*第58話 白の秋

四季が無い・・・


降節秋分を過ぎて、オバルトであれば季節は秋の始まり。

澄んだ空の抜ける青さが目に染みる白秋の頃。


ムーランティスには季節感と言うものが無い。

精々が雨季と乾季が有るくらいだ。

それも沿岸部に限られる。

内陸中央はカラッカラの乾燥地帯だ。


まだまだギラついた日差しと乾いた風が吹く。


「乾燥はお肌の敵ですわっ!」

「ですわっ!」

もげら~やめて~


最近やたらとアーミアの世話を焼きたがる。

前から付きまとってはいたが、その方向性が変わって来た。


以前は自分達の遊びに使うお人形さんとしての扱いだったのが、

この頃はまるで保護者を気取っている。


うごうごもみゃ~自分でするから~

「背中は塗れないでしょう?」

「でしょう?」


羊の毛から取れる”ラノリン”を配合した

保湿オイルを全身に塗りたくられるのだ。

多少のベタつきと匂いがあるので、

サラアーミアはこのクリームが嫌いである。


逃げ惑うサラアーミアを二人係りで取り押さえ、

素肌も露わな三人の少女が絡み合う。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330669393595014


百合ね!百合ですわ!百合よっ!ハァ~ハァ~ハァ~ウフゥ~フゥ~


それを荒い鼻息と血走った目で鑑賞かんしょうしているアルサラーラ・・・

これがレイサン家で繰り広げられている毎朝の風景だ。


『白百合~の~♪

 花が咲いたよぉ~ん♪

エロいエロい♪

 花~~~が~♪

咲いたよぉ~~~ん♪』


当初は離宮で過ごしていた双子だったが、

アルサラーラに誘われたお泊り会から以降は、

なし崩し的に本宅に移り住んでいる。


そして4人で仲良く通学だ!


********


「その・・・すまなかった。」

アーノルド復活!


「判れば宜しいのよ!」

「よ!」


げろにゃ次は殺す

そう言うセリフは前に出て言おうね・・・


「せ、世話になる、宜しく頼む。」

「えぇ宜しくね。」

「ね。」


げろっぱ瞬殺だぜ

聞こえていないよ、アーミア・・・


ミラームとネフェルの二人だけになっていた

ルルナの日本語教室に双子とアーノルドが

加わり合計5人となった。


ミラームとネフェルは精霊院の上等科に

進級していて、週一で授業を受けに来る。

エリーゼは侯爵家へ嫁いで行った。

シオンは聖人と成ったので卒業だ。


ターラム大公家はアーノルドが聖人に成る事を期待して、

当面はダモン批判を控えるようにと一族に通達した。


*********


教室へ向かう廊下を歩きながら高位貴族クラス担任のマイロは、

シクシクと痛む胃をさすっている。


マイロ・ダンクス伯爵。

精霊教会所属の聖騎士だ。

彼は精霊院時代、エルサーシアの同級生だった。

当時から気の弱い男だったが、今も変わらぬ小心者だ。


(はぁ~行きたくない・・・)


入学初日に、いきなり大事件発生!

聖女と大公家の傷害事件だ。


(末っ子はクラスのまとめ役で とっても助かるって言ってたなぁ~

 羨ましい・・・)


彼の妻も講師として勤めている。

オレリナ・ライランス・ダンクス伯爵夫人。

同じく精霊院時代の同級生で聖騎士である。

彼女はアルサラーラの担任だ。


大聖女の友人を担任に据えておけば

何かと都合が良いだろうと起用された。


(親しいのはリィナであって僕はそれほどでも無いよぉ~)

エルサーシアと面と向かって会話するなんて、怖くてとても出来ない。

(替わって呉れないかなぁ~)


今日はアーノルドが復学する。

和解しているとは聞いているが、当てにして大丈夫か?


(気が重い・・・)


ドッガァ~~~ン!!!

教室の壁が吹き飛んだ!

アーノルドがピクピクしている。


「な!何ぃ~~~?」



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