発表以来、何かと話題に挙がるこの作品。
最初は「国民総アイドル社会」というタイトルのインパクトだけで騒がれているのかなと思ったけど、ちゃんと読んでみると違っていた。
これは硬派なディストピアSFと瑞々しい青春物語が鮮やかに融合した奇跡の作品だ。
第一話からいきなり独特の世界観に引き込まれ、ヒロインの脱退の謎、ヒロインを助けようとする主人公の思いにぐいぐいと引き付けられる。
話数が進むにつれて徐々に明らかになっていく陰謀の真相、そして「国民総アイドル社会」の全貌とその歴史。
最初から全てを説明してしまうのではなく、あくまで物語の自然な展開に落とし込みながら設定を見せていく書き方が実に上手い。
レビューを見ると、クライマックスのライブ対決を最も感動するシーンに挙げる人が多いが、その直前の握手券のくだりもなかなか泣かせる。
「アイドル」を題材にしていなければ描けないほのかな恋物語に思わず泣いてしまった。
題材と前評判で敬遠している人にこそお勧めしたい。良い作品です。