第12話

「ついに来たか」と中矢は言う

「伝説の猫に会えるといいね」と妻は言う

二人は今や人の居ない入場券販売所をすどうりし園内に入る。異様な静けさだった、まるで2人を待ち構えているかのような魔の雰囲気が支配していた。

「先ずは田んぼの方へ行ってみよう」と中矢が言う、2人は用心をして歩き出す。

田んぼには6匹の猫が屯していた、稲は荒らされまくっている。水気の嫌いなはずの猫たちが泥まみれになり何やら黒っぽい物体を奪いあっている。

「なんだろうあれ?」と中矢

「なんか浮かんでるね」と妻は言う、次の瞬間その物体はふっと消え、猫たちは一斉に中矢たちのほうを睨み付ける。

1匹が妻に足下に飛びかかってきた

「きゃー」と妻、中矢はなんとか引き離そうとする。

今度は6匹の猫たちが中矢にターゲットを変え襲いかかってきた。

「 美幸は逃げて」と噛られながら中矢は言う

妻は恐ろしくなって走り出す。猫たちが追ってきた。

妻は走りながら昔かっていた猫の事を思い出す。そしていざというときのために用意しておいたマタタビの木屑をばら蒔いた、猫たちはマタタビに群がり、妻はなんとか逃げ延びた。

「どうしよう、ゆうくんおいてきちゃった」妻は後楽園を一歩出た空き地で途方にくれる。

その頃中矢は、猫たちが妻を追いかけていったので神社のほうを探索しようと歩を進めていた。浮かんでいた黒っぽい物体は、なぜだか中矢を導くように先をすすむ。

猫たちがその横を屯して伺っている。

黒っぽい物体は大きくなったり小さくなったりして猫たちの行動を制御していた。

中矢の脳内に映像が浮かぶ、猫たちの飼い主が猫たちに食べ物を与えたり、しかったりする映像だった。

池の中央にある神社にたどり着くと何やら異様な気配がした、後ろを振り向くと猫たちが連なってついてきている。

黒っぽい物体は神社の中に入る、すると池が干上がっていった。

中矢の脳裏に飼い主たちの不安が熱を帯び一つになり蒸発していく映像が浮かぶ、干上がった池には魚たちがピチピチともがいていた。

猫たちは一斉にに魚を食い荒らす、恐ろしい宴が始まった、奪い合いむしゃぶりつき、ほうごうが響き渡る。

中矢はこのままでは自分も食われてしまうかもしれないと恐ろしくなり走って逃げる、足は小山の方に向かっていた。

「はあはあ、なんなんだあれは」と中矢は思う。夜空には満月が浮かんでいた。


空き地で待っている妻は心配しながらも満月を見上げていた。

「どうしよう、お祈りぐらいしか出きることがない」「でも今日って満月の日だったかしら?」妻はその異様に明るい月に向かって祈った。


小山の斜面には、斜面と言うよりは小さな崖のようになっていたのだが、急な石畳の階段が備わっていてほぼ観賞用に個性的な景観を際立たせていた。

小石が上から落ちてくる、ゴロンコロン、階段の下に積み上がっていく小石、拾ってみると表面はざらざらしている、その表面が動いた、驚いて小石を放すと、他の石にぶつかり何か音がした、音と言うか声だった「ゆうくん」、中矢はもう一度拾ってみる、石の表面が動き何かの模様が表れた、文字が浮かんでは消え、文字が浮かんででは消えしている。こ…ろ…す、中矢中矢は石を放り投げる、今度は猫の鳴き声がした。

するとまた黒っぽい物体が現れ中矢を導くように半円形の橋の方へと向かった。

そこには伝説の猫がいた。

橋の上に佇む猫、黒い光を放っている。

「ゆうくん、ずっと待っていたよ」とその猫は言う

「君はあのときの猫なのか」と中矢

「ああそうだ物置の下でずっと待っていたんだ」

「なんで居なくなっちゃったんだ」と中矢は言う

「居なくなった?ずっと待っていた…なかなか来ないから様子を伺いに出たら人間にいたぶられて気がついたら…ここに居たんだ」

「僕もずっと探していた」と中矢

「良かったな見つかって」と伝説の猫は中矢に飛びかかる。

身構える中矢の腕に食らいつき肉を抉る。

「僕が悪かった中途半端な買い方をして」と中矢

「いまさら遅い俺は腹が減っているんだ」

伝説の猫は巨大化していき、中矢の足を食らう。左足が食いちぎられた。

もうダメかと中矢は思いどうせ殺られるならと「お前に殺られるくらいなら俺が殺る」と持ってきた万年筆を自分の頸動脈に突き立てた。血しぶきがあがる。伝説の猫は我に返る、培養液にに浸かる小説家イーターのようすがおかしい、小刻みに震えて光を放っている、そして爆発した。


妻はまだ月に祈っていた、すると月が公園の方へと降りていった。「火の鳥」と妻は思う。


血しぶきが止まった中矢の魂が、球となった伝説の猫と降りてきた火の鳥と追っかけっこをして螺旋を描いて天へと上っていく。


妻は上っていく光と、再び降りてくる光を目にした。


そして中矢は目を覚ます。食いちぎられたはずの左足はもとに戻り首の出血も止まっている。そして仰向けに伏した胸部に、あのときの黒い子猫が眠っていた。

中矢は猫と妻をつれてアパートに反った。

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ピンチ「プロット」 源ガク with ネコさん and 妻 @GakuMinamoto

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