物心ついた頃から、何度も思い出す光景がある謙吾。その正体が何なのかが分からず、不安を抱きながらも、決定的なあるものを見つける。ファンタジーな設定ながらも、リアリティをしっかり描きだした一作。細かく描かれた、謙吾の心境やあの風景を探し出すプロセスなどに引き込まれていきます。何度も登場し、それぞれ別の言葉で描かれる、謎の光景も非常に魅力的でした。目に焼き付くほどの強烈な茜色が、心にもしっかり残ります。
それはまさしく謙吾の絵であり、同時に謙吾の絵ではなかった。 しかしその絵にはたったひとつだけ、今まで謙吾が思い描いてこなかった、あるものが描かれていた。 (本文より)