第18話 まゆの悩み事
「では、これより作戦会議を始める」
そう私の声が、二条城の本丸御殿の咲輝の居室で開いた。もう夜が更けているがそんな事を言っている暇もないのである。
「陛下、なぜこのような時間に会議を行われるのですか?」
そう萌花が、聞いて来た。まぁ、確かにそうだろう。なんせ、軍議なら明日の朝からやれば別にいいのだ。
「式神砲、それの小型が作られていたわ」
そう私が、言うと辺りが静まり返った。そんな中、琴音が私にこんな事を言って来た。
「陛下、優斗は何か申していましたか。かの者が所属している猫ノ宮では、製造が不可能では無いかと考えます。」
「確かにそうだね、猫ノ宮単体であれば……」
「あのー少しよろしいでしょうか?」
そう咲輝が手を挙げて私の方を見たのだ。
「なに?」
そう言うと咲輝が一丁の銃を出して来た。それは、優斗が使っていた銃と瓜二つの物であった。
「なに、この銃は?」
「それは、この世界に一般的に広まっている銃です」
そう言うと咲輝が、この戦闘が起きるまでに起きた世界の変化について説明をした。
「‥‥…と言う事なのです」
そう咲輝が言うと琴音と萌花は、どこか納得いくような感じであった。しかし、私だけが理解出来なかったのである。なんせ、この数ヶ月で起きた出来事とは、言えない物なのだ。
「あのさ、萌花ごめん。さっきの話の説明してくれない?」
そう私は、萌花に頼んだ。そうして萌花は、深い溜息を洩らした。
「陛下、要するに現在存在する国家において、陛下みたいな人間が現れたと言う事です」
「つまり、私の似た様な人間の誕生により従来の戦いでは勝てなくなったと言う事?」
そう言うと萌花は、首を縦に振った。そうしてしばらくの沈黙が生まれた。
「あのさ、これって内府は知っているの?」
「ご存知です、朱音様も既に知っており本国で、陛下の式神砲の正式な配置を決めたとのことです」
そう琴音が言うと私は、少し引っかかった事がある。それは、数ヶ月で起きた出来事にしては不自然であると言う事である。だって、かつての世界で空想として描かれた世界をこの世界に来て見る事になるなんか不自然としか言えないのである。
まぁ、あの子にまた聞いたらいいか……
そう呟いて私は、萌花と琴音と咲輝に指示を出す事にした。
「琴音は、咲輝の率いていた残存兵力と萌花の兵を率いて播磨及び摂津方面に侵攻を開始して、私と萌花及び咲輝で丹波攻略を行うことにする」
「よろしいのですか、陛下?」
そう萌花が聞いて来た。
「別に構わんよ、主力は播磨に配置しているだろうし、皇帝なら自分の兵しか率いていないから」
「そうですか、ところでいつ出陣されます?」
そう萌花が私に聞いて来た。
「三日後の朝に琴音隊を出撃させる。配置は、播磨方面の総大将、若宮琴音で副将をショウが務めよ。丹波及び但馬方面は、私と萌花と咲輝と私の一個小隊で向かう、それ以外の兵は琴音が率いる事にする。」
「御意、陛下」
そう返事をした。私にとっては、未だにこの陛下と言う呼び方には慣れないものである。そう言って私は、咲輝の用意してくれた咲輝の姉が泊まる用の部屋に戻った。
「はぁー」
そう部屋に敷かれた布団に倒れ込むと深いため息が自然に漏れた。いよいよ、冬華との対決が始まると思うと複雑な気分である。そう思いながら深い眠りについたのであった。
「久しぶり、まゆ」
そこにはぐったりとしたまゆがソファーで寝転んでいた。
「あー、結奈、お久しぶり」
そう言うとまゆは、ソファーから身体を起こした。
「ところで、なんで私の所で数日しか経っていないのになんで会えたの?」
そう私が聞くとまゆは、目をそらしたのであった。それを見た私は、すぐに察してしまった。それは、まゆの世界において半年ぐらい経っていると言うのではないかと考えた。
「あのさ、まゆもしかして疲れすぎて私を呼び出したとかない?」
そう言うとまゆは、目をそらした。違う世界線の私であるから、ある程度分かるものである。恐らく、疲れすぎてまたあの時みたいな事をしてしまうのではないかと思って、それを防ぐために私を呼び出したのではないかと思った。しかし、そんなことを言っては彼女を傷つける事になるのを知っていたから私は、そこを触れずに彼女に聞いた。
「あのさ、まゆ最近どうしていたの?」
そう、何気も無い質問だ。それ以外、彼女を傷つけずに聞く方法は無いのである。そして、私も彼女に聞きたいことがある。それは、以前に遭った時に見かけた転がって行った一冊の本の内容である。
そう私は、まゆに聞くとまゆがぐったいした身体を起こしながら私の質問に答えたのだ。
「いやー小説を書く気力と言うか、またあの悲劇を起してしまわないか心配で……」
そう言ったのだ。あの悲劇とは、私がこの前に遭った時に話をしていたことであろう。しかし、数日前に遭った時にはそこまで追い詰められている感じはなかったのだ。しかし、この数日間でまゆの世界に変化があったのは、間違いないのであろう。
そこで私は、疑問と取引にまゆの相談に乗ると言う事を考えた。恐らく、まゆには読まれているのかもしれない。そして、私の質問が自分を傷つける事になっても、それでまゆが救われるのなら構わないそう思い、私はまゆにこんな提案をした。
「あのさ、まゆ私の質問一つ答えてくれたら悩み聞こうか?」
そう言うとまゆは、小さく頷いた。
「どうせ、君の人生の出来事についてでしょ?」
そうまゆは、言ったのだ。さすが、まゆだ。私の考えなんか、読まれているのかと思った。その瞬間私は、この問いについて答えてくれないのではないかと思った。
するとまゆは、こんな事を言って来た。
「あのさ、仮に私が君の
そうまゆは、私に聞いて来た。私は、一体どういう事なのか分からなかった。でも、まゆの悩みはそう言う事なのでは無いかと同時に考えてしまった。
「わ、私は、まゆの書いた人生でも特に何も思わない。だって、あの時に分かっていたもの。これほど、私に有利な話なんか無いって」
そう、私はしばらくの沈黙の後に言った。それを聴いたまゆは、どこかほっとしたようでもあったが同時に寂しげな顔でもあった。そんなまゆに私は、質問をする。
「まゆ、あんたは何に悩んでいるの?」
そう私は、まゆに言った。まゆは、黙ってしまった。私には、分からないもの。だって、私はあの時に逃げると言う選択を取ってしまった。だからまゆの辛さと言うのは分からないのである。だが、少なくとも今生きている世界では、嫌なことからは逃げずにやって来た。嫌な書類仕事や仕事に関わる勉強だってやって来た。だからこそ、まゆの辛さも分かるとそう思った。
「結奈、あなたには分からないと思うわ」
そうしばらくの沈黙を置いて、発せられたのがこの言葉だった。つまり、まゆは遥か昔に限界を超えているのだとこの時、私は初めて知った。
「結奈、私ってなんのために存在している?薬漬けにされている人生に終わりをもたらそうとも失敗して、それでも理不尽にも時だけが無常にも過ぎて行くのよ?」
それは、まゆの心の叫びであった。確かにそうだ、幼い頃から常に薬を服用しながら生きている。恐らく、あの悲劇の後も何らかの薬を飲んでいるのだろう。確かに、私には分からない。だって、薬漬けと言うほどの薬を飲んだ事も無ければそうした事態になった事も無いのである。私は、まゆに何を言っていいのか分からなかった。
そしている時も、まゆの言う通り時間は無情にも過ぎ去っていくのであった。
発達障害の王女 虎臥結奈 @Torahusu
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