第233話 渚②

「ゆうきお兄ちゃん、それじゃあ、行こうか。」


私は、○○に向かってそういう。○○が、私のことを思い出してくれる確率が、すっごく低いことを知ってても、私は○○が思い出してくれる可能性に賭けて、○○のやさしさに縋ってしまう。大切な友達の、大好きな人の時間を奪ってしまっていることくらい、わかっている。葵の幸せを奪ってしまう事だって知っている。……でも、私には、心が弱い私には、何かに縋ることしかできないのだ。




「渚、今日はどこに行くんだ?」


○○がそう聞いてきた。


「う~ん……。今日は一緒に、わたしたちの通ってた幼稚園に行こうか。」


私は○○に向かってそういう。


「そうか……。分かった。」


きっと○○は優しいから、前に幼稚園まで言って、思い出せるかやってみたことがあるのだろう。……だからきっと、下を向いて、申し訳なさそうな顔をしているのだ。


「もしかしたら、私の話を聞けば、思い出せるかもね‼」


無理やり笑顔を作って、私はそう言う。

悲しいけど、涙何て流さない。……だって、○○に責任を感じさせるのは、私の目的ではないのだから。

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