第二十六話『集会サイミン』
「さて、皆あつまっているな」
この度の襲撃により急遽、ダンジョンさんによって作られた空間。俺と一緒に居た5人によって、ある程度の情報は共有されている。
「えー、まず最初に。今回やって来た招かれざる客達は俺が処理した。だから当分は安心だろう」
安堵したように胸を撫で下ろす子供達。
「ですが、送った兵士が帰って来ないとなれば、追加の部隊が送られてくるかもしれません」
聡いのは年長組のサイだ。俺の危惧している事を的確に言い当てている。
「そうだ。つまり、この後俺がなにを言わんとするか、分かるか?」
「追加が来ないよう何かしら対策を講じよう……?」
今度はエーファが答えた。
「その通りだ」
さて、ここで問題だ。俺は今どうすれば良いか打開策を全く思い付いていない。しかし、みんなの長として、それはあまりに威厳がなさ過ぎるのでは?
「みんなどうしよ?」
などと素直に言ってしまっては、信用問題なのでは? なんて考えていた。どうにか上手く誤魔化しつつ、妙案を得られれば……
脳をフル回転させる。
「さぁ、みんな。なにか案があれば聞かせてくれ」
ショートしかけたので、脳を停止させて普通に尋ねていた。そういや威厳とか元々なかったわ。ない頭使っても無駄無駄。
「えっと……私、魔法で簡単な催眠をかけれます……けど……」
年長組のルイディナが手を上げオドオドしながらそう言った。
「それは本当か?」
確か、獣人は魔法が得意ではなかったはず。それなのに魔法が使えると……しかも、催眠という特殊なものが……
ルイディナが売られる予定だった相手は、獣人の少女しか性的対象に出来ない変態貴族だったか。その貴族に催眠を掛けさせ、己が手駒にしようとでもしてたのかな。なんとも悪趣味なことで。やっぱ殺しておいて正解だった。
「ならルイディナに催眠をかけて貰うか」
「でもよ、にぃちゃん! もし、魔法がなくなったらどうするんだよ? またその変なのが来ちゃうかもだろ?」
最後の年長組エントマの発言は一理ある。魔法がきれた場合の保険も用意しておいた方がいいな。
「それならば契約をさせればよろしいかと」
「契約?」
エーファが説明をする。契約とは、商人などと取引する際に用いられるもので、特殊な紙とインクを媒体にした魔法である。その紙に書かれた内容に互いが合意し、サインすると効果が発動される。もし、その紙に書かれている条件、ルールなどを破った場合、罰を受ける。その罰の内容もあらかじめ契約内容に明記しておかなければならない。
「なるほど。催眠魔法で操り、契約をさせると」
「契約違反をした場合、死ぬようにしておけば疑われることなく処理できるかと」
「その案、採用だな」
「ありがとうございます! では早速作業に取り掛かりますね」
「これも勉強だろう。年長組三人も一緒に行きな」
そう指示して、他の者には解散してもいいと伝えた。
これから変な輩に遭遇することも増えそうだ。子供達にはしばらくの間ダンジョン内で過ごしてもらおう。
ほとぼりが冷めたら外で訓練でもさせるか。
それにダンジョンも広げていきたいし。
前にも一回考えたが、他のダンジョンに視察をしに行ってもいいな。
なんて色々と考えながら椅子に座り、いつも通りくつろぐのだった。
新築ダンジョンのラスボスとして産まれました クー @coo_caff2000
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