第3話  お婆さん

 昨日とは、打って変わって機嫌の良くなった由香里ちゃんが、樹君と映画に出かけた。


 ママさんは、笑いながら、僕にピースサインとおやつをくれた。


 おやつを食べ終わり、水を飲んだあと、身体をナメナメしていると、


「テオちゃん、今日も頼めるかしら?」


 僕は、すっと立ち上がり、外に出かけた。


 樹君の家とは、反対方向に五分ほど歩くと、小さな公園がある。

 住宅地の周囲よりも緑の濃いこの公園は、一帯の猫たちの集会場になっている。ボス猫が、木陰にいるのが、見える。


 僕を見つけたボス猫は、嬉しそうに、挨拶に来る。


 その昔、僕は、心無い人に捨てられ、死にそうになっていた子猫の面倒を見てやった。今や、その子がこの一帯のボス猫になっている。


 もちろん今でも、ボス猫は、僕の姿を見つけると甘えてくる。


 僕が、家の外を自由に歩き回っても他の猫と、トラブルにならないのは、ボス猫のおかげだ。


 公園を過ぎると、直ぐにお婆さんの家が見えてくる。


「ニャー」


 縁側にまわり、ひと声啼くと、お婆さんが現れた。お婆さんは、ママさんのお母さんで、ママさんに、私はまだまだ大丈夫と言って、一人で暮らしている。


 縁側に跳び乗ると、ついてきたボス猫も跳び乗る。


 僕が、椅子に座ったお婆さんの膝に、手

を置く。


「はいはい、テオちゃん、ノラちゃんおやつ食べる?」


 近隣猫を震えあがらせるボス猫もお婆さんにかかれば、ノラちゃんだ。


 二匹並んで、お行儀よくおやつタイム。


 ノラちゃんは、そのままお婆さんの膝の上で、ウトウト。


 僕は、いつもの時間に家に帰る。


「お母さん、今日も元気みたいね」


 ママさんが、僕を撫でる。


 ママさんの心配を疎ましがるお婆さんの健康チェックをいつの頃から僕がしている。


 お昼寝タイムです。

 おやすみなさい。


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