第7話「異人の町キルメロア」


ピーピスのおかげで難なく森を抜けると、小さな町が見えた。


「久々に人がたくさん居そうなところに出た!』


『ちょっと寄って行きたいわね」


『でもよ、俺たち全員モンスターだぜ』


 確かに鳥、オーク、スライム、植物娘という一行は町に合わない。


むしろ討伐されそうだ。


「じゃあ私が様子見てくるよ、もう毒は全部抜けたんでしょピーピス?』


『勿論よ、私と合わさってたんだからすぐに元気になったでしょ」


 というわけでピーピスを体から切り離して私は町へ向かうことにした。


畑や田んぼが並ぶ農道を抜けるとすぐに町に着いた。


そして目の前に広がる光景に驚いた。


「わぁ!」


 人間の町だとばかり思っていたけども、モンスターや異人ばっかりだ。


ちなみに異人とはモンスターに寄生されたり、モンスターと人間の間に生まれた人達のことをいう。


 筋骨隆々のミノタウロスが歩いてたり、


そこかしこに水路があってマーマンやマーメイドが泳いでて。


ガールダも飛んでる!すごいなこの町。


『可愛らしいお嬢さん、旅の途中かな?』


「あ、そんなところです」


 町の入口で跳ねたりしている私に話しかけてきたのは紳士的なミノタウロスだった、驚きの連続だね。


『ここに人間はあまりいないんだけど、君モンスターは平気かい?』


「私ブラッチの出身なのでモンスターとはよく触れ合ってました」


 触れ合うどころか融合してますしね。


『ブラッチの娘か、最近村が一つ潰れたと聞いたが知ってるかい?』


「!」


 誰かが噂してるらしい、ブラッチは無法地帯だから情報は誰かが漏らさなきゃ外の地域まで伝わるわけないし、


テックの奴が自慢などして広まったのだろう。


『どうかしたかい?』


「それ私の村なんです・・・」


『これは失礼した、それでは君がモンスターと融合する娘か』


「私って結構有名なんですか?」


『他はどうかわからないが、この町では知らない者はいないね、異人の町キルメロアは同族の噂は逐一入ってくる』


 キルメロアか、居心地は悪くなさそうだしルドたちを呼びに行こうかと思っていたら声をかけられた。


『あんたがブラッチの融合娘か、一つ試させてくれよ』


 いきなり蟲の部分を持つ男に殴り掛かられた、すぐに距離をとったけど、このまま続けたらボコボコにされそう。


『ビート、やってきて間もない旅の方を、ましてや女性に暴力を振るおうとはどういう了見かな?』


「そうですよ、何ですかあなたは?」


『俺は強者を目指してるんだ、無法地帯の出身でモンスターと融合できるあんたは相当強いのだろう?』


「だから?」


『俺と戦ってくれ!』


 えー、変な人来ちゃったよ、バトルマニアってやつかな?こういうのって。


相手しないと付きまとってきそうだししょうがない、受けてあげようかな。


「いいけど、ちょっ」


『さあ行くぜ!』


「話聞けー!」


 ちょっとまっててって言いたかったのにこいつ、いいよって言ったあとの言葉聞かずに殴ってきた。


馬鹿だ。


「ちょっと待ってよ」


『なんも変わらないがどうかしたのかー』


 融合する相手が誰もいないのに戦えるか、それとあんたの拳を避けるので精一杯なんだよ。


「助けて~」


『シトラス、どうしたの~』


「ショット!いいとこきた、融合するよ」


『うん』


 ビートの攻撃をショットが舞い降りた風でかき消した隙に融合、さてどうしてくれようか。


「ムカつくから気絶でもすれば?』


『鳥になっただと?!』


「あなただって蟲でしょうが、この間蟲関連でひどい目にあったから容赦できないよ』


 カンザシは今度会ったらしばく。


鉤爪で蹴りを連発しながらビートとの距離を縮めるが、こっちには腕がないのでコケたらおしまいだ。


『がんばって、みんなもそろそろ来るはずだから」


「できればすぐにでも来て欲しいかな』


『どうした?俺はまだやれるぞ』


 これで本気出すと、相手を倒すどころか惨殺しちゃいそうだから加減してんだけどなぁ。


ひょいひょい避けていたら、次の瞬間ビートの回し蹴りに引っかかり地面に倒れ込んでいた。


「まずい』


『アニキ、俺をシトラスの方へ投げてくれ』


『わかった』


 頭上に瓶が落ちてきた、中身はルド。ルクスが投げてくれたんだろう、ビートの拳が落ちてくるまであと一瞬。


そのうちにショットを切り離して、ルドと融合するのは私だからできる!


『なんだぁ?』


「あんたのダル絡みもここまでにしてくれよ』


『いつの間に!そら』


「スライムだから打撃は効かないんだぜ』


 それでもパンチを連打してくるビート、いい加減うざいから窒息させるか。


ビートの顔に張り付き呼吸を奪う、まぁ死なない程度で。


『・・・』


「気絶するの早!?』


『かなり動いていたからね、酸欠寸前だったんだろう』


 ビートが気絶したあとすぐに離れた、あれ以上やると本当に殺してしまいそうだったし。


ビートはミノタウロスのおじさんに日陰へ運ばれていった。


『済まないね、彼はいつもああなんだ』


「別に気にしてませんよ、最近奇襲続きで慣れてきちゃってますから』


 そんな慣れは本当は嫌だが、向こうが勝手に来るのでしょうがない。


『自己紹介が遅れてしまったね、私はケイヴという』


「私シトラスです、いま融合してるのがスライムのルドで、他に3人連れがいます』


『ところであそこにいるオークの彼とも融合するのかい?』


「ルクスのことですね、はい彼も私の仲間です』


『できるならば一度手合わせ願いたいものだな』


「今日じゃなければいいですけど・・・』


 キルメロアって変な人ばっかりなのかな? 


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