第11話 はめられた
昼食を取って、いつもの訓練場所に来ると先客がいた。
「おっ!やっと来たか!おい、クズスキル!ちったぁ成長したのか?」
そう絡んでくるのは、確か勇者?名前は…何だったかな?
この世界の女性、それも3人連れて俺が来るのを待っていたようだ。
「どうも、勇者さん?でしたか?なんの御用でしょうか?」
「勇者カズヤ様だ!マヌケ!ちゃんと覚える事も出来ないんじゃ、この世界で生きていけないんじゃないか?」
何やら楽しそうに、女性達と盛り上がっているが。
ようがあるなら、早く済ませていなくなってほしいのだが。
「あのう。勇者カズヤ様はどのような御用があってこちらに?」
「ん?この世界の人達がな、お前のような使えない人間がこの城にいるのはおかしい。そう聞いたもんでな、異世界人として俺が何とかしてやろうと思ってよ」
何やら、女性達がカッコイイだの。
流石勇者カズヤ様だの。
言っているが、サミさんを見ると呆れているようだ。
多分ユウトが。
この国が、異世界人達を保護しなければならないと魔法で契約してしまった為。
自分達では、どうにも出来ず。
こいつを、誘導して俺を厄介払いしたいのだろう。
俺を、追放した所で。
対して意味を、なさないと思うのだけれど。
何を、考えているのやら。
「勇者カズヤ様は、この国の為にユウイチさんをどうにかしようとお考えなのですか?」
ここで、サミさんが質問してくる。
「いつも、このクズに指導している美しい女性ですね。いつも大変でしょう。すぐにこいつを追い出しますで、後でゆっくりお話でもいかがですか?」
周りの女性達は、サミさんを睨んでいる。
嫌われてるのかな?
「勇者様の、お気持ち有り難いのですが。この方には、私の姉を助けて頂かなければなりませんので。お気になさらないで下さい」
「そんな他人行儀ではなく、カズヤと呼んで下さい。このクズに出来ることなら、他の者にもできることでしょう。それに、クズスキル持ちのこいつには何も出来はしませんよ」
さっきから、クズクズうるせえな!
いつか、絶対泣かせてやる!
「それに、私はA級。この方の師匠は、S級の冒険者でもあります。簡単に、この国の人でも追放は出来ないと思いますが?」
なんでも、S級冒険者は国にとって大切な存在で。
無下にしたりすると、冒険者組合からも反発があり。
下手をすると、国が滅びかねないんだとか?
詳しくは、知らないけど。
少なくとも、この国は俺を追放出来ないと聞いた覚えがある。
「同じ異世界人として、恥ずかしいので。私の判断で追放しようと、国は関係ありませんよ。それに、他の異世界人達からも同意を貰っています」
「他の異世界人達とは、何人いるのですか?」
俺は、いても10人位で。
ユウトに、助けを求めれば何とかなると思っていた。
「おいクズ!よく聞け!ほぼ全員の意見だ!」
え?
そんなバカな!
んなわけあるかい!
そう思っていたが、城からぞろぞろ異世界人達が集まってくる。
どうやら、ユウトとセイカそれにトオルはいないようだ。
「見ろ!ここにいる全員が、お前の追放を願っているんだ!さっさと出て行け!」
「ユウト達が、見当たらないのは?」
「あぁ、そいつらは今日始めてダンジョンに行っているぞ!俺様を差し置いて、勝手な事をしやがって!お前も連れて行こうとしていたがな!いいじゃないか、追放されれば行き放題だろう!」
俺達以外が、盛大に笑い出す。
こりゃ、はめられたな!
よく見ると、後ろに。
ソラーノと、バーリスと、それに第3王子ヘンリーもいやがる。
ユウトがいないタイミングで、俺を追放する。
良い考えだと思うが、俺を追放した所で。
何も、変わらないと思うんだけど。
ユウトの味方を、削る作戦?
洗脳出来ない人間はいらない?
まぁ、それは後で考えるとして。
どうすれば、今を乗り越えられる?
少なくとも、師匠が帰ってくれば。
何とかなると、思うんだけど。
追放された後に、殺される未来が見える。
「おい!何を考えてるか知らないが、早く出て行け!ここに、お前の居場所はない!」
「この国は、契約上。俺を追放する事は出来ないはず!そこにいる、ソラーノさん契約を破棄するのですか?止めて下さい!」
「私共は、勇者カズヤ様を止めましたが。聞いてもらえないのです。これは、契約破棄にはなりませんので仕方ありません」
ダメ元で、言ってみたが。
やはり無駄らしい。
これは、詰んだな。
「勇者様。私の姉を、この方が治すまで置いて貰えないでしょうか?」
「そこまで仰るなら、今から行って治して貰えば宜しいでしょう。もしコイツで、無理ならば私共が治しますよ」
そう言う、勇者カズヤの顔が。
自信満々と、いったふうに見えたので。
これは、茶番?
俺には治せないけど、コイツラなら治せる確信でもあるのか?
「では、参りましょう」
そこで、ソラーノが先頭に案内を始める。
俺はまだ、スキルを使いこなせて無い。
どう考えても、俺が追放される未来しか見えないが。
何とかするしかない!
何も、思い浮かばないまま。
マミアさんの部屋についてしまった。
サミさんの要望で、入るのは。
俺、サミさん、勇者カズヤ、ソラーノ、後異世界の女性1人。
確か、聖女だったかな?
なる程、聖女なら治せると思っている訳だ。
でも、前にセイカの聖女スキルを使って貰ったが。
治らないのは、確認済み。
そんな事より。
「では、ユウイチさん。お願いします」
下卑た笑いをしながら、ソラーノが促す。
サミさんを見ると、悔しがるような顔をしているが。
小さな声で、お願いしますと聞こえた。
俺が、ここに残るには。
治す以外無いようだ。
マミアさんに近づき、胸元を開く。
黒い物体は、前より大きく見える。
苦しそうなマミアさんの顔を見て、絶対治すと。
自分の事も忘れ、右手に力を込め。
その、黒い物体に触れる。
何か、右手から入って来ようとしているように感じたが気にしない。
ソラーノと、サミさんが驚いているのがわかる。
「さわるのか!」
「大丈夫ですか?」
二人の声を無視して、
『解除』
そう、心の底から叫ぶ。
が、変化は見られない。
周りは、無理だったと諦めていたが。
俺は、諦めずに。
治れ!
だとか、解除だとか。
心の中で、叫び続ける。
「そろそろ諦めたらどうだ?このクズ!」
そう言われても、俺は動かない。
「おい!いい加減にしろ!」
そう、カズヤが言ったとき変化があった。
部屋中が、光を放ち。
皆の目をくらます。
ユウイチ自身、目を瞑っていて気付いていないが。
暫くして、光が収まり。
ユウイチ以外の4人は目を開ける。
でも、先程の光景と何も変わっていない。
「何だったんだ?」
皆が不思議がる中で、ユウイチは目を開け。
変わらない、マミアさんの姿を見て諦めるしか無かった。
「やはりな!このクズ!サッサッとどけ!」
そう言って、俺の腕を引っ張り。
俺は、勢い余って壁に激突する。
「さぁ、次はお前の番だ!」
「は、はい」
慌てて、聖女?の女性が何か唱えると。
軽く光る。
すると、先程まであった黒い塊が消えていた!
これには、ソラーノも驚いている。
「そんなバカな!」
「流石、異世界の聖女!俺達は、クズ以外優秀なんだ!」
俺は、事実を受け入れる事が出来ずにボーとしていた。
「これで、こいつが無能だと証明出来たな!美しき女性よ。クズを追放して宜しいですか?」
「まだ、姉が目覚めてません。せめて、目覚めるまで彼をここに置いて下さい」
「それ位ならいいでしょう。この美しき女性に感謝しろよこのクズ」
俺は、終わった。
と、色々諦めた。
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