魔と共に眠る

⚠性的表現があります!

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少し前に、初めてマクアと肉体的な関係を持って、何もかも初めての経験をした。というか、普通の人間では経験し得ないものばかりだと思う。


まず、幼い少女に男性が攻められるという前提からして異常であるが、触手なんていうありえないものによって全身を愛撫されるなんて人の身ではなかなか無いものだろう。自慢できる内容ではないが。


しかも、それが、

―――癖になりそう、だなんて、口が裂けても言えなかった。


ぬるつく多数の触手による刺激と、大きな尾による軽い拘束、そしてマクア本人の手と舌による愛撫、それが同時並行して自分に快楽を与えてくるのだ。耐えれる人間がいるのだろうか?

しかも、それらはけして自分の意志を無視して体を弄ってくることは無くて、痛がったり嫌だという旨の発言を受けると、すぐさま離してこちらの意向を汲んでくれるのだ。

本気になったら自分のような細身なんて好き勝手できる程の力が彼女にはある筈なのに、抱擁するように優しく丁寧に触れてくるのは嬉しかった。


何より、マクア本人が言葉を尽くして愛してくれるのが心地よかった。彼女の小柄な体も、厚めの舌も、小さな手のひらも、低めの体温ですらオリビアを酷く安心させるものだった。


初めての経験からまた何度かマクアとしたのだが、とても満たされた気持ちにされてお互い満足する時間になった。


―はずなのだが、オリビアは体が疼いていた。


初めは気のせいだと思っていたが、何度かマクアとの行為を繰り返すうちに徐々にその不満な疼きの正体を掴めてきていた。


だがこれは、言って良いのだろうか。

オリビアの男性としてのプライドからくる抵抗心が邪魔をしていた。

しかし、実際満足できていない訳で。


ぐるぐると堂々巡りする思考の中、オリビアの欲求は遂に爆発してしまった。






「オリ、ビア?」


ベッドに押し倒されたマクアがキョトンとした顔をして大きな目を瞬かせている。

オリビアはふぅふぅと荒く息をつきながらマクアを見下ろしていた。


「マクア…したい、の」

「うん、するのはいいけど…どうしたの?苦しそうだよ?」

「我慢、できないの」

「? しなくていいよ?」


マクアはオリビアが今更何を言っているのか、と不思議そうにしていた。

彼女からしたら恋人と性行為をするのは日が浅いが初めてのそれではないし、我慢する理由などどこにもない、そう考えていた。

確かに押し倒される程にオリビアが積極的なのは初めてだが、それはそれで応えてあげるのが礼儀だと、ベッドに膝立ちになりマクアを跨ぐオリビアに触手を絡ませた。


オリビアの服を脱がそうとマクアが触手と手を服に添えた時、オリビアは急に体を屈めてマクアに深く口付けた。


「!?…んぅ……っ……!」

「ん………ちゅっ……ちゅ……………」


オリビアからキスを強請る事は多々あったが、こんなふうに舌を絡めて吸い付く様なキスを彼からしてくるのは初めてだ。

じゅるじゅると互いの混じった唾液を啜り、喉仏を上下させて嚥下するオリビアはどう見ても男性で、いつものオネエの雰囲気をまとわせた所作のそれとの差にマクアはドキリとしていた。


「ンッ………ぷはっ、オリビア、そんなにしたかったの?」

「…今日は、凄く、したくてっ…服を脱ぐのも、惜しい、の…!」

「でも脱がないと…汚しちゃうよ」

「いいからっ…早くっ………!」


切羽詰まった様子のオリビアが息を荒らげながらマクアの触手を掴んで服の下に導き出した。初めてまみれの事態にマクアは慌てた。何がどうして彼をここまで動かしているのかわからない。でも、刺激が得られなくて辛そうなオリビアを見るのは、マクアも苦しかったので後片付けの覚悟をしてこの行為を続行することにした。


ぬちぬち、粘液を纏った触手が彼の服の下を這い回る。彼が感じるようになった胸や、普段他人に触れられることのない内腿にも容赦なく刺激を与えてやると、控えめな嬌声が漏れた。


いつもとは違ってマクアが下で、上のオリビアが膝立ちでそれを受けているので、彼の感じる様が下から見えるのが新鮮だった。端正な顔を歪ませて喘いでいるのも、彼を支えるために胴体に巻き付けた尾に震える手を添えているのも、下からだと初めて見るもののように感じた。


ついでに言うと服を着たままの行為も初めてだ。汗と粘液で彼の肌に張り付いた服の隙間から触手を入れてオリビアを愛撫するのは、なんだかいけない事をしているような気がした。実際、外見上年の差どころか未成年の姿の自分が性行為に含まれる事をしているのだから、いけない事ではあるのだろうが。


そうこうしてるうちにオリビアの震えや声が大きくなってきた。マクアはいつものように彼の前に手を添えて刺激しようとして、ズボンと下着を下ろして―――止められた。オリビアが手を伸ばしてマクアの手を阻んでいた。


「………え?」

「はぁっ…マ、クア、待って…」

「でも、ソコやらないとオリビア苦しいでしょ?」

「ぅ………そ、そっちじゃ、なくて………」


オリビアがマクアの細い腕を掴んで誘導する。マクアはオリビアのやりたい事がわからないが、とりあえず腕を引かれるままに上体を少し起こしながら従った。マクアの手は張り詰めたソコの下を潜り、足の間を通り抜け―――


「え」


後ろの窪まりに触れさせられた。


マクアがオリビアを見上げると、彼は真っ赤になっていた。


「………ここ、を…してほしい、の…」

「で、でも、オリビア…」


マクアは彼のトラウマを断片的にだが知っている。オリビアを害した女達を脅しに行った時、彼が凌辱を受けていた映像を少し見てしまったのだ。だからこそ、特に性に関する事で彼のトラウマに繋がる事であろう行為には注意をはらっていた。

オリビアを傷付けるような事はしたくなかったのだ。


それなのに、彼の方から欲せられて、マクアは混乱していた。


「オリビア………怖くない、の?」

「怖くない、訳じゃないわ……でも…マクアに…マクアだから、して欲しいの…!」


快楽への階段を上り詰める途中で中断して苦しそうなオリビアが、必死にマクアを欲しがっていた。あの時の女達なんかを上書きするように、愛しているマクアだけを望んでいた。

―――マクアの黒い瞳孔が少しだけ開いた。


「―――――…わかった」


触手の一本を動かして、オリビアの臀部の上あたりに触れた。触手から分泌された粘液がオリビアの白い肌に垂れていき、オリビアの締まった双丘の谷間に流れ込んでいく。その独特な感触に震えるオリビアを、マクアは後孔に添えられた方とは逆の手で彼を撫でて落ち着かせた。


マクアは、オリビアの様子を伺いながら、後ろをくるくると優しく粘液を馴染ませるように指で撫で、次第に揉み解すように刺激する。


「冷たい?気持ち悪くない?」

「んん………っ…だ、いじょうぶ、つづけて…」

「嫌だったら、暴れてもいいからね」


実際、指が入った状態で暴れられると中を傷つけてしまうから暴れてほしくはないのだが、…それすら許されなかった彼の初めてを考えると無理矢理な拘束はしたくなかった。

尾はあくまで姿勢のキープ程度でオリビアの体に巻き付けて、後ろの粘液の補充の為以外の3本の触手は彼の緊張をほぐす為に優しく服の下の体に這わせ、性感に軽く触れるだけに留めた。


粘液を追加しながら、ゆっくりと指一本を彼の中に入れていく。指を沈めるたびに熱い体温のオリビアがぶるぶると痙攣する。…こういう時に自分の体温の低さが恨めしかった。きっと彼の震えは、自身の冷たい指のせいもあるのだろう。


「ごめんね、冷たくて」

「…ん、ぅうん、…へい、き…ッひぅ…!」


後ろの違和感に苦しむオリビアを労る為にキスがしたいけれど、体勢が体勢なので届かない。せめてと彼の首筋を這わしていた触手の先端を艶めかしい声の漏れる口元に当てる。オリビアも触手に気が付いたようで戸惑っていたが、やがてそれを口に含んで舐めてくれた。彼の暖かな舌と自身の触手を絡め合うのも心地良い、新しい発見だった。


自分の触手での感覚は人体でいうと腕や手に近い。運動性能としては力のある曲げる方向の自由度が高い腕といった感じ、触覚としては人の手のものと同等くらいにはある。つまりは器用かつそこそこ敏感なのだ。


オリビアの意識を後ろに入る指の異物感による苦しみから口腔の触手の刺激に反らしたかったのに、自分が楽しく気持ちよくなるのはどうかと思った。が、本来セックスというのはそういうものだと思い直して、彼を刺激するのに集中した。


「ふぁぁ…!ま、ふあ…っ!…ぁあッ!!!」


やっと指を根本まで入れることが出来た。そのままゆっくりと指を回して中を探ると、触手によって口を閉じる事の出来ない彼の拙い喘ぎが響き渡った。


でも、同時にまずいことに気が付いた。

知識で男性の快感を得られる場所は知っていた。が、自分の幼い子供の指ではソコにあと一歩届かないのだ。考えてみたら彼の体格からして当然なのだが、実際やってみないと気付けなかった。どうしよう。

…少しだけ葛藤したが、オリビアを快感の半端なところで投げ出すのは無しだ。やるなら最後までやろう。…彼の意志を尊重して、だが。


オリビアの後孔から指をゆっくり引き抜いて、口からも触手を引き出した。上と下の圧迫感からの急な開放に彼は困惑しているようだった。


「オリビア」

「んんっ、な…に?」

「…オリビアの欲しいとこに自分の指じゃ届かないんだ…」

「………あっ…そうよね、当たり前よね…」

「だから、その、…触手で、していい…?」

「え」

「触手、これなら届くし、粘液が出るから入りやすい。オリビアを気持ち良くできると思うんだけど…」


自分の触手、おそらくは平均した男性のそれよりかはいくぶんか細身であるソレ。(ちなみに筋肉に類似した組織なので力を込めると多少太くもできる) でも指よりは明らかに太いし、何より人からしたら人外の異物だ。それをお尻にぶち込みます。なんて言われたらまず嫌だろう。

でも今ここに他に丁度いいものも無いのだ。


あとはオリビア次第だ。


別に拒否されても構わない。彼が嫌だと言ったら今日は終わりにして、明日とかでそれ用の道具を揃えるのがいいだろう。良かれと無理に入れて嫌われる方が自分は嫌だ。


オリビアは固まっていたが、視線は先程まで口に含んでいた触手を見ていた。…悩んでいるのだろう。

こちらとしては手持ち無沙汰なので、オリビアの様子を見ているしかすることがない。

しかし…オリビアの状態を見ると主に服が中々悲惨な状態だった。様々な体液でべとべとでオリビアの体に張り付いた服は見るも無惨だし、何より気持ち悪そうだった。そもそもは彼が余裕無く襲い掛かって来たからなのだが…可哀想に思えてきた。


「オリビア、悩んでるとこ悪いけど脱がすね」

「えっ!?ちょっ」

「こんなにぐちゃぐちゃだったら続けるにしよ止めるにしよ、気持ち悪いでしょ?」

「あっ!?やめっ…今はっ!やぁッ!!!」

「ホラ、一気にやったげるから」


先程までの行為で敏感になっている所に、濡れて張り付いた服を剥がされるのは辛いかもしれない。でもそのままというのも擦れて辛いはずだ。騒ぎ立てるオリビアを押さえて、触手も使って一気に上の服を取り払った。


すると、今日はまだ見ることの出来なかった彼の色付いた肌が見えた、震えるほんのりと赤い肌がセクシーだと純粋に思った。

上の服を剥かれて抵抗を諦めたオリビアは、下を脱がされるのにもわずかに快感を感じながら、それでも大人しくされるがままにしていた。

マクアも湿り気と重さを纏ったパジャマがうっとおしかったので、手早く脱いで下着だけになる。その間、オリビアはベッドに転がされていたのだが、マクアが脱いでいる間に顔を背けてうつ伏せになっていた。その背中にマクアは手を添わせ脊椎を数えるように舐め上げたので、オリビアはその優しい愛撫に震えた。


「…うん、オリビアはやっぱり綺麗だね」

「うう、恥ずかしい…………ッ!?」

「…ごめん、つい綺麗だからつけちゃった」


オリビアの白い背中にマクアがキスを落としたのだ。肩甲骨の内側に赤い鬱血跡となって残ったそれに、マクアは満足げだった。


マクアは自分がどんどん欲張りになっていくようで困っていた。オリビアが欲しい、自分のものだと主張したい、自分だけのものになって欲しい、なんて、本来生き物でない自分なのに我儘にもほどがある。でもこの暖かな彼に惹かれて仕方ない。愛しているのだ。そう思いながら、オリビアの背中に優しく抱きついた。


…実は、オリビアも似たような事を考えていたのだが。


いつも助けてくれて、些細な事でも一緒に笑って考えて、一途に愛してくれるマクア。オリビアの人生の中でこんな風に想って行動してくれる相手は今までいなかった。そう思うと幸せだった。なのに、もっと近くに来て欲しい、ずっと側にいて欲しい、欲望が溢れて俗物になってしまったようで、でも抱きついてくる少しばかり冷ややかなこの体温が嬉しくて、どうしようもない。そう思いながら、寝返りをうって体の上にマクアを引き寄せて、優しいキスをした。


人と人でないものと、背の高いのと小さいのと、手が2つのとそれ以外を沢山もつのと、

違うところしかない二人は至近距離で見つめ合っていた。


「マクア、愛している」

「ふふ、オリビア、愛しているよ」


答え合わせのように二人は交代で告げると、こつんとおでこを合わせて笑い合った。

笑いがおさまって、ゆるやかにオリビアが言った。


「マクア、来て。…欲しいの」

「うん、わかった」


マクアは両手と触手をゆっくりと動かして再びオリビアに触れ、彼の望むように愛撫を行った。優しく愛する事だけをしたかった。彼女の太い尾はもう彼に巻き付いて押さえ込むことはせず、ただ安心させるようにオリビアに寄り添っていた。


オリビアはマクアの手と触手の愛撫を素直に受け入れていた。彼女はオリビアに愛しかもたらさないと知っているから、甘い声をあげて合間にマクアの名を呼んだ。そして時折、マクアの傷跡の色濃く残る腕に触れて優しく撫でた。マクアの全てが愛おしくてどうしようもなかった。


オリビアの性感が高まっていく中、ついにマクアの滑る触手の先端がオリビアの後ろを優しくつついた。そして、触手は液体を塗りこむ動きをし始めた。思わず体を跳ねさせるオリビアにマクアは問う。


「大丈夫?」

「…うん、マクアがしてくれるから」

「痛かったら言うんだよ?」

「わかったわ…」

「…いくよ…力抜いててね」


つぷ…………つぷっ……


遂に触手の先端が入る。だが、少しだけ入っては抜いてを繰り返して、中々しっかりと挿入しようとはしなかった。

もどかしい動きにオリビアは首を降って先を乞う。


「んんぅっ!やだぁ…マクアっ!…もっと…!」

「待ってて…オリビアが欲しくても、負荷にならないようにしたいから…」


それでも、マクアはオリビアが欲しがっているのを理解していたから少しずつ挿入を深くしていく。ぬめる粘液を追加して、早く彼の欲しいところに届くようにと触手を動かす。


くぷ…………ぬちゅ………ぐちゅ……ぐちっ…


だんだんと間隔を狭くしながらオリビアを突いて、同時に深く挿れていく。追い詰められる動きにオリビアも声をあげてそれを感じていた。


「……あっ…んん!ひぅん…ふぁあ!!!」


オリビアは何かに縋ろうと手を彷徨わせていたが、マクアがそれに気が付いて両の手を彼の手と合わせ指を絡めて、ベッドに縫い付けた。所謂、恋人繋ぎというやつだが、オリビアはまるでマクアの触手のようだと思った。


そんな時だった。



ぐぷんっ………



「あッ…!?」

「ん、ここが、オリビアのいいトコ…なんだね?」


もう、なのか、やっと、なのか。

マクアの触手がオリビアの中の前立腺の裏側を撫で上げたのだ。最初の時に顔も知らない女達に弄られたのと比べ物にならない快感が溢れた。

背中からぶわりと鳥肌が立つような、汗が吹き出るような、奥から快感が滲んでくるような、そんな感覚がオリビアを襲っていた。


そうと知らないマクアは、オリビアの反応を見ようと挿った触手を動かしてぐりぐりと腹側を刺激してしまったのだ。


「ヒッ!?ま…待っ…!あぁっ!イっ…くぅっ………!!!」


それだけでオリビアはビクビクと体を震わせて軽く絶頂していた。ただ、彼の前は痙攣してはいたものの何も吐き出してはいなかった。ドライオーガズムというやつなのだが、オリビアは混乱して泣きながら震えていた。


「な、にこれ………やぁあ…!おか、しくな…る………!」

「オリビア、オリビア、大丈夫?」


マクアは細かくはわかっていなかったが、自分のせいでオリビアがこうなってしまったことだけ把握した。

彼を安心させようと、両手の指に力を込め、涙を流す頬を舐め、オリビアを呼び続けた。


「ぁ…、マクア…」

「オリビア、どう辛い?どうして欲しい?」

「…イケ…なくて…くるし…の……!

 た……すけて……!…マクアっ!!!」

「―――………わかった、そうしよう、オリビア。

 私の最愛、護るべき者、唯一の存在、



―――――美しく咲く花、オリビア」




オリビアにとっては突然の変化だった。

マクアにとっては抑えてこんでいた欲望だった。



マクアの黄と緑の虹彩が縮み、黒い瞳孔がゆっくりと開いて真円に近付いていく。



これが、夜行性の動物が興奮している時の眼なのだと、オリビアが知るのはずっと後だった。




ずるぅっ…ぶちゅん!


「ッ!?ぁ、あああああッ!?」


オリビアの後ろに挿入されていた触手が引き抜かれ、そしてオリビアの良いところ目掛けて突き入れられた。その衝撃でオリビアは目の前が明転した。


「オリビア、オリビア…気持ちいい?」

「んんッ!!!やァッ…!?ひあッ、あああ!!!」


中では触手からの粘液が異常な量分泌されていて、触手の出し入れによる摩擦で傷がつかないようにされていたが、激しく触手が動くたびに撹拌された粘液がまるで女性の愛液のように後ろからごぽごぽと溢れかえっていた。


ゴリゴリと前立腺を内から押されているオリビアは悲鳴に近い嬌声を上げながら、まるで後ろから突き入れられる触手によって、押し出されるようにして前から白濁を吐き出していた。その白濁も徐々に勢いが無くなっていって、だらだらと力なくオリビアの腹に流れ落ちるのみになっていった。


そんな状態で、オリビアは必死に理性を手繰り寄せていた。

足がガクガクと痙攣して止まらない。何度も何度もイって意識が飛びそうになった。それでも突き入れられる動きで戻ってこさせられた。揺さぶられる刺激で涙が止まらない。唾液も口から垂れていく一方だ。まともに言葉を紡げない程激しい行為だったがそれでもオリビアは一つの単語を口にし続けた。


「……ッ…マ…ぅんッ………クっ……ぁ………!」


マクア、その名前を必死になって呼んだ。

こんなに乱暴に自分を攻め立てているのに、全身を這わせる触手は優しくて、尾はオリビアの体勢を支えていて、手を繋いだままの恋人だ。


マクアは、眼の瞳孔を黒々とさせていて、彼女にしては珍しくフーッフーッと息を荒らげていた。


そして、オリビアだけを見つめていた。


「マ……クアッ…ぅッあああ!!!……マ……ク、ア……!」

「オリビア、オリビア、オリビア………」

「ンああーッ!!!………ッはぁ!……マ…クア!」

「…………オリビア、すき」

「ィ、あぁぁぁあああああ!!!!!」



激しい行為の最後、記憶の終わりにオリビアは、マクアの思いを聞いた気がした。








気がつくと、オリビアはベッドに寝ていた。体が酷く重いので、昨日の朧気な記憶は夢ではないはずだ。それでも清潔感のあるベッドに横たわり、綺麗な寝間着に身を包んでいるのは、きっとマクアが処置してくれたからなのだろう。


目線を向けて時計を確認すると昼はとうに過ぎていた。

マクアはどこにいるのか、

重い体に鞭打って起きようとすると、ぐいと紫の尾に押し戻された。驚いて尾の元を見るとマクアがベッドに隠れるように背を向けて座っていた。


「マクア、そこにいたの…驚いたわ」

「オリビア…ごめんなさい…ごめんなさい……」

「え」

「酷い事して…ごめんなさい………」


マクアはボロボロ泣いていた。

取り返しのつかない悪い事をしてしまったと、そう自覚してしまった子供のようだった。


「オリビアが…そういうこと怖いって知ってたのに………あんな、あんな………」

「マクア、落ち着いて」

「ごめんなさい、ごめんなさい………嫌い、になったよね」

「マクア!聞いて!」


ぴしゃりとオリビアがマクアに言うと、マクアは恐る恐るオリビアの方を向いた。目に隈を作って泣き腫らした酷い顔をしていた。きっと、昨晩からずっと泣いていたのだろう。

オリビアはマクアに手を伸ばして引き寄せようとした。当然、マクアの体重を今のオリビアが支えられる訳がなかったのだが、マクアが従ってくれたのでベッドの上に乗せることが出来た。


ベッドに上半身を起こしたオリビアと縮こまるようにして座るマクア。

オリビアがマクアの手をとると酷く冷たかった。その手を包みながらオリビアは語りかけた。


「『どんなことでも二人で相談する』

 マクア、あなたが言ったんでしょ。

 ちゃんと、お話しましょう?」

「う、オリビア…でも」

「あたしがマクアの事嫌いだなんて、あたし昨日の晩から一言でも言ったの?」

「………言ってない」

「じゃあ、その話はおしまいよ。あたし、マクアの事まだまだ好きだもの。

 …そもそもあたしが昨日マクアを襲ったのよ?あたしこそ嫌われてもしょうがないもの」

「! オリビアのこと嫌う訳ないよ!」

「でしょ?…二人共まだお互い好きなのよ」

「………」

「確かに、昨日のマクアにはびっくりしたし、今も体が辛いけど…ちゃんと気持ち良かったわ。マクアが優しくしてくれたからなのよ?」

「オリビア…」

「マクア、こっち来て。ひとりで寒かったでしょ?あたしもひとりで寝てたから…寒くて仕方ないの」


手を広げるオリビアに、一瞬躊躇したマクアだったが、意を決して飛びついた。


二人でベッドに倒れ込むとふかふかとした布団に受け止められて、オリビアの温度がひどく暖かで、撫でてくれる手のひらが幸せで、マクアはまた涙を溢した。


「…もう、今日のマクアは泣き虫さんね」

「ん…オリビアがいると、自分は泣いちゃうの」

「じゃあ、今日から二人きりのときは泣いてもいいってことにしましょう」

「…ふ、ふふふ、なにそれ、素敵」

「でしょう?」


昨日のように、二人はおでこをぶつけるくらい近くで笑い合った。

そして昨日とは違って、二人はそのまま静かに眠りについた。




二人が空腹で目を覚ますまで、もう少しだけ穏やかな寝息だけが、この部屋を満たしているだろう。






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アウマクアの花 まくら&砂糖 @yamori_nadeshico

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