いにしえの帰還

我らが王の帰還

　ティク、タク、ティク、タク、ティク、タク、ティク、タク、ティク……

　さあ、はじめよう。一度しか言わない。

　サボテンカクタス。時計はチクタク。

　合言葉は、Trick or Trick or Trick or Treat！

　時計の針は日の境を過ぎた。

　ここから我らが幽玄。されど時は有限。

　喜ぶばかりじゃいられない。

　まずはお菓子の準備。挨拶の代わり。

　挨拶なしでは会話も出来ぬ。

　君は飴玉？　それともチョコレート？　私は断然マラサダさ！

　おやおやごめんよ自己紹介。私達がここの仕切り役。

　根っこから生まれたボーン三姉妹！

　大根人参妹達で、私はなんと！　タロイモさ！

　born？　ノーノーBone！

　根っから愉快な根っこの姉妹。今日も骨を借りて人間の仮装。

　お洒落なおべべにかわいい帽子！

　これも立派でおかしな素敵な仮装！

　さあ、みなを起こしに行こう！

　合言葉は？　(Trick or Trick or Trick or Treat！)

　そう！　よく覚えていたね！　それが時鐘！　我らが朝を知らせる号笛！

　寝坊助ゾンビは揺さ振って、厳かそう蝙蝠は大声で。

　近付くのは、静かにそうっと。

　耳元でマラカス振って、驚きの絶叫と共に、みなを仮装で笑かそう！

　早足。駆け足。大忙し。

　蜘蛛の足でも借りたいくらい。

　借りても足捌きが不安かい？

　ならば魅せよう華麗なタップ。

　君は合わせて手拍子叩いて。

　みなに知らせよ帰還の烽火！

　タップを起点に音の波紋。

　広がるほどに、世界が染まる。

　紫に橙、控えめ緑。見る見るうちに早変わり。

　鉄の街灯、煉瓦の橋に、木の箪笥。

　カボチャに、髑髏に、鏡の貴方。

　みんないつもは眠ってる。

　この音聞かせばこの通り。

　目開き、足出し、動き出す。

　へしゃげたカボチャも笑い出す！

　吹き荒ぶは歓喜の歌。踏み鳴らすは祝杯のリズム。

　今日こそ我らが目覚めの日！

　いつも手も足も出ないカボチャだって、喜び勇んで立ち上がる！

　さあ、一緒に歌おう！　踊ろう！　一日ばかりの目覚めの時！

　昼でも魔が差す逢魔の日！　我らが王の帰還の日！

　Trick or Trick or Trick or Treat！

　包丁を鳴らせ！　棺を叩け！　紅い月はスポットライト！

　鴉が風に合わせて歌い出し、蜘蛛は君に合わせて踊り出す！

　Trick or Trick or Trick or Treat！

　さあ、ともに彼の名を呼ぼう！　偉大なるジャックを！

　見ればわかるルタバガ頭！　冥府に渡れぬ常闇の支配人！

　Trick or Trick or Trick or Treat！

『Trick or Treat……？』