第8話「魔導師ハンター 布田幕斗」

「キルメロアって人間は住んでないんですか?」


 モンスターと融合できるとはいえ私は人間だ。


他に前例がいないのであれば何かトラブルを起こす可能性もある。


さっき打ちのめしたビートを日陰に移してからケイヴさんに聞いてみた。


『ここにも純粋な人間は1人いますよ、ただちょっと変わり者でして』


「会ってみたいんですが」


『ではご案内しましょう、シトラスさんぐらいなら彼に対抗も出来そうですし』


「?」


 ケイヴさんの言っていることがよくわからなかったがとりあえずついていこう。


『ところでシトラスさん』


「はい」


『魔導師ってご存知ですか?』


「魔法使いでなく?」


 モンスターに対抗するための術として人間は魔法を覚えた。


炎、水、風、土からなる四元素を基礎とし、


生活の助けに用い、武器としても使う。


そんな人達の事を魔法使いと呼ぶのだ。


で、魔導師って何?


『私も噂でしか聞いたことがないんですが、魔法使いや民間人、モンスターまでも襲う集団らしいのです』


「・・・」


 私の村を襲ったテック。


森のモンスターを殺した蟲の親玉カンザシ。


あいつらも魔導師なのかな?


『シトラスさん?』


「それっぽいのになら2回ほど遭遇しました」


「私のいた村を襲った奴は魔法を使ってましたし、森の中でも蟲を操る女の子に襲われました」


「・・・そのお話詳しく聞かせちゃくれねえか?」


 近くにある柱にもたれ掛かっていた男性が声を出し近寄ってきた。


見たところ異人ではなさそうだ。


もしかしてこの人がキルメロアで唯一の人間かな?


『幕斗さん、お客さんですよ』


「そうかありがとなケイヴ」


「で、お嬢ちゃんどこの出だい?」


「ブラッチのアイリンカ村からです」


 村同士の交流もブラッチではあんまりしないので村の名前とかあんまり覚えていないのだが、さっき思い出した。


アイリンカ村、人口の少ないのどかな村だった。


「アイリンカ・・・2週間くらい前に村人がほとんど失踪してるよな?」


「私が寝てる間にみんなゴーレム使いに殺されてました」


「名前わかるか?」


「魔術師でアーティストって言ってて、名前はテックと名乗ってましたが」


 忘れられない名前だ、今度会ったら確実に首をはねてやる。


「嫌なのに出会ったな」


『知ってるんですか?』


「俺はこう見えても魔導師ハンターだぞ、情報収集はしっかりとやってるわ」


「魔導師ハンターですか」


「ああそういえばまだ名乗ってなかったな、俺は布田 幕斗。違う大陸から来たんだ」


「私はシトラスです。後はスライムのルド、スカイアローのショット、オークのルクス、ジャングルナーブのピーピス」


「モンスターマスターなのか?」


 モンスターマスターってなんだろう?知らない職業だな


「何ですそれ?」


『モンスターを使役する人たちのことですよ、魔法使いの部類に入りますね』


 なるほどカンザシとかがその類に入るのかな?でも私は違う。


「私はですね・・・(ルド)」


『(おう)』


 こっそりとルドに目配せして融合した、さて反応はいかかがなものか?


「私は特殊な体質らしくてモンスターと融合できるんですよ~』


「お嬢ちゃんか、魔導師撃退の功績者は」


「私のことも知ってるんですか?』


「ああ、アイリンカの唯一の生き残りがいて、そいつがモンスターと融合したって噂を聞いた」


「でも実際目の当たりにするとなんてことはない普通のお嬢ちゃんだな」


「普通でいいんですよ』


 2週間くらい前まで私は普通に生きてたんだからしかないじゃないですか。


「でもな、魔導師ってのはしつこい連中さ、簡単に人から大切なものを奪っていく」


「お嬢ちゃんはもう目を付けられてると思うぜ」


『まじかよ勘弁して欲しいぜ、2週間旅してやっと付いたのにここもすぐにおさらばかよ」


「話し方が変わったな、スライムの方か?」


『いやいや、俺にはルドって名前があんのよ。一括りにされるのはちょっとなぁ・・・」


「すまんなルド、んでもってなお嬢ちゃん、俺の手伝いをして欲しいんだけど」


「なんですか?』


「魔導師狩りだ」


「あ・・・』


 幕斗は突然服の中に隠していた銃で私を撃った。


スライムなので弾丸とかは効かないが流石にびっくりした。


なんで急に撃ってくるわけ!?馬鹿じゃないのこの人。


「何すんですか?!私じゃなかったら即死ですよ』


「テストだよ、俺についてきても死なないかのね」


『ムカつくなぁ、アニキ頼むぜ」


『おう、任せとけ』


 すぐさまルクスと融合して幕斗に襲いかかる。


だがこっちの勢いを利用されて私の体は宙に浮いた。


「ただ突っ込むだけじゃダメだぜ」


『シトラス、こいつ只者じゃないぞ」


 地面殴ってつぶてを飛ばそうか?


駄目だよねぇ、修繕がめんどうだし。


『ちょっとちょっと、私を忘れないで欲しいんだけど』


 足元をつつかれたと思ったらピーピスがいた、早く融合したいらしいが・・・


「でもここ舗装されてるよ』


『そんなの関係ないわ、さっさと代わってよルクス』


『まあ俺じゃ駄目そうだからいいがよ」


 次はピーピスと融合した。


地面は舗装されているが隙間は確実にあってその下は土が広がっている。


なので蔦も根も張り放題なのだとか。


『あなた随分と上から目線じゃなくって?」


「流石に血の一滴でも流してもらわないと気が済まないわ』


「やってみるといいよ」


 植物で出来た刀を構えて幕斗に向かう。


幕斗はそれに対してナイフを持ち低空姿勢で斬りかかり相打ちの形となる。


私は2回ほど切られたが、幕斗も脇腹から血が流れている。


「なかなかやるな」


「浅く切りましたわ、すぐに止血なさい』


「情けは人の為ならずってことわざが俺の国にはあってな」


「これってテストじゃないんですの?』


「まぁテストなんだけどさ、それでもいつでも本気が一番なんだよ」

 

『シトラス、僕も戦いたいんだけど』


 ・・・じゃあ最後は一撃で


「おいで、ショット』


『ちょっと?!まだ私との合体ちゅ・・・」


 その時間はゆっくりとだが手早く流れていった。


まずはピーピスを切り離してルクスに投げる、


そして突っ込んでくるショットと融合・・・。


この間なんと5秒、その後はすぐに上昇してすぐに幕斗に襲いかかる。


「狩りじゃないから、サクッと終わらせるよ♪』


 私の蹴りが幕斗の頭を軽く掠めた時点で彼は地面に倒れ込んだ。


ほんとに軽く蹴ったので頭の皮膚は抉ってないが脇腹の血が気になるのでケイヴさんに医者の元へ運んでもらった。


 キルメロアの医者は医療に長けたエルフで名前はミトンといった。


気温は暖かいがわけあっていつもマフラーをしてるらしい。


『これならすぐに塞がるっすよ、傷口が鋭いのが良かったっす』


「良かった」


『幕斗さん、いつもは家で情報整理してるか、外に出て情報収集してるかだったのでさっきは驚きましたよ』


『しっかしシトラスさんの体は不思議っすね、もしかして伝説のキメラってやつかも知れないっす』


「なんですかそれ?」


 もしかして私の体質に関する情報が得られるかもしれない。


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融合勇伝! 小波 良心 @ryousin

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