アフター・ザ・レイン
宮島
EP.1 サイレン
「なあ真琴、いつまで俺たちはここを張ってなきゃならないんだ?」
「さあな。てか指示が出されてからまだ10分しか経ってないだろ。そう言うなよ」
今俺たちは【とある人物】の動きを見張っている。
文句を垂らした隣のこいつは
「お前な、もうすぐ冬になるってのにまだそんな格好してんのか?」
「バカ、ここは地下街だぞ?地上ほど寒くねぇんだよ」
「だからってなぁ……」
そこに一人の男が現れた。
「よおガキ共。お前らが探してるのはこの俺か?」
「……ッ!!」
俺は目を疑った。そこに現れたのは俺たちが探していた【
男は不敵な笑みを浮かべて続ける。
「悪いが俺を捉えることはできない。なぜなら……来い!!」
男が声をかけると、一斉に物陰から複数の人間が出てくる。
しかし、出てきた人間は喧嘩の弱そうな連中ばかりだ。
「なんだ……?」
「三野蒼斗……前に出ろ」
男は蒼斗に向かってそう言う。
「従わなかったらどうなる?」
「殺す」
蒼斗は一瞬ニヤりと笑みを浮かべた。
「悪いな真琴……俺はどうやらここまでらしい」
「は?」
「お前には黙ってたけどよ……俺はーー」
そこまで言葉を言った蒼斗の胸にナイフが突き刺さる。一瞬の出来事だった。
俺は言葉を失った。その場で膝から崩れる。
「ウソだろ……蒼斗、お前……」
ナイフを刺された蒼斗の胸から血が滲み、服が赤く染まっていく。
蒼斗はその場であっけなく倒れた。
「テメぇ……よくも蒼斗をッ!!」
俺が殴りかかろうとしたとき、男は俺の手を掴んで静止した。
「離せッ……」
「まあ落ち着け。俺はお前を救ってやったんだ」
「何だと?」
救った?何を言っている。目の前で友人を殺された俺に「救ってやった」だと?
男の目はやけに冷静だ。先程と違い、落ち着いた目つきだ。
「この男……三野蒼斗はこの地下街のウラを取るボスだった」
「は……?」
「3年前からずっとこいつを調べてきた」
3年前といえば、俺と蒼斗が出会ったのと同時期だ。俺は地下のゴロツキ共を相手するいわば【地下の警察官】をしていたときに出会った。それから蒼斗の紹介で別の管轄のメンバーになり、今日まで過ごしてきた。
「俺たちが感じていた違和感が確信に変わったのは1年前だ。三野は地下の商会のボスを部下に暗殺させた。その商会は俺たちと連携を組んでた【お得意様】ってところだったんだよ」
俺は男の話を聞きながら絶望した。蒼斗がまさかこの地下のウラのボスだったなんて。
そして俺はあることに気づく。
「じゃあ今俺が所属してるグループってのは……」
「ああ。三野の管轄のグループだ」
「そんな……」
言葉を失う俺に声をかけたのは建物の壁に背中を預けて黙っていた一人の女だった。
「キミ、名前は?」
「え?」
「名前。これから一緒に仕事するっていうのに、名前がわからなきゃどうにもならないでしょ」
「仕事……?」
女が言うと男が手を差し伸べてくる。
「俺の名前は
「私は佐倉ミナ。地上にいればJKってとこかな?よろしくね」
他の面々はずっと黙ってばかりだ。
「他のメンバーは後ほど紹介するとしよう」
俺はその場で立ち上がり、拳を握りしめる。
「俺は、橋宮真琴。俺の目的はこの狭い地下から出ることだ」
アフター・ザ・レイン 宮島 @mi8a_z
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