第38話 レイシスタの本心
レイシスタ=フロールは、代々【氷帝】の称号を受け継ぐフロール家のもとに生まれた。
フロール家の領地は一年のほとんどが雪に覆われている。
主に狩りをして食料を賄っており、レイシスタは幼い頃から大人に混じって狩りに参加し、魔法と弓の腕を磨いてきた。
そんなレイシスタは四月から王立魔法学園に通うはずだった。
だが入学式の少し前、フロール家の領地に大量の魔物が現れた。
魔物のほとんどは倒されたが、魔物の中に一体、強力な魔物が居た。
その魔物はフロール家の領民総勢でかかっても倒しきれず、魔物は不定期に襲ってきて、少しずつだが領地と領民に被害が出ている。
そんな状況、本来ならば国に助けを求める、もしくは他の領地に助けを求めるべき状況だ。
だがそうはいかなかった。なぜならフロール家は【氷帝】の称号を受け継ぐ貴族。
魔法主義の世界において最強の称号を持つ者だから。
そんな状況下でレイシスタが学園に来たのはフレイナ家もとい、フェルニーナに助けを求めるためだ。
フレイナ家は現在【炎帝】の座を維持するための手段を探すべく世界中を回っており、とてもじゃないが他領地の助けをする余裕は無い。
だが学園襲撃でフェルニーナが活躍したという話を聞いた。その話から、もしかしたらフェルニーナは【炎帝】の魔法である【
しかし事実は少し違い、フェルニーナは【火炎鳥】を受け継いではいなかった。
だが代わりに別の強力な魔法を習得し、さらには『
魔法が使えずとも強力な戦力になることには変わりない。これでフロール家を救えると思った。
だがそれと同時にレイシスタは本当に頼っても良いのかと思ってしまった。
家のピンチであることは理解している。だがそれは友を危険にさらしていい理由にはならないのではないか?自分の都合で厄介ごとに巻き込むわけにはいかないのではないかと。
そんな迷いが彼女を窮地へと追い込んだ。
_____________
[チャンスタイムは一分間。一分経ったら殺すからね]
「っ」
偽物のフェンリルによって地面に押さえつけられているレイシスタ。
そして彼女の眼の先にある鏡にはキリヤとフレイナの姿が映っている。
[ほら、早く助けを呼びなよ。そこから叫べば二人に聞こえるんだからさ]
「………」
レイシスタは弓を握りしめ、思考を回す。
(体は完全に抑え込まれている。【
[ほら、早くしなよ]
(手段が無い。だからって偽物の言うままに二人に助けを呼びたくはない。どうしてそこまで助けを呼ばせたいのか分からないけど、偽物の言う通りになるなんてのは絶対に嫌だ)
[あと三十秒だよ?このままだと死んじゃうよ?]
(死ぬ。それは一番できない。こんなところで死ぬわけにはいかない。家族が待ってる、私は助けに帰らないといけない!)
[まったく強情だねぇ。十、九、八、七]
(カウントダウンが始まった。……やっぱりこれしかない)
[六、五、四、三、二、一]
「【アイス・バースト】」
カウントが終わる直前に、氷の弓を起点として爆発を起こす。
[っ!?]
「はぁ、はぁ、なんとか、なった」
爆発に乗じて何とか偽物の【氷狼】から抜け出せた。けど爆発に魔力を大量消費したから魔力がもうほとんど残ってないし、制服もボロボロになった。
[本当にしぶといね。でも今のでかなり魔力を消費したでしょ。もう後が無いんじゃないの?]
やっぱり私なんだよね。よく分かってる。
「それでも私は、最後まで諦めない」
[そうやって全部一人でやろうとするからそうやってボロボロになるんだよ。さっさと助けを求めればよかったのにね。いけ【
【氷狼】が襲い掛かってくる。
対して私は武器である弓を失い、魔力もほとんど残っておらず、自分の身を守る物は何もない。
「ごめんね、みんな」
レイシスタが残った僅かな魔力をかき集めて魔法を発動させようとしたその瞬間。
ドゴンッ!
大きな音と共に鏡の壁が破壊される。
そしてその壁から一組の男女が部屋に入ってくる。
「まったく無茶苦茶するわね」
「緊急事態だからな」
男子は剣を持ち、女子は燃える鳥を肩に乗せている。
「何で二人がここに?」
「決まってるだろ、助けに来たんだよ」
魔剣使いキリヤと【炎帝】候補フェルニーナ=フレイナがその場に現れた。
魔法を使えない最強剣士、魔法至上主義の世界を100ノ魔剣で成り上がる 影束ライト @rait0
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