第3話

優のお陰で俺はしばらくした後学校へ復学した


「おぉ〜友よ!」

「暑苦しい」


教室に入った途端敦也が走ってきて肩を掴む


「まじか、流石優だな」

「本人の力ですよ。私は手伝っただけです」

「いや、感謝してるぞ」

「そ、そうですか」


優は顔を赤くしている


「おや……いてっ」


隣にいた先生が何かを言おうとしたが足を踏まれ遮られている

3年に上がった後引きこもっていたので周りよりかなり遅いが行く大学を探している


「何処か決めましたか?」

「……いや、まだだ」


ちなみに優は俺が引きこもっている間に大学は決めていた

優は大抵の大学なら何処にでも入れるレベルの頭脳を持っている


「それなら私と同じ所行きます?」

「お前の所って頭良いよな?」


徐ろにカバンから過去の入試問題を取り出す


「そうですね、学力でいえば上の方ですね。でも勉強すれば受かると思います」

「俺でも受かるか?」

「私が教えてあげましょう」

「お願いします優先生」

「スパルタで行きますのでご覚悟を」


時は過ぎ6月、高校は無事卒業しており優と同じ大学にも受かった

今日は綾の命日だ

優と共に墓地に来ていた、綾の両親とすれ違い軽く言葉を交わす

話からして恋人がいたことは知っていたが誰かまでは把握していなかったようだ

墓石の前で手を合わせる

持ってきた花を空いている花立てに入れる


「…………」

「…………」


沈黙が続く

暫くして立ち上がる


「行くか」

「そうですね」


墓地を抜けると優が手を握ってくる


「どうした?」

「いえ、綾さんに失礼だと思い今日は手を繋がないつもりでしたが私は綾さんの代わりで恋人になった訳じゃないのを思い出しまして」


そう、優とは恋人同士になっていた

綾と同じバレンタインの日に告白してきた

綾と同じく朝だ


「彼女の事を忘れろとは言いませんし断ってくれても構いません。ただ昔から貴方をお慕いしておりました。綾さんの代わりになるつもりもありません」

「いや……」

「彼女の代わりに貴方を幸せにするのではなく私が私の為に貴方と共に幸せになりたいから今日言います。彼女は私の恋のライバルですから亡くなったからと言って油断も負ける気はありません」


優はいつもより言葉が多くいつもと違い表情豊かで感情を前に出している

俺は考えて放課後に答えると言って時間を貰った

考えた挙句に押し負け付き合い始めた

敦也は『漸くかよ』と呆れていた

なったと言っても今までとそれ程変わらない、強いて言うのなら……前より魅力的に見えるという事だろう


失った者は戻らない、けれど人は前へ進む

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真実に気づかない 代永 並木 @yonanami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ