第50話 団円

 片桐さんが拍手をしていた。


 これ以上にないほどの違和感を感じる。


 この人、マジ、何なの?


 そんな視線を送り続けているにも関わらず、片桐さんは口に手を添えてから言う。


「ヒュー、ヒュー、お熱いね、おふたりさん」


 昔、それも、再放送のドラマでこんなシーンを見たことがあった。


 続けて片桐さんは指笛を鳴らす。


 ピュー、ピュー、ピューイ。


 ふつうに器用なおばさんだなと思った。


 けれどもここに来てそんなことはどうでもよかった。


 気を取り直すようにして、再び、少女の正面に向く。


 ベランダというところが雰囲気を損なっていたが、それでもふたりはお互いを見合った。


 そのままどうするべきかわからないまま見つめ合う。


 少しだけ首に角度をつけてのぞきこむように向けられる少女の笑顔。


 勘違いでなければ催促のようにも見えていた。


 たっぷりと間を置いていると、脇からおばさんの声がまた聞こえてくる。


「ほらほら、さっさとやっちゃえよ」


 思うところはあった。


 あったものの、予定調和にキスをした。


 それから、少女を優しく抱きしめる。


 今日一日、日常にやってきていた日常ではない出来事の数々。


 散々だった気もするし、貴重だった気もする。


 思い返すというよりも、今ある少女の温もりを通して、じんわりと感じていた。


 さらにたぐるようにして抱き寄せる。


 ん?


 おなかが何だかゴワゴワしていた。


 フリルをめくってからよく見ると、何かがぶら下がっている。


「あのー、でてるんですけど、はらわた」


「ええ」


 片桐さんもニッコリ笑った。

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