第12話 始めに戻る

 俺は、どうやって部屋に戻ったのか覚えていないが。

 気付くと、ベットに寝ていた。


 終わったんだ。

 出て行かなければ、行けないのか。


 あれこれ、考えてみるが。

 追放は、確定。

 師匠とユウト達の帰還を当てにする以外ないのか?


 そんな時、扉がノックされる。


 「ユウイチさん。起きてますか?サミです」


 ?いつも強気なサミさんが、随分弱気な感じだな?


 「はい。起きてますよ」


 と、扉を開けて中に入って来たサミさんは。

 泣いた後だろうか?

 目が充血していて、目の周りも赤い。

 擦ったりしたのかな?


 「昨日の事。覚えていますか?」


 「何となく。自分は、マミアさんを救うことが出来ず。聖女が、救った。そして、俺はマミアさんが目を覚ましたら。城から出て行かなければならない。現状、そんな感じですか?でも、ユウトや師匠が帰ってくれば何とかなるかと」


 「実は、姉が目を覚ましました」


 マジか!

 終った。

 俺が、ガックリとした姿をしていると。


 「もうすぐ、貴方は出て行かなければなりません。ですが、何もしないのは私としては心苦しく。私から、マントや剣。冒険者に必要な物。それと国から、金銭と食料をこちらに用意しました」


 そう言って、サミさんは小さめの袋2つとマント、剣等を床に置く。


 「俺は、マミアさんを救う事が出来ませんでした。ですので、サミさんから受け取る訳には…」


 「気にしないで下さい。元々ヤンバーとも、これらは渡す予定でした。ヤンバーは、付いていくとも言っていましたが。どうやら、国の策略でヤンバーは帰らぬ人になるかも知れません」


 嘘!

 師匠の危機!


 「サミさん!今から俺が行って間に合いますか?」


 「無理でしょう。他国、ハーミットから協力要請が来て。魔物討伐の予定でしたが。どうやら、ハーミットと一緒に始末する計画だったようです。ただ、ヤンバーは途中で気付き逃げたようですが。行方は、わかりません。それに、あなたに戦う力はありませんし…」


 「そうですね。でも、ハーミットに向かう事にします。行く宛も、ありませんしね」


 「そうですか。…方向は、わかりますか?」


 「大丈夫です!優秀な師匠が、2人もいましたから。今までお世話になりました」


 と、そのタイミングで。


 バン!バン!


 「おい!起きろ!クズ野郎!今日お前を、俺が追放してやる!サッサと出て来い!」


 タイミングが、いいのかな?


 師匠の元へ、急ぐ必要もあるし。

 サミさんは、俺の考えている事がわかるのか。

 床にある荷物を、手渡して来た。


 「ヤンバーの事。お願いします。あれでも、いないと。寂しく感じるかも知れませんから」


 「わかりました!ここに連れてくるのは、難しいかも知れませんが」


 お互い笑顔になり。

 荷物を受け取った俺は、部屋の外へ。


 どうやら、他の異世界人だけで無く。

 ソラーノもいる。

 ニヤニヤしやがって、いずれ泣かせてやる!


 「おいクズ、その荷物はなんだ!部屋の物を勝手に持ち出すな!」


 「失礼、勇者様。これらは、国と私からの餞別となります。ユウイチさんが、盗んだり等致しません」


 「それは、失礼。ですが、クズには何もいらないのでは?どうせ、この世界で生きていく事なんて出来ないのですから」


 イヤイヤイヤ!

 俺が、城から出たら死ぬ確定みたいに言うなよ!

 わかんないし、でも城から出たら殺す気なのかな?

 それなら、すぐにこの国から離れないと!


 「勇者カズヤさん、それに皆さん。この世界で、お互い頑張りましょう!そして、さようなら」


 「まて!話は終わってない!その荷物は置いていけ〜」


 何やら周りが、騒がしいが。

 気にせず、出口に向かう。

 思えば、城の外に出るのは初めてだ。


 ここから俺の、異世界が始まるんだ!


 意気揚々と、城の外へ出たが。


 なんでこうなった?

 ホントなら、師匠2人に鍛えられ。

 万全の体制で、この国から出て行く予定だっだのに。

 自分の、スキルの使い方さえ理解できないまま。


 城の前に、1人佇んでいる。


 右手には、お金の入った袋。

 左手には、食料の入った袋。

 腰には1本剣をさし。

 服装は半袖と長めのズボン。

 軽めのマントをつけて。


 城の外は、城下町?なんて言えそうな景色だ。

 木造の家が立ち並び、何人もの人達が行き交っている。


 さて、まずはこの国から逃げよう!


 この道を、まっすぐ行けば。

 冒険者組合があり。

 まずは、登録するように師匠が言ってたっけ。


 風景を楽しむ事などせずに、冒険者組合の建物を目指す。


 すると、何やら騒がしい場所が見えて来た。


 「オイ、お前らはランク外なんだからデケェ面して入って来るじゃねぇよ!」


 どうやら、冒険者どうしの争いのようだ。

 道端に倒れている、女性の前に。

 図体のでかい男が、間に立っている。


 「冒険者になりたてなんだから、ランク外に決まっているだろう!態度か気に入らないと、突っかかって来るのはおかしいだろう」


 「まだ、スライムすら倒していないお前達に依頼なんかねぇよ!まずは、近くの森で戦闘でも経験して来いよ!」


 まわりの人間は、止める気配はない。

 これから、冒険者登録する俺もランク外になる。

 他人事とは思えないけど、どうするべきか悩んでいると。


 「いい加減にしろ!冒険者組合の前で、面倒を起こすならペナルティを食らわすぞ!」


 どうやら、ハゲ頭の人が止めてくれるようだ。


 その言葉で、両者。

 無言となり、えばっていた奴らはどこかに行った。


 ランク外の2人は、止めてくれた職員?にお礼を言って中に入って行く。

 ホッとしながら、俺も中に入ると。


 正面に、カウンターのような場所に。

 間を空けて、人が立っている。


 確か、1番右側が登録する場所だと師匠が言っていたので。

 そこにいる人に、話しかける。


 「すみません、冒険者になりたいのですが。ここで、登録できますか?」


 「はい。ご利用ありがとうございます。冒険者組合について、説明は必要ですか?」


 「いえ、一応師匠達に聞いているので。大体把握しています」


 「そうですか、ですが規則なのでテストをさせて頂きます」


 すると、目の前に紙が出される。

 サミさんに、問題を出されたりしていたので。

 簡単だった。

 Sランクからランク外までの事や、討伐部位について。

 ちなみに、文字は不自然な程。

 読み書き出来た。

 日本語でも、英語でも無いのに不思議だ。


 「ありがとうございます。テストも完璧ですね。もしよかったら、師匠達とはどなたですか?」


 「あ~。内緒なのですが、S級のヤンバーさんと。A級のサミさんに、色々教わりました」


 かなり驚いたのか、受付の男性は慌てて奥に行ってしまった。


 トラブルの予感が、半端ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界から集団で召喚されたけど、能力が解除しかなく捨てられる @dairidai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ