血で結ばれた二人

ハロウィンにかこつけて書いた、人外修道女×受け吸血鬼というネタです。

バリバリの性表現ありです。

苦手な方はそっ閉じお願いします。


大丈夫な方は、このままどうぞスクロールしてくださいませ。




















 

 この辺りには、昔から吸血鬼が住んでいるといわれる森があった。その森は深く、誰一人近づく者はいない。近くに建てられた女子修道院の修道女達も、この森へ立ち入ることを避けていた。

 この森には立ち入らない方がいいだろう。なぜなら、吸血鬼の住む噂は本当だからだ。


「ふぁ、ああ〜。吸血鬼って意外と暇なのよね。何百年こうやって過ごしてるのかしら。すっかり変な寝癖がついちゃったわ……」

 銀色の前髪を独特にカールさせた青年が、大きなベッドから起き上がる。

 ここは森の奥にある吸血鬼の屋敷だ。

 建てられたのは何百年か前のことで、自分が吸血鬼になる前からこの屋敷に住んでいる。

 吸血鬼の名はオリビアという。数百年と少し前、一度死んだオリビアは、悲しみのあまり吸血鬼になっても良いからと甦らされたのである。

 それからというもの、オリビアは吸血鬼としてこの家に住み続けていた。

 吸血鬼とはいうものの、別に血がなくても生きていける。他人や動物から血を奪うというのは、正直なところ性に合わなかった。

 吸血鬼の中には好き好んで人間を誘惑し、その血を吸う者ももちろんいる。

 ただ、オリビアはそういうタイプではない。根本的に吸血鬼向きではないのだ。

 数週間に一度起きては、念のため森を見て周り、また眠りにつく。そんな日々を過ごしていた。


 ある夜のこと。

 ランタンを手にした一人の修道女が、森で薪を拾っていた。パキパキと枝を踏み鳴らす音で、オリビアは目を覚ました。

 オリビアは音のする方へ飛んでいき、物陰から様子を伺った。

「こんなところに女の子……? 修道院の子かしら。迷子、ってわけじゃなさそうね。人が来るのは久しぶりだし、たまには血を飲むのもいいかもしれないわ」

 ぶつぶつと独り言を繰り返したあと、ホタルのように光るランタンを目印に、そっと忍び寄る。

 ゆらゆらと揺れるランタンの目の前に、音もなく姿を現したオリビアは、なるべく紳士的に振る舞おうとした。だが、そこにあったのは低木にかけられたランタンのみであった。

 困惑するオリビアの背後から、あどけない声がした。

「お兄さん、もしかして吸血鬼?」

「きゃぁああッ!」

「きゃあ?」

「いきなり話しかけたらびっくりするじゃない!」

「あー、ごめんね? こんなところに人がいるなんて思わなかったからさ。……ところでお兄さん、なんか顔色悪いよ? 自分、そこの修道院から来たんだ。具合悪かったら休んでいきなよ」

「えっと……」

 顔色が悪いのは吸血鬼だからである。

 このまま修道院まで着いて行ってもいいが、日が登るまで“おもてなし”されては困る。それに、吸血鬼のオリビアは十字架が苦手だ。できれば目に入れたくない。

 やはりここで血を頂いて、その後は修道院まで送り届けるのがいいだろう。

 ただ、吸血鬼に襲われた修道女を、厳格な修道院が受け入れるかは分からないが。


「心配してくれてありがとう、でも大丈夫よ。あなたから少しだけ、元気を貰えれば……ね」

 そう言うと、オリビアは少女に触れる。

 少女の肌はひんやりと冷たかった。久しく人間というものに触れていないが、人間はもっと暖かかったはずだ。

 この少女は普通ではない。何かが違う。

 オリビアの吸血鬼としての直感が、そう告げる。しかしここまで来てしまったからには、血を求める自分を抑えることができなかった。

「お兄さん、やっぱり吸血鬼なんだね」

「えっ……!」

 思わず、血管を探っていた手を引っ込める。

「自分もね、人間じゃあないんだ」

 そう告げた少女の背後からは、うねうねと蠢く触手が見え隠れしていた。さらに、大きな尻尾も確認できる。やがてゆっくりと触手がオリビアの方へ伸び、手足に絡み付いた。

「ちょッ……。や、やめ……」

 触手は器用に動き、オリビア拘束してを跪かせる。自分よりも背の低くなったオリビアの顎をぐい、と持ち上げた少女は、大きな瞳でオリビアの顔をまじまじと見つめた。

「吸血鬼ってどの個体も顔がいいって聞いてたけど、本当だね。お兄さん、名前は?」

「……オリビア」

「ふうん。自分はマクア。覚えた?」

「え、ええ……」

「いい子だね。……ふふ、オリビアのこと気に入っちゃった。今度は口、開けてくれる?」

「……吸血鬼の牙なんて見ても、面白くないわよ?」

「いいの」

「……あ。……あがッ! ん、んん! んぇッ、う、うんぁ……!」


 ごくり。


 オリビアは何か、得体の知れないものを飲まされた。小さく開けられた口に、マクアが何か塊のようなものを無理矢理に喉奥へ突っ込んだのだ。

 マクアは満足そうに笑って、こちらを見ている。

 一体何を飲まされたのだろう。おそらく薬の類いだろうが、吸血鬼であるオリビアに効く薬など殆どないはずだ。だが、人間以外のものに向けて作られた薬であれば、話は違ってくる。

「あれー? うまく作れたと思うのにな……。まだナントもない?」

「やっぱり薬だったのね!? あたしは吸血鬼よ、普通の薬が効くわけないじゃない。第一、いきなり喉奥にものを突っ込むなんへ、ろうかひへるひゃ……」

 だんだんと呂律が回らなくなり、全身の力が抜ける。オリビアはその場に倒れ込んだ。世界がぐるぐると回り、目を開けていられなくなる。目を閉じてから意識を手放すのに、そう時間はかからなかった。

「おやすみ、オリビア」

 遠のく意識の中で、マクアの声が聞こえたような気がした。

 

 オリビアが意識を取り戻したときには、箱状のものの中に閉じ込められていた。よく見ると棺桶のようである。確かにオリビアは吸血鬼だが、棺桶で寝る趣味はない。蓋をこじ開けようとしたとき、両手が胸の前で組まれ、祈るようなポーズのまま縛られていることに気がついた。

「なんなのよもう! これじゃ蓋が開けられないじゃない!」

 仕方なく足を使って蓋をこじ開けた。

 棺桶が置いてあったのは、窓もドアもない部屋だった。天井に出入り口と思われるへこみがある。

 本棚や古い箱などは埃を被っているが、棺桶の傍に置かれた簡易ベッドは真新しいものだった。

 オリビアは自分が吸血鬼である事を思い出した。この拘束も、あの天井の入り口も、吸血鬼の身体能力があればなんて事はない。

 ほっと一安心すると、腕を縛っている縄を引きちぎろうとした。だが、思ったより力が出ない。というよりも、平均的な筋力よりも劣っているのではないかという程の力しか出せなかった。

「くっ……この……! 取れなさいよ……!」

 オリビアが必死にもがいても、両手の縄はびくともしない。

 諦めてもう一度周囲を見渡してみると、壁に木製の大きな十字架がかけられているのを見つけた。これのせいで、オリビアは本来の実力を発揮できなかったのだ。 

 渋い顔をしながら、オリビアはよろよろと立ち上がると、胸元から何かが騒がしく鳴った。

 よく見ると、鈴の連なったピンがベストの胸ポケットに刺さっている。

 おそらくオリビアが動いたことを知らせる為のものだ。

「あのマクアとかいう子……。こんなものまで……ッ!」

 ピンを外そうとするも、美しい鈴の音色が響くだけで上手く外すことができなかった。

「あたしは胸元のピンも外せないの!? まったく、情け無い限りだわ……」

 すると、天井の扉が開いてマクアが顔を出した。

「その鈴いーでしょう? オリビアが起きたらすぐ分かるようにつけたんだ!」

「……飼い猫にでもなった気分よ」

「オリビアは飼われてるんだし、あながち間違ってないんじゃない?」

「はい?」

「オリビアは自分が飼うって決めたの! よろしくね、オリビア」

「ちょ、ちょっと待ってちょうだい。誰も飼っていいなんて言ってないわよ!? それに、吸血鬼を飼うなんて聞いたことないし……」

「まあ、慣れれば大丈夫だよ」

「そうじゃなくて!」

 話が噛み合わない。

 どうやらマクアという少女は、少し世間とズレているようだ。

「はぁ……。とりあえずこの縄を解いてくれるかしら」

「やだ」

「やだぁ!? なんでよ!」

「だって、その方が可愛いもん」

「かわ……!?」

「お祈りしてるみたいで可愛いよ」

 マクアは悪びれもせずニコニコとしていた。おそらく、棺桶に閉じ込めたのも善意からだろう。オリビアは呆れて何も言えなくなってしまった。

 力づくでここから出ようと思っても、力が制御されてしまっていてはどうしようもない。それに、今が昼なのか夜なのかも分からない。今のオリビアにとっては、大人しく飼われるほかなかった。

 大きなため息をつくと、オリビアは簡易ベッドに腰かけた。それを見ていたマクアは、すかさず側へやってきて膝の上に座る。

 正直、悪くないと思うオリビアだった。後ろから抱きしめるようにしてマクアに寄り添う。

 しばらく抱きしめていると、マクアがくるりと向きを変えた。

 オリビアに跨るようにして膝立ちになり、オリビアの顎を持ち上げて口づけた。

「んッ!? ……っふ、んん……」

 突然のことに、何が起きたのか理解しきれないでいるオリビアをよそに、マクアの厚い舌がオリビアの口内へ入ってくる。ひんやりとした感触に、ぞくりと背筋が伸びた。

 マクアはオリビアの牙に自らの舌を押し付け、傷をつけた。溢れ出る血を、オリビアに与える。

 最初は抵抗していたオリビアも、血の味が口に広がるにつれて、本能に従順な吸血鬼になった。

 喉を慣らして一通りマクアの舌から血を吸い上げると、ゆっくりと唇を離した。

 赤の混じった糸が、両者を繋ぐ。

 もう一度軽く口づけてから、二人はゆっくりと見つめあった。

「血を飲んだからかしら……。なんだか不思議な気分だわ」

「それはね、好きって気持ちだよ」

「……え?」

「自分も同じ気持ちだもん。初めて見た時からずっと」

「あたしが、マクアを好き……」

「そう、両思い」

 その言葉と共に、マクアはオリビアを押し倒す。

 そしていつの間にか出した触手を、オリビアの服の下に這わせる。

 今まで感じたことのない感覚に、オリビアは小さな悲鳴をあげながら、身を捩っている。両手はマクアの頭の後ろで固定されているため、ただ与えられる刺激に耐えるしかなかった。

「ひゃ……ぁ、っん……! やぁ……!」

「でもさっきので興奮してたよね、オリビア」

「それ……は……! あぁあっ!」

「ほら、もっともっと声を聞かせて? 我慢しちゃだめ」

「そんな……っ、はしたない、こと……!」

「しょうがないなー。じゃあこっち?」

 ぬめつく触手でオリビアのズボンを下げる。下着の上から、しっかりと芯のあるそれを握る。

「や、ぁっ、だめ……! そんなとこ、触っちゃ……! ぁうう!」

 ぐっと力を込めると、オリビアの腰がびくんと跳ねた。口ではダメと言っているが、身体は刺激が欲しくてたまらないようだった。

 はぁはぁと息を荒くしたオリビアが、潤んだ目で恨めしそうにマクアを見る。

「ねぇ、こっちで触られるのとこっちで触られるの、どっちがいい?」

 マクアは意地悪そうに微笑んで、手で触れるか触手で触れるかと聞いてくる。

 あの器用な触手で攻められたらどうにかなってしまいそうだ。

「……っ、手、手が……いい……っ!」

「ふぅん」

 そう言うと、容赦なく触手を下着の中に滑り込ませた。

「や、やぁ……! そっちやだぁ! だめ、ぁっ! ん、んんーッ! ふ、ふぁっ……」

「最後は手で触ってあげるね」

「っそ、そん……な……!」

 器用な触手は力を込めたり緩めたりしながら、オリビアのそれを刺激する。それと同時に、完全に下着を下ろされた。

 上半身は先程の触手の粘液と自らの汗でぐちゃぐちゃだった。せっかくのドレスシャツも、皺だらけになって素肌に張り付いている。オリビアが腰を上下させる度に、マクアの付けた鈴が美しい音色を響かせた。

「ぃいっ――……!」

「えー? もう限界? もうちょっと我慢してね」

 触手は上下させる運動をやめ、今まで握っていたそれに巻きついて完全に姿を隠した。締め付けたり緩めたりしながら、じわじわと刺激を与え続ける。

 完全に手隙となったマクアの手は、そろりとオリビアの後ろに添えられた。

「ッ――!? あっ、あぁあ……! そこ、は……!」

「そこは、なぁに?」

 より一層意地悪そうな笑みを浮かべたマクアが、しっかりと後ろの穴を捉えた。

 自らの出した粘液を絡めとると、そこに塗りつける。前を刺激した時に腰が反ったタイミングで、指を一気に挿入した。

「ひゃぁあっ! ふあ……! あっん、んんッ! やめ……!」

「やめない」

 ぐりぐりと後ろを触りながら、オリビアの反応を見る。涙をぼろぼろと流しながら、必死に快感を逃そうともがいていた。

 ぬちゃぬちゃと水音を立てながら出し入れを続けると、より激しくオリビアの腰が上下した。声も我慢できなくなってきているようで、刺激を与えれば面白いように嬌声が漏れる。そろそろ限界かと思われた。マクアは挿入していた指を一気に引き抜くと、触手の代わりにオリビアの前を握った。

 同時に口づけを交わしながら、力を込めて上下させる。身じろぐオリビアを触手で押さえつけ、快感が逃げないようにした。

「ふぅっ、んん、んーッ――!」

 目をぎゅっと固く閉じて、オリビアは果てた。

 自らの白濁が、腹上を汚す。マクアはそれを指で掬いとって、ペロリと舐めとった。

「そんなの、美味しくない……わよ……」

「いいの」

「あなた、本当はサキュバスなんじゃないの?」

「だったらそれに搾取される吸血鬼は、ずいぶんとヘンタイだね」

 最後にもう一度深く口づけて、この日はおしまいだった。


 女子修道院に男の吸血鬼がいるとバレないように、シャワーを浴びるのには一苦労した。

一八〇センチ近いオリビアをシーツでぐるぐる巻にして、洗濯物を運ぶ体で誰もいない脱衣所まで行く。

 急いでシャワーを浴びて、帰りも同じ容量でオリビアを運んだ。しかし、着替えとして用意されたのはマクアとお揃いの、修道女の着るワンピースであった。

「ちょっとこれ、まずくないかしら……」

「しょうがないじゃん! これしかないんだからさ!」

「それはそうだろうけども……」

 これからもこれを着ることになるのだろうか。

 そう思うと、地下室に閉じ込められるよりも憂鬱な気持ちになるオリビアであった。

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