しら玉白二

第1話

「ねぇママ、噂って何歳位から言うの」

ゆいは、洗濯する衣類を仕分けしている母のところに行って尋ねた。

「えぇっ?」

仕事から帰っていつも大忙しの母は、夕食の準備をしながら洗濯もまわし出す

「だってさ、子供が噂話してるって言わないじゃん。でもみすずっていつも人の話ばっかりしてるじゃん」

「あなた位からじゃない?」

「高校生位からって事?」

「違うかなぁ」



みすずは本当によくしゃべる。

小学6年になっても、パパ大好きで、いっつもべったりくっついて、ずーっとパパに学校の事をしゃべっている。

「ほら、早く食え、みすず。寝る時間になっちゃうぞ」

ゆいはとっくに夕飯を終え、食後のアイス棒をかじりながら、ソファーに寝転がってテレビを見ていた。

すぐ横の食卓テーブルで、箸の止まっているみすずと、おかず口に入れてごらんと促す父がいる。

「階段とエレベーター、どっちが速いか競争したんだ。うちが階段でひなこちゃんがエレベーター。同着だった」

ちゃんと私って言いなさいと母に注意されるが恥ずかしくて言えずうちでごまかしているみすず。ゆいもこの頃はひっきりなしに使って自分を名前で呼ぶ事から卒業している最中だった

テレビでカレーを作っている。

小皿に入ったカレー粉やスパイスを、男の人が太い指で鍋に次々落としていく。

「小樽でね、カニ釣りやってね、餌のイカ触ったでしょ?

手臭くて臭くて。うち持っていったウェットティッシュ大好評だった」

ゆいはアイスが無くなり、棒を口の中で左右に転がしている。

「そういえばねー、去年のバスケの合宿、リコちゃんのキャリーバック、ぐちゃぐちゃに入ってて、みさきちゃんに「きったなっ」って言われてた。ひっくり返したらかぽってそのまま四角く出てくるんじゃないかって感じだった」

棒にアイスの味がなくなってきた。木の味しかしない。ギュっと噛むと、もっと木の味が染み出てくる。

「京都って言えばね、いっち京都に帰って合宿来れないでしょ?」

「いちごちゃんの両親って、どっちが京都の人だっけ」

パパが尋ねる。

「2人共。それでいっちに京都行っていないから、みさきちゃんが、今電話したら「うん、今京都にいるの」って言うよって真似してた」

なんじゃそりゃ、と思って聞いている

棒を口の奥に入れる。先っちょをガリガリかくと、上顎に当たった。棒が響いてかゆくなったから出した。

「お姉ちゃん、ご飯ついてる、くちくち」

「あ?口はついてる」

「くちにっ、付いてる」

手の甲でぱっと払う。

「取れてない。まだついてるよ、あご」

「顎もついている」

「あごにっ、ついてるって」

顎をさっと拭う

「取れてない。ご飯つけたままアイス食べてたの?」

「スミマセンね」

「うち、いっつもアイスの棒噛んでたら、ポキってなっちゃうんだよね」

ちょっとみすずおいでっ、と洗濯室から母が呼びつける

「ほらこれ」

「あーはいはい」

「洗濯出す前はポケットに手を入れて、確認してちょうだい。癖つけてよ、もう。ティッシュとかならどうするのよ。」

飴の包み紙を入れたままだった様だ。

テレビの前に2人が寝転がっている。

パパが寝始めた。

仰向けで、外したメガネをお腹の上で手に持ったまま。時々ビクビク膝が動く。

隣で妹がうつぶせでテレビを見ている。

左足を上にしたり、右足を上にしたり、ハハハと笑ったりしてる。2人の足の裏が似てる。親指が大きくて扁平足。



「もう、出すのない?」

「出したよ」

みすずのジャージのポケットに手を入れる母。

カサっと音がする。


ゆいには、ポケットから出てくる母の手がスローモーションに映った。

「あいつ、もうほんとに。」

飴の袋が出てきた。

そそくさと自分の部屋に戻った。




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しら玉白二 @pinkakapappo

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