする私に,
つきちゃんが笑った.
「今,私男なんですよ.
一緒に戻っても良いですか?」
つきちゃんが笑った.
「うぅ~ん…」
男かぁ…
男なのかぁ…
「いつも公園の猫ちゃんを拾って
帰るとこ見ていました.
どうやったら拾って帰って貰えるかなって,
計画的でしたよ.」
つきちゃんが余裕で続けた.
「綺麗な顔傷つけてまで…
飽きれるわ…
もう人間ごときに惑うなよ.
こいつは月に帰って貰う.
もしかして,本当は分かってたから,
女って思い込んでたんじゃないのか.
正常化バイアスってやつ.
男だったら拾って帰られないよな.」
はっ!?
好き勝手に何言ってんの.
「ちょっと待って!
赤い人!!」
「赤い人!?
俺の事かっ!」
「うん.
髪も目も赤い人.
ちょっと黙って.
落ち着いてっ.
つきちゃんは,どうしたいの?
月…?に帰りたいの?」
「いや…
あんまり…
帰りたくない.
何も無いよ.」
寂しげにつきちゃんは笑った.
「おいっ!」
赤い人が声を荒げた.
「でも,事情は分かるよ.
うみちゃんを送って行く.
そして,私も帰るよ.
心配いらない.
お前は先に行けよ.」
つきちゃんが,それぞれ見ながら
そう言った…
赤い人は,
「あんたが地球の膿(うみ)じゃなけりゃいいな.」
って捨て台詞を吐いて消えた.
消えた…?
しかも,いちいち突っかかる…
つきちゃんと一緒に歩いて家まで歩く.
パッパッと姿を消しながら進んでたでしょって
聞きたかったけど聞けなかった.
ドアの前で,
「お布団…
片付けられなくて御免ね.」
って,つきちゃんは言いながら…
私の服だけパサッと残して姿が消えた…
月のカルマ 食連星 @kakumi
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