第4話 パパさん
お昼寝から目覚めると、お日さまも帰り支度を始めています。
大きく伸びをして、廊下を歩きます。
つき当たりのドアについている猫ドアをくぐり抜けると…パパさんのお部屋です。
大きなベッドに眠っているパパさんの身体の上に跳び乗ると頬に手を置きます。
(ナデ、ナデ)
パパさんは、タヌキ寝入りです。いつもここで捕まり、パパさんのほっぺで、僕は、スリスリされます。
「テオ。おはよう」
お日さまは、先ほどよりも更に傾き、既に夕方も後半に差し掛かろうとしているのに…パパさんはいつもおはようです。
キッチンから声がします。
「テオ。パパ起きたの?」
「ニャー(起きたよ)」
お母さんです。僕の返事で、パパさんの朝食? と、僕の三回目のごはんの準備をしてくれます。
パパさんは、これから、夜の間、パソコンの画面の前で、ウンウン呻きます。何でもそれが小説家の仕事らしいです。
僕のごはんが終わると、パパさんのベッドは、僕の寝床になります。
「ニャー(お先に)」
しばらくすると、食卓で、お母さんと仲良く話していたお父さんが石鹸とコーヒーの匂いと共に部屋に帰ってきます。
パパさんが、小説家の仕事を始めました。僕は、ベッドから降り、パパさんの膝の上で、微睡みます。
時間は、どれくらい経ったのでしょう。聞き覚えのある足音が、聞こえました。
僕は、パパさんの膝から降りて、伸びをします。
「由香里ちゃんが、帰ってきたのか?パパも心配していたが、大丈夫らしいな」
「ニャー(由香里ちゃんご機嫌!)」
僕は、パパの部屋を出て、廊下を走り由香里ちゃんに挨拶をする。
「テオちゃん、お出迎えしてくれたの?ありがとう」
由香里ちゃんは、笑顔で、そう言って僕を撫でてくれます。
「ニャー(毎日、お出迎えしてますが…)」
由香里ちゃんの足元をクンクン匂って、異常の無いことを確かめる。
樹君も匂ってみる。
「テオちゃん。ご機嫌いかが?」
樹君も僕を撫でる。僕も樹君の足を撫でた。少しだけ爪を出してですが。
「あら、テオちゃん。樹と相変わらず仲が良いのね」
樹君は、痛いとも言えず、複雑な表情で小声で言います。
「大丈夫。由香里ちゃんを泣かす様な事は、しないよ」
樹君が帰ると、僕は、再びパパさんの部屋に行きます。呻いているパパさんの膝の上で、パパさんのキーボードに手をかけます。
「あらー、テオちゃん。消えちゃった。まあ、いいか。休憩、休憩」
パパさんは、そう言って、コーヒーカップ片手にキッチンへ行き、由香里ちゃんのお土産で、ティータイム。
「また、テオに消されて」
パパさんは、由香里ちゃんに、笑顔で話します。僕は、由香里ちゃんの膝の上。
「テオ、パパのお話し、面白くなかっの?」
「ニャー(僕、字が読めない)」
「そうなの。パパ、面白くなかったらしいわ」
「テオは、厳しいな。まあ、いいさ。パパもいまいちかなと、思っていたし」
家族みんなで、大笑い。
「美味しいお菓子だな」
パパさんは、由香里ちゃんのお土産が、気に入った様です。
「パパ、あんまり食べると眠くなるわよ」
由香里ちゃんが、心配します。
「大丈夫よ。パパが寝たら、テオが起こすわ」
ママさんの命令は、絶対です。
「テオちゃん。爪は、出さないでくれよ。最近間違えて出してしまっているよ」
パパさんの言葉に、ママさんが答えます。
「大丈夫よ」
みんな笑っています。いえいえ、よく見るとママさんは、笑っているふりです。
今夜もママさんの許可が、出ました。
僕は、お気に入りの爪とぎで、爪をとぎ始めました。
終わり
ネコの手、要りませんか? @ramia294
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます