あたしとワタシ
麻々子
あたしとワタシ
いつも、あたし思うんだけどぉ、あたしって生まれる前はねこだったんじゃないかなぁって。
だって、ひるまは眠くって、夜になったら元気が出てくる。
お風呂嫌いだしぃ、こたつが大好き。
おやさい嫌いだしぃ、お魚大好き。
いつも、おかあさんは、はやくお風呂にはいりなさいっていうけど、お風呂嫌いなんだもん、そうそういうことはきけないわ。
でもね、きれい好きよ。ちゃんと顔は毎日あらうわよ。
勉強なんて大嫌い。
学校でみんなといっしょのことをするなんて、得意じゃないのよね。
ひとりでねそべってるのが最高。
大人の人たちは、将来のために、夢のために勉強は大切だっていうけど、ずっと先のことなんてつまんない。
今が大事なの。
でもさ、ただ眠っているだけじゃないのよ。いざっていうときのためにエネルギーをためてるのよ。ウフッ
けど、あたしはもう人間だから、ねずみをとることはできないのよ。人間にとっていざっていうときってどんなときなのかしらねぇ。
ねこってさ、かならず自分のほしいものを手に入れられるのよね。愛してほしい人にはかならず愛される。そんな術を生まれながらに持ってるの。ねこに学校の勉強なんて何の役にも立たないのよねぇ……。
ああ、眠いわ。
給食終わって、おなかいっぱいだし、教室の窓から、すずしい風がはいってくる。太陽の光はあったかいし、先生の声はやわらかいし、ああ眠い。
あら、学校のむかいの家の屋根にねこがいるわ。
そう、あたしがねこだったらぁ、きっとあんなねこだと思う。
毛が真っ白で、体はしなやかで、両前足をきっちりそろえて、しっぽをくるっと自分の体に巻き付けている。まるで、ここは自分の領域よっていってるみたいじゃない。首輪の赤もいいわ。きりっときまってる。目の色はよく見えないけど、あのねこだったら、きっとブルーよねぇ。
でも、あたしがあのねこだったら、きっとお昼寝をしてるわ。こんなに気持ちのいい日なのに、きっちりすわってるなんて変なねこ。
あっ、あのねこ、こっち見てる。変なねこっていったのがきこえたかなぁ。
ワタシ、生まれてくる前は人間だったような気がするのです。
なぜかというと、だらだら寝るといのは大嫌いなんです。
夜の猫の集会なんて、ふしだらな感じがして行きたくもない。みんなが冷たい目でワタシを見るから、しかたなしに行ってるだけなんです。猫として生きて行くにはお付き合いも必要だと感じています。
お風呂は大好きです。
しかし、ワタシの飼い主は、猫はお風呂が嫌いだと思いこんでいるため、ワタシをお風呂に入れてくれません。
ワタシがお風呂場の外でニャーニャーなくのは、お風呂に入れてくれいってるのですよ。そりゃ、お風呂場でお湯がかかると少しは驚きますけどね、嫌いと驚きの違いをわかっていただきたいわ。
魚なんて大嫌いです。生臭いったらありゃしない。
それに、キャットフードもいまいちですわね。カリカリなんてよくありませんわ。粉くさくってのどにひっかかってしまいますわ。
やはり、おまんじゅうが最高です。あのあんこの甘さ。甘すぎず、やわらかすぎず、酷があって……、あら失礼。よだれが出てしまいましたわ。
虫歯になるからといって、ワタシの飼い主はなかなかワタシに食べさせてくれないですけれどね。
ああ、学校にも行きたいのです。もちろん人間の学校ですよ。勉強がしたい。
猫にだって未来があるのです。夢があるのです。
猫に未来はないっていったのはだれ?
前頭葉が小さいですって?
それにかわる猫の脳の発達を知らないくせに……。
何千年もの人間の知恵、人間だけに許されたものではないはずだわ。
あら、あの学校の窓からワタシを見てる人間がいる。
ワタシが人間だったら、あんな女の子かしらね。
長くて黒い髪がエキゾチックで情熱的ですね。赤いくちびるもすてきです。けだるそうにほおづえ着いているすがたも自分の世界を作っているようで悪くないわ。
でも、もしワタシがあの女の子だったら、もっと真剣に勉強するわね。
あれは、勉強しているすがたじゃない。人間なんだから、もっと一生懸命勉強するべきです。変な人間。ああ、できれば、今からでも勉強がしたいと思います。
ああ、やっと授業が終わった。はやく帰って、昼寝しようっと。
あっ、向こうからねこが歩いてくる。さっき、屋根の上にいたしろいねこだぁ。
ああ、がまんができません。学校へ行きます。黒板を見てひとりで勉強します。
あっ、前から人間が来るわ。さっき、教室からワタシを見ていた女の子だわ。
すれ違うとき、
「ニャー」とあたしはいってみた。
「こんにちは」とワタシはあいさつした。
ウフッ、言葉がちゃんとわかっちゃう。やっぱり、あたし生まれる前、ねこだったんだぁ。
あっ、言葉がわかるわ。やはりワタシは前世人間だったんですね。ああ、輪廻転生、無常を感じますわ。ウフッ。
あたしとワタシ 麻々子 @ryusi12
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