第234話 渚③

「ゆうきお兄ちゃん、葵、おっはよ~‼」


朝、葵と一緒にご飯を食べていると、渚ちゃんが、そんなことを言いながら家の中に入ってきた。


「おはよう、渚ちゃん‼」


「おはよう、渚」


俺たちはそう、渚ちゃんに挨拶をしながら俺たちは玄関に向かった。


「ゆうきお兄ちゃん、それじゃあ行こうか。」


渚ちゃんは、そう、笑顔で俺に向かって言ってきた。

……でも、なぜか俺は、その渚ちゃんの笑顔に違和感を覚えてしまったのだ。


_________________________________


「ゆうきお兄ちゃん、ついたよ。」


そう言って、渚ちゃんが声をかけてきた。

俺たち二人が今日来た場所は、さっき渚が言ってた通り、俺たちが昔通っていた幼稚園だ。


「ゆうきお兄ちゃん、覚えてる?あの砂場で、よくおままごとをしたよね。」


渚ちゃんは、そう語り始める。


「毎日のように泥団子を作って、下駄箱の前にある傘立ての下で乾かして……結局、うまくできたのって、2個とか3個だったよね。」


悲しそうな声でそう言う。


「ゆうきお兄ちゃん、ほらそこ、一緒に追いかけっこしてたら、あそこでゆうきお兄ちゃんが転んじゃってさ……。」


滑り台のちょうど下あたりを指す渚ちゃんの手は、震えていた。


「……。ごめんね、ゆうきお兄ちゃん。私のわがままにつき合わせちゃって。」


そういう渚ちゃんの目には、涙が浮かんでいた。


「ゆうきお兄ちゃん。ううん、○○ゆうは、優しいから、わたしに付き合ってくれてるんだよね。……本当は葵と一緒にたくさんの時間を過ごしたいのに。」


「そ、そんなことは……。今はまだ、渚ちゃんのことを思い出せていないけど、渚ちゃんが大切なことは変わりないし、大切なのは変わらない。……だからそんなこと言わないで。絶対に、渚ちゃんのこと、思い出して見せるから。」


優しく、俺は泣いている渚ちゃんのことを抱きしめ、その頭をなでるのだった。

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片想い中の幼馴染との同棲生活⁉︎普段は冷たい幼馴染は、実はすっごく甘えん坊⁉︎ 種蒔 フラワー @yuusei0305

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