【脚本】体験入部/西遊記

※この脚本は10年以上前、高校演劇部在籍時代に新入生勧誘用に執筆したものです。当時のまま掲載しますので、高校生らしいテンションや拙さも含め、暖かい気持ちで読んでくだされば幸いです。ちょうど香取さん主演のドラマ「西遊記」が話題だった時代です。世代の方は、時の流れに打ちのめされてください。


※もし演じたいという奇特な方がいらしゃった場合の注意書きとして、台詞に出てくる部員の名前は、当時の我が校が地方大会で上演した作品のキャラクターの名前を流用しており、お好きに改変できる部分です。細かい動きに関するト書きは実際の体育館舞台上を想定しておりますが、自由に変更可能なので削除しております。


□キャスト

1 部長:山本直江

2 1年生(新入生)

3 副部長:岸本明日香

4 部員:松本リエ

5 部員:役名なし



■1なにかを読みながら中央に座っている 

■2あたりを見渡しながら遠慮がちに上手から登場


2「あの…」

1「おっ、1年生!?入部希望!?そうかそうか!!ようこそ演劇部へ!私は部長の山本直江ね!よろしく!じゃあまずこの登録書に」

2「待って、あの」

1「ん?」

2「見学です…」

1「……ああ、なるほどね。じゃあまずは活動の説明から。年3回の発表というか大会ね。それがあって、基本的にはここで発生やらパントマイムやら、えーと、色々!そんな感じ!」

2「演劇に大会なんてあるんですか?」

1「あるよ」

2「何するんですか?」

1「演劇」

2「でしょうね」

1「うん」

2「えっと、どんな劇やるんですか?あっ、ロミジュリとかですかね」

1「ううん」

2「え、やらないんですか。ロミジュリ」

1「やらないね、少なくともうちの部は」

2「やらないんですか」

1「古典を得意とする学校があるからなあ、そこは専売特許ってかんじ。自分らが楽しむためにならもちろんやってもいいんだけど、大会となると…各校の強みってのはあるからなあ。付け焼き刃じゃ敵わないってのはあるかも」

2「じゃあ何やるんですか?」

1「そうだなぁ…シリアスやラブコメもやることはあるけど、大きな舞台となるとやっぱ現代モノかな、それからコメディもよくやるよ」

2「へぇ…面白そうですね」


■3上手から登場


3「おはようございまー…あれぇ?1年生!?入部希望!?そうかそうか!!ようこそ演劇部へ!私は副部長の岸本明日香ね!よろしく!じゃあそこにある登録書に」

2「あの…」

3「ん?」

2「見学なんです」

1「そうそう、絶賛勧誘中なわけなのですよ」

3「なるほどね、じゃあ、もう劇見せたら?」

1「そうね。百聞は一見にしかず!私たちの劇を見てもらおうか!」

3「ちょうど簡単な台本を部員が作ってきてるからさ」

1「お、今回は何やるの?」

3「西遊記!知ってる?(2に向かって問いかける)」

2「えっと、昔ドラマになった…」

3「そう!サルと河童とつるっぱげのお話ね!」

2「言い方…」

1「明日香、豚を忘れてる」

3「おぉ、そういえば。じゃあ配役しようか!よし、孫悟空が直江で沙悟浄が私!あとは…」


■4上手から登場

4「おはようござ…おおお!1年生!?入部希望!?そうかそうか!!ようこそ演劇部へ!私は部員の松本リエね!よろしく!じゃあまずは」(噛む)

2「もう突っ込みませんからね」

1「リエ!ちょうどよかった!今からプチ劇やるから入ってくれる?」

4「ん?いいよー」

3「じゃあ猪八戒役はリエで!」

4「えー…豚…?」

3「つべこべ言わない!あと一人は…よし、君入ろ!」

2「え!?私ですか?」

1「もちろん!未来の演劇部だし」

2「いや、まだ入るって決めたわけじゃ…て、あと残ってるのって、三蔵法師じゃないですか!」

1・3・4「YES!」

2「ええええええ」

3「はい、これ台本ね。さぁさぁ、配置について。いいですかー?」

1・4「お願いしまーす」

2「お、お願いします!」

3「よーい、(手を叩く)」



■劇中劇「西遊記」 

孫悟空1 猿

三蔵 2 三蔵

沙悟浄3 河童

猪八戒4 豚


三蔵「もう、早く来なさい!」

猿「疲れたんだよ!ていうか、腹減った!三日も食ってないんだぞ」

河童「そうですよ、そろそろ限界ですって」

豚「お師匠さーん…」

三蔵「そんなこといっても…次の町までは遠いしお金だってないんですよ、私だって辛いんですから」

猿「くっそ…腹減ったなぁ、猪八戒」

豚「うん、おなか減ったね」

猿「実は、今全員が腹を満たすことができるアイデアがあるんだけど、教えてやろうか?」

豚「どうせ、僕のことを焼き豚にでもするつもりだろ?」

猿「馬鹿言うな!大切な仲間を焼くだなんて、むごいことできるか!」

豚「悟空…!」

河童「じゃあ、生ハムか」

猿「YES!」

豚「YESじゃねぇよ!結局食われるんだろ!」


猿「よくわかったなぁ、おい(河童に)」

河童「俺も同じ事考えたからな」

豚「考えちゃったんだ!?」

三蔵「もう…(そっとよだれを拭くそぶり)」

猿「お前そろそろ食われろよ!いつ食われるの?」

猿・河童・豚「「「今でしょ!」」」

豚「じゃねぇよ!食われてたまるか!」

猿「あきらめの悪い奴だな」

河童「仕方ないな、でも天竺に着いてからそのお祝いにステーキにでもしたほうがこいつも幸せかもな」

豚「訳わかんないこと言わないでもらえます!?お師匠さーん…2人が苛めてきます!」


三蔵「猪八戒、弱い者はさらに弱いものを蔑んだりすることで悲しい喜びを感じるものなのです。私たちもこの世界の中の小さな1つ。ですから、私たちが喜びをかんじるために潔く食べられてください!」

豚「はい!…って、えええええ!!?ちょ、え、待ってくださいよ!」

猿「よし、何がいい?焼くなり煮るなり、なんでもいいぞ」

豚「よくないよ!」

河童「諦めろ、男に二言はないだろ?」

豚「ありますよ!?冗談じゃない、もうこんなおふざけはやめて、早く行きましょうよ!次の町にはきっとおいしいものがたくさんありますよ!ほら三人とも、いくよ!」


三蔵「そうですね、少し空腹もまぎれました。行きますよ、2人とも」

河童「わかりましたよ…ほら、悟空、いくぞ」

猿「ちぇー…まぁ、まだこれからもっと大変なこともあるだろうし、その時まで取っておいてやるよ」

豚「絶対にお断りだからな!」

三蔵「ふふ、やっぱりあなたたちを仲間にしてよかった。大変な旅もあなたたちのおかげで楽しめます」


■三匹、顔を見合わせて笑う


猿「よっしゃ、さっさといこうぜ!待ってろ天竺!」


■劇中劇終わり


1「(手を叩く)はい、以上です!」

2「はぁ…緊張した」

1「熱演だったね!」

4「うまかったよ!才能あるんじゃない?」

2「いやいやそんな」

3「この作品はパロディだけど、台本は部員がアイデアを出し合っていちから作るし、稀にだけどプロの劇作家さんに書いてもらえることもあるからね」

1「そうそう、舞台だけじゃなくて音響とか照明とかもあるし、小道具も衣装も自分たちで集めてきてひとつのものをつくりあげるの!これが演劇部!どう?」

2「いいですね、演劇部…ふむ」

4「お、やる気になってきた?」

2「まだ決めてないですけど…候補として!楽しそうですし」

1「うむ、存分に迷いなされ!高校という青春を過ごすうえで部活というのは大きな要因の一つ!自分が楽しんで、もちろん辛いこともあるけど後悔しないような選択をね!」

4「おお、さっすが部長!いいこというじゃん!」

1「ふふん(ドヤァ) 当たり前でしょ!」

2「(笑いつつ)ありがとうございます!じゃあ、今日はこれで…」

3「うん、ばいばーい!」


■2上手へはけようとする、そこへ5が上手から登場


5「おはようございまー…おっ、1年生!?入部希望!?そうかそうか!!ようこそ演劇部へ!よろしく!じゃあまず」

2「もう勘弁してください!」


■暗転END

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袖に喝采 伊月 杏 @izuki916

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