どこかが冥界

バブみ道日丿宮組

お題:それいけ冥界 制限時間:15分

どこかが冥界

 世間では冥界めぐりというのが流行ってるらしい。

 ネットで調べると方法がいくつかでてきた。

「……これってただたんに自殺するだけじゃない?」

 お風呂場に声が響く。

 空気がない場所にいくとか、崖の上から飛び降りるとか、病院で怪しい薬を投与してもらうとか。あるいは車にはねられてみるだとか。

 どれも現実的じゃない。

 冥界って別に天国っていうわけでも、地獄っていうわけでもないと思う。

 神さまからしたら、同じかもしれないけど……ね。

「お姉ちゃんまだ入ってるの?」

 弟が外から声をかけてくる。

「もうちょっとだけだから。それとも一緒に入る?」

 ぴかーと光るようなオーラが見えた気がした。

「うん、僕お風呂一緒に入る!」

 待っててねという声とともに、お風呂場の外で弟が苦戦しながら服を脱いでる。

 まだ子どもだし、手伝ってあげればよかったかもしれないというか、お風呂入る前に聞くべきことだったかもしれない。

 今日はお母さんもお父さんもいないだったし、一人で入るのはかわいそうだし。

 なんだかんだ弟には甘い私である。

 冥界の行き方なんて調べてる場合じゃないね。

「入ったぁ」

 入ってきた。なので、浴槽から上がる。

「じゃぁ、身体洗おうね」

 弟は顔と耳が少し赤い気がした。のぼせた? 入ってもないのに?

「うん。お姉ちゃん見て洗う」

「こっちは見なくていいよ。ほら背中向けて」

 ごしごしと背中を洗い、次に前を洗い、最後に髪の毛を洗ってあげた。

「じゃぁ、入ろっか」

 弟は一緒にくっついて入るのが好きらしく、背中を私の胸にくっつけてくる。

「お姉ちゃん、何調べてたの?」

「ん? 最近流行ってるニュースだよ」

「ふーん。そうなんだ」

 ぱしゃぱしゃと弟はそういって浴槽で遊び始める。

 身体が大きくなったように見えてまだまだ子どもなんだな。

「中学校ではなに流行ってるの?」

「スカートめくり」

 まるで小学生みたいなのが流行ってるんだと、ちょっと眉がひきついた。

「スカートめくりしてるの?」

「ううん。男子はしてない。してるのは女子」

 なんということだろう。健全な男子がいるなかでそれはかなりアグレッシブ……。

 

 それから数分話題を変えながら、弟とお風呂に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どこかが冥界 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る