アイドルでなければならない理由をここまで作り込んだ作品があっただろうか

アイドルの魅力を小説で描くことに命を賭けているような作者の新作。
軽妙なコメディのやりとりや、健気で可愛いヒロイン達の魅力も光る作品だが、何より驚かされたのは、「異世界でアイドルグループを結成することの必然性」に一切の矛盾なく道理が通っていることである。

「かつて、民衆の支持を魔力に変えて魔物と戦う歌姫という存在があったが、時代の流れによってそれがオワコンと化している」
「魔物とは普通の兵隊でも戦えるが、歌姫が戦う場合と比べて犠牲が大きく、徴兵によって国中が疲弊している」
「そんな世界に現世のドルオタが転生し、アイドル文化を持ち込むことで歌姫の再興を図る」
「アイドルの力で広い国土を守るため、A○B48ばりの多人数グループを各地に展開することを構想する」

……と、「異世界にA○Bのような巨大アイドルグループを作らなければならない理由」が完璧に作り込まれ、かつそれが簡潔に作中で説明されている。
これはもはや作者の執念である。そうまでしてアイドル物を書きたいのか?と笑いすら漏れてくる。
この世界観をもとに作者がどのような物語を描くのか、今後の展開が楽しみな一作。