*第57話 ムーの末裔

ムーランティス大陸の北部を統治するデーデルン大公国。

国主ドルフ・デーデルン大公。

五千年前にこの世界に転生し、精霊契約を人々に伝えた四始祖の一人、

寺島真司の末裔だ。


13年前。

ムーランティスの封印が解け、他の大陸との接触が可能となった時。

心がおどり血が沸き立つのを彼は感じた。


文明の進み具合では明らかに有利だった。

ムーランティスでは蒸気機関の発明や火力兵器の開発、その他諸々。

産業的にも軍事的にも先んじていた。

法師の質もこちらの方が高い。


我らが世界を支配する!

そう思っていた・・・


「けったくそ悪か聖女たいね。

ニャートンもほんなこつ頼りん無かばい。」


開戦からたった一週間で敗戦だ。

いや、分かってはいるのだ。

あれは化け物だ。


聖女と精霊王が率いる特殊部隊。

その機動力と破壊力。

科学文明の優位性など一瞬で消し飛んだ。


「ばってん、こんまんまじゃ終われんちゃね。

あんたもそうじゃろうもん。」


「うふふふ、その通りだよ。」


出たぁ~~~

此処にいたぁ~~~

カヒ・ゲライスだぁ~~~


「どげんしよーとや?」

「うふっ、毒を持って毒を制す。」

「そげなバリ強か毒あるとや?」


「うふふふふ。そろそろ良いかな。

君にも見て貰おうかな。うふふふふふふ。」

「なんね?気色悪か~」


カヒがデーデルンに出入りする様になったのは、

10年ほど前からである。

共に野心家の二人はすぐに意気投合し、

聖女打倒を目指して協力し合う密約が交わされた。


カヒはこの地に研究施設を作った。

デーデルンの技術者も参加している。

ムーランティスにはクローン技術があった。


四始祖の一人、横井大志が大学で専攻していた、

遺伝子工学の知識と魔法とを組み合わせて実現させた。

旧ニャートン帝国とデーデルン公国の二国で独占して来た技術である。


「この子たちが我々の切り札だよ。うふふふ。」


同じ顔をした四人の少女。

10歳くらいだろうか?

何処かで見たような・・・

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330669316693851


「こんわっぱが?」

「あぁ、そうだよ。うふふふふ。

さぁ、お前達。大公閣下にご挨拶しなさい。」

「はい、お父様!」


マーガレット、ジョセフィーン、エリザベス、エイミーと

名付けられた、四つ子の姉妹。

息の合った仕草で挨拶をする。


「バリ可愛いかばってん、こげなわっぱに何んば出来よーと?」

「うふふふふふふ。この子たちの母親は”これ”だよ。」


ガラスケースの中に数本の髪の毛が入っていた。


「苦労したんだよ、手に入れるのは。うふふふふふふ。」

「誰ぞ?こん毛の主は。」

「うふふふふふふふふふ。大聖女様だよ。

うふふふふふふふふふ。」


ちびっ子サーシアちゃんだったぁ~!

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