第138話 またもトイレから

王都に居を構え、商店などの店を出して早や3年が経つ。

拓哉の商会はその後も順調で、売り上げも伸び繁盛している。

今では従業員が増えに増え、100人を超した。

理由は、教会側から人員斡旋が来るようになったからだ。

要は、孤児院を卒業した子達の受け皿として、「雇ってよ~頼むよ~」と泣きつかれたのだ。

ただ、これには国王も乗り気で、拓哉の意志とは関係なく即許可を出した。

そりゃ、若い者の死亡率が減り、逆に国内生産量も上がるとあれば速攻で許可するだろう。しかも拓哉は貴族なのだし。

そんな理由で拓哉の商会は急成長。

今や、ランデウ王国の服飾、調味料を一手に引き受ける大商会となった。


そして、拓哉の周りも変わった。

先ず、あの多額の負債と言う名のミッションを遂にクリアしたのだ。

これは、拓哉が冒険者として復活し、地底ダンジョンを攻略したのもある。

地底ダンジョンは、計二十階層までで、ラスボスはベヒモスだ。

そのベヒモスの魔石が一つで10億もしたのだ。

これは儲かると思った拓哉が、乱獲したのは言うまでもないだろう。

ただ、海ダンジョンの様に、リゾート地の様な場所は無かったが。


そして、運命の日。

先ずは試しにと亮平がスマホに最後の一つを換金させる。

換金させたと同時に戻ってしまうのはマズいからだ。

それに、もしその場で戻らなかった場合、換金アプリやガチャアプリが消えてしまうのもマズい。なので、「戻っても、戻らなくてもいい」と言った亮平が試したのだ。

すると「ピーンッ」と言う音が鳴り、換金アプリにメッセージが現れた。


「Congratulation!これで君は元の世界に戻る事が出来るよ!タイミングは任せるから、戻りたくなったら下のボタンを押してね?この画面を閉じても「魔石換金アプリ」から見れるよ。直ぐに戻る / まだ戻らない」


と言うメッセージだ。

全員で意思確認した通り、亮平は「まだ戻らない」を選択した。

そして、恐る恐るホーム画面へと戻すが、魔石換金とガチャアプリは健在だった。

達成した際、この二つが無くなるのではないかと危惧したが、杞憂だったようだ。

そして、亮平と出会った事でアプリが消えていた紗代子のスマホにも、換金アプリとガチャアプリが復活した。


「これで、懸念は晴れたな。俺達もミッションクリアしておこう。」


「ああ、そうだな。先に亮平にやらせたんだ。俺達もやらないとな。」


「あ~!これでいつでも帰れるんだ!」


拓哉、龍平、康太は、早速魔石を換金させる。

そして、一斉に鳴り響く「ピーンッ」と言う音。

その日、拓哉の屋敷は歓喜の声に湧いた。


その他にもある。

イシュカに女の子が生まれた。

名前はイリヤ。イシュカの「イ」と拓哉の「ヤ」を入れた安直な名前だ。

「リ」は、リズの「リ」だったりする。

そして、涼子、春香、美奈子、加奈子、裕美にも子供が生まれたし、今現在ロラとエヴァが妊娠している。

そして龍平は、公子と結婚。葉子は宣言通り、龍平の第二婦人となった。

康太は何とか勇気を振り絞って告白し、元孤児だったソニンと結ばれ幸せに暮らしている。

無論、亮平と紗代子もだ。

そして、残った裕子、百合、智世、琉穗、佳央理達は、元世界の男子と引っ付くことは無く、拓哉の屋敷警備の男達———アラスタ、アルフ、ベスタと引っ付いたり、孤児院を卒業したちょっとイケメンの男の子と引っ付いたりと結構様々だ。

無論、商会で働く他の人達も、それぞれ異性を見付けてはくっついているが。

リズ、イーリスは相変わらず一緒にダンジョンへと入っているし、ディはカルヴィン、ブロルと共に拓哉の警護に就いている。シャファもここが気に入ったのか居座っている。

キャサリンは相変わらず海坊主相手に、マッスルしているのであれは放っておく。


ただ悲しい事もあった。

あれだけ頼もしかったセバスチャンが、歳には勝てず死去したのだ。

享年61歳だった。

しかしセバスチャンは、そんな時も来るだろうと既に対策を施していた。

そう、セバスチャンの跡を継がす為、孤児の中でも物覚えが良い男の子をしっかりと教育をしていたのだ。

お陰で、セバスチャンが床に伏した際には、既に拓哉の側には若い家令が二人も立っていた。まだまだセバスチャン程の力量は無いとは言え、その知識を全て受け継いだ二人だ。拓哉の右腕、左腕としては申し分なかった。


とまあ、色んな出来事があったのだが、最終的には国王の思惑が叶った形となった。

拓哉が行った孤児院の就職斡旋がモデルケースとなり、各地の領主が孤児院の経営と言うか支援に積極的になった為、ランデウ王国はこの後更に人口を増やし大国にまでのし上がるのだが、それはまた別のお話し。


そして現在拓哉は、冒険者且つ、貴族且つ、商会長と言う三つの草鞋を履き、忙しく働いている。

今日も今日とて、朝からダンジョンへと向かう為に準備をしていた。


「さて、今日も稼ぐぞ~!で、子供達におもちゃを出してやらないとな~。」


今日は海ダンジョンでバカンスを楽しみながら、魔物を狩って来る予定だ。その魔石で、ガチャを引き子供達におもちゃを出してやりたいのだ。

ただ、張り切ってはいるものの、朝から腹具合が悪かった。

別に変な物を食べた記憶はないので単なる腹痛なのだが、ダンジョンに入って腹が痛いせいで動きが鈍り魔物に殺されたとあっては外聞が悪い。

出す物は出してから!そう思い、トイレに籠っている。


「早く行きたいのに、なんでよりにもよってこんな時に腹が痛くなるんだよ。」


拓哉はトイレで唸る。

出る物を出したいが、未だ出て来ないのだ。


「うん~。」


拓哉は力んだ。

出そうと思って、力んだ。

その瞬間。身体が宙を浮く感覚に囚われる。

昔、こんな感覚になった覚えがあった。

そして気が付くと、草原に立っていた。

いや、ケツ丸出しでウ〇コ座りしていた。

風が優しくケツを撫でる。


「あっ・・・」


そして、ブルっと震え出る物が出た。

その感覚に、恍惚な表情となる。

しかし、拭く物が無い。

慌てて草をむしり取りケツを拭く。

そして、ズボンを履いて辺りを見回す。


「ここ何処だ?」


全く見た事のない場所だ。

ただ、前にも一度こんな事があった。


「携帯、携帯。」


拓哉は、ズボンのポケットに入っていたスマホを取り出す。

そしてホーム画面を見ると、「異世界のススメ」にNEWと出ているではないか。

恐る恐る開けてみる。


「やあ、久しぶり。ミッションコンプリートおめでとう!本当なら、そこで終わりの予定だったんだけど、ちょっと君に頼みたい事が出来たんだ。この世界、魔法の無い世界なんだけど、レベルがある世界だ。そして、この世界の住人にはちょっと倒すのが無理なのが暴れててね。それを退治して欲しんだ。ただ、君がガチャで出した魔法は使えないから武器のみになるかな。あっ!そう言えば君、確か、魔法創造ってスキルあったよね?スキルはそのまま使えるから、あれ使えばこの世界で使える魔法を創れるはずだよ?ちょっと目立つけど。だから、それ使って頑張ってよ。倒して貰いたいのは、体長100m程の天竜って外来竜だから。天竜倒したら、みんなの所に戻してあげるね?んじゃ、頑張ってね~。PS.奥さん達には、こっちから連絡入れとくね?」


拓哉はそれを見て、携帯を投げ捨てた。

終ったと思ったのに、更に次が来るとは思ってもみなかったのだ。


「お、おっ前、ふざけんな~~!」


拓哉の叫び声が草原に木霊する。

しかし、叫んだところでどうにも出来ない。

結局、諦めた拓哉は、先ずは現状を確認する為に色々と確認をした。

先ず、魔法はやはり使えない。スキル一覧がグレー色になっている。

ただ、魔法以外のスキルは使えるので、すっかりと忘れ去っていた魔法創造を使ってみる。

まあ、何とか作れそうだ。ただ、魔法名、属性、効果、範囲を事細かく設定する必要がある。なので、時間が掛かりそうなので、後回しに。

換金もガチャも使えるし、ストレージ内もそのままだ。

とりあえず、鎧と剣を取り出し装備する。


「はぁ。何でまた飛ばされなきゃならないんだよ・・・。」


拓哉は溜息を吐き、そう独り言ちる。

しかし、天竜を倒さない事にはどうにも出来ない為、拓哉は気を取り直し天竜退治へと乗り出した。

それから4年後、無事天竜を倒した拓哉は、愉快犯の言う通り元の世界———みんなの居る世界———へと戻ったのだが、その時に気が付いた事がある。


「これ、戻る時って、年齢戻らねえじゃねえか!って事は、日本に戻っても、今の年齢のままって事じゃねえかよ!」


そう、年齢が戻らなかったのだ。

飛ばされた時に24歳だった拓哉は、28歳の年齢、見た目のままで元の世界へと戻った。そして、それを聞いた元日本人メンバーは、「これ、あっちじゃ、確実に死んだ事になってるよね?」と帰るのを諦めた。

既にこの世界に来て9年は経っているのだ。同じ時間が経過しているのであれば、行方不明から死亡に変わっていてもおかしくはない。もしそうでないにしても、この年齢で戻ると大騒ぎ確実だ。

そう思った全員は、結局この異世界で一生を過ごす事に決める。

まあ、何だかんだとガチャが健在であるし、裕福な暮らしでもあり楽しいので問題はない。

その後、拓哉達はそれなりに高齢で死去する事となるが、沢山の子供や孫に囲まれ幸せな人生を送ったのだと思う。



Fin


ノリで書き始めたトイレから~ですが、これにて終了です。

お読み頂きありがとうございました。

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トイレから始まる異世界からの挑戦状!〜1000億貯めるまで帰れません!〜 うちのワ @raki1115

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