第4話 ゴールドランクパーティー 雷轟竜の顎

 冒険者として活動するようになってから5年。ジョン達はゴールドランクパーティー雷轟竜らいごうりゅうあぎととして、魔法師アイナ、回復神官ライラを加え4人で活動していた。

 レクスはこの5年でギフトの力を十二分に使えるようになり、盾役兼火力担当として前衛をこなすイケメン姿とレクスが使う雷光魔法のインパクトにより周囲から雷光の勇者と呼ばれるようになっていた。

 魔法師アイナ、回復神官ライラも高い技術を持ちパーティー雷轟竜らいごうりゅうあぎとはダンジョン攻略や暴れ狂うモンスターの討伐などをこなし一流と呼ばれるダイヤモンドランク目前では、と注目を集めていた。

 そんな躍進の中ジョンは未だ己のギフトが分からず、ギフトの力を十分に発揮できずにいた。


「ハァハァ・・・グッ こんのッ!!」

「ジョン! 詠唱完了!!」


 待ってましたと言わんばかりにジョンは狼面おおかみづらの二足歩行で剣を扱うウルフマンソルジャーを蹴りその反動で跳躍した。


「フレアジャベリン!」


 アイナが流麗に唱えると激しく燃えながら鋭い槍の形した物が上空からウルフマンの群れ目掛けて降り注いだ。


「やっぱ凄いなアイナの魔法は・・・」

「ふんッ 当たり前でしょジョン。私をそんじょそこらの魔法師と一緒にしないでくれる?」

「ハハハ、改めて思っただけだよ。それよりレクスの方に加勢しよう。」

「ジョンがちんたらしてるからあっちは終わりそうよ。」


 アイナがおちょくる様にジョンを見ながらレクス達を見なさいと顎で指す。


「ホーリーシェル!」

「ありがとう! ライラ。これならッ 雷光連」


 ライラが唱えた聖魔法により、ウルフマンアーチャーやウルフマンソルジャーの攻撃はレクスには届かない。

 その隙をもってレクスはバチバチと輝きだし瞬間、雷が走るが如く連撃を眼前にいるウルフマン達にお見舞いする。

 その光景を最後尾で見ていたウルフマンジェネラルは己の生命の危機を感じ咆哮ほうこうを放つも更に踏み出したレクスを捉える事は出来なかった。

 雷光の力を乗せた一刀によりウルフマンジェネラルは首と胴で別れた。


「フゥーー ボスは倒せたな」

「お疲れ様ですぅ~どうやらフロアクリアみたいです~」

「お疲れ、レクス、ライラ」

「おう ジョンもアイナもお疲れ!そっちの群れ引き受けてくれて助かったよ」

「私の魔法にかかれば当然よ!」

「さすがアイナさんです~」


 フロアボスを倒した事によって奥の扉が開き、宝が出現した。

 ジョン達が居るのは、狂い狼の住処と呼ばれるゴールド級ダンジョン。

 ここには次の階級に上がる為にと踏破を目指し攻略していた。


「さて、遊戯神様のご褒美は何かな・・・罠は無さそうだけど、一応ライラ頼む」

「はい~ じゃぁレクスさん、ホーリーミラー」

「ジョンは相変わらず慎重だなぁ ありがとうライラ。じゃぁ開けるよ」


 パーティーの決まりで危険性を確認した上で宝箱はリーダーが開ける事になっている為リーダーのレクスが宝箱に手を伸ばす。


「おぉ これは結構なデカさの魔石だね。後は毛皮と・・・これはネックレスかな?」

「中等級の魔石じゃない! これ、結構いい値段するのよね~」

「毛皮はこれ・・・黒狼の毛皮かな? ネックレスは調べないとわからないな」

「上々ですかぁ~?」

「ざっくりだけど余裕でおつりが来る程プラスになったと思う。」

「頑張った甲斐があったよ。じゃぁ帰還しようか皆!」


 レクスの合図で戦利品を各々分担して持ち奥の部屋にある帰還の水晶がある部屋に行く。そのまま水晶に触れると青白い光が4人を包みダンジョンの入口フロアに転移させた。


「よーし! 帰るまで油断禁物で行こう!」

「レクスはいつもそれ言うわね・・・」

「まぁまぁアイナ、レクスのこれを聞くとダンジョンから戻ったって感じがしていいだろう?」

「まぁそうだけど・・・」

「っと、昼前かな? ちょっと色々聞いて交渉してくるから皆は休んでてくれ」

「よろしく~」

「お言葉に甘えます~」

「ジョン、助かる!」


 そう言ってジョンは小走りで行商がいる方向へと向かっていった。


「リーダー、考えてくれた? あの件」

「アイナ、まだクエスト中だよ。その件については帰ってから考える・・・」

「前もそう言ってたわよ。今回のダンジョンアタックもギリよギリ! それに、ジョンも馬鹿じゃないんだから薄々・・・」


 アイナは言葉を口にしながらも弱気になったのか小声になって行く。


「まぁ まずは今回のダンジョン踏破をお祝いしましょうよ~」

「スマン、二人とも・・・」


 ジョンが戻ってくる前に暗くなってしまった雰囲気を元に戻す三人。


「ん? 大丈夫か皆? とりあえず街行きの行商が見つかって、それに乗っけてもらえる事になったから行こう」

「ありがとうジョン、さぁ 帰るか!」

「打ち上げ楽しみです~」

「もう、気が早いわよライラ フフッ」




 ダンタルムへ着く頃には薄暗くなっており、冒険者ギルドへの報告はジョンがしておくからと一旦解散し身支度してから打ち上げをしようという事になった。

 皆と別れたジョンはその足で冒険者ギルドへ足をのばした。


「ノルンさん、ダンジョンから帰還したのでその報告に来ました」


 ギルドカウンターで戦利品を並べながらジョンが受付嬢ノルンへ伝えた。

 ダンジョンへの行き来は特に冒険者ギルドへの報告義務はなく、ダンジョン入り口の関所だけで事足りるのだが連絡事項等あれば早いに越したことはなく冒険者ギルドとしては推奨している。

 ジョン達も出来るだけ帰って来てすぐに報告する為に分担して行っていた。


「お疲れ様でしたジョンさん。・・・お1人ですね。ガルルスさんから、部屋に居るのでいつでも声をかけて欲しいと伝言をジョンさん個人宛に預かっております。ガルルスさんをお呼びしましょうか?」

「ガルルスさんが戻ったのですか! この辺で待ってるので是非呼んで下さい。 あとこれ今回の戦果なので査定お願いします。」

「はい承りました。こちらは明日以降の換金になります。ご了承ください。 ではガルルスさんをお呼びしますね。 この反応ですとお近くにいらっしゃるようです。」


 冒険者ギルド証には簡易な連絡手段としての魔法機能がついておりその反応で近くにいるかどうかを判断する事が出来る。

 冒険者ギルドが所有する魔道具から発信する事ができ、近ければ青く、それから遠くなる事に黄色、赤と徐々に色を変えていく。それ以上遠いと反応しないという程度の機能であるがあるとないとでは大違いの機能であった。

 ジョンはノルンへ了解とお礼を伝え冒険者ギルド内にある空いた椅子へと腰かけた。


 暫くすると、屈強な冒険者達の中でも飛び抜けて巨躯で額と鼻先から生える立派な3本の角と力強い尻尾を携えた獣人が冒険者ギルドを訪れた。


「ガルルスさん! こっちです!!」

「む おぉ ジョン!! 久しいな」


 ジョンは待ち人が来たことで冒険者ギルドの酒場の空いてる席へ行き飲み物を頼み話始めた。


「今日はありがとうございます。今回の修業も結構長かったですがさすがガルルスさん、より一層強くなりましたか?」

「まぁのぉ キツくなければ修業の意味もないからの。ジョンもダンジョン帰りだろう。ワシに会うなどそう急ぐことでもなかろう?」

「いえ そうとも言ってられませんよ。今回のダンジョンはかなり力不足を実感しましたし。パーティー加入の話、受けてもらえませんか?」

「加入は前向きに検討しているが、何もジョンが抜ける必要はないのではないか? それこそパーティーなのだ役割があるだろう」


 そう言ってグッと運ばれて来ていた麦酒を豪快に呑むガルルス。


「ふぅ それにレクスもそれを望まないのではないか?」

「・・・いえ あいつらはこれからもっと上に行ける力があります。そこにガルルスさんが加われば盤石です! 足手まといのオレが居たらレクスが十二分にやれません。あいつらの足枷にはなりたくないのです。オレにだって意地がありますから。それに何もオレ自身腐る訳じゃなく強くなる為に今まで以上に模索しようと思います」

「ふむ 決意は固いか・・・であるならば何も言うまい。だが、レクス達に反対されたらこの話は無しだ。さすがのワシも無理に加入するつもりはないからな!」


 ガッハハハと豪快に笑い、少し重くなった空気を吹き飛ばすガルルス。

 つられてジョンも笑みをこぼす。


「ハハハ それでは申し訳ないのですが、また声掛けますのでその時まで待ってて下さい」

「そこまで気にする必要はない。ワシも今は戻って来たばかり。英気を養うときだ。ここで部屋をとっているから連絡は宿屋の女将に伝えてくれ」

「ありがとうございます! では」


 そう言ってジョンは飲み代を支払いダンジョン帰還の打ち上げに遅れないよう駆けて行った。

 その後ろ姿を見ながらガルルスは呟いた。


「自分自身すらもからぬ加護でさへゴールドに至るとは・・・そこで感じる力不足・・・それでも腐らぬとは、ワシも精進しなければな。ジョンの代わりなど、さすがに無理だろうが・・・・・・」


 1人決意を改にするガルルスだった。

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冒険者として生きてきたが実は転生していたようだ @kurobye

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