第58話 漢のロマン

 放っては置けない事、エクスキャリバーンとの対話をしなければならない、なぜこうなったのか、誰がエクスキャリバーンを唆(そそのか)したのか。


 そもそも『』のか。


 予想通り、エクスキャリバーンの胴体は分断されてなお、機能停止せず動いていた。


「エクスキャリバーン……」

「こんな隠し玉があるなんてな、油断した!油断しただけだからな!!」


 木の枝に引っかかってじたばたしているエクスキャリバーンは、機能停止目前にも関わらず負け惜しみを言う。


「ケイスケ、こいつはなんなんだ?魔人機なのか?何故喋っている!」

「こいつはエクスキャリバーン、前の世界で俺が作った魔導機動騎士って設定のロボットだ」

「ケイスケが作った?」

「そう、こんな動いて喋ってるのは予想外だけど」

「これが騎士なのか?」

「一応な、そう言う設定」


 ジタバタするキャリバーンが暴れた反動で木から落下する。


「ぐえぁ!」


 ライネスに抱えられたまま、地面に落ちたキャリバーンに接近する。


「どうしてこいつがこの世界に現れたのかは、全くわかってない、少なくとも俺と同じ位の力を持ってる危険な存在だ」

「ケイスケと同じ?」

「まぁ、そういう設定で作ったからな」

「作っただぁ?」


 地面に落下して身動きが取れないキャリバーンがルルルンの言葉に反応する。


「はー!俺様を作ったのは、創造主ヨコイケイスケ様だけよ!なんで俺様がお前に作られたとかいう設定になってんだよ!だいたい俺と同じ位の力?その女がいなかったら俺の勝ちだったろうが!!負け惜しみはよくないぞルルルン!!!!お前の負けだ!!さっさと認めて俺様の勝利を宣言しろ!!」

「…………」


 ドガァァァ!!

 ライネスが無言でキャリバーンを蹴り飛ばす。


「ごぎゃっ!!」

「ライネスさん!?」


 キャリバーンの胴体はゴロゴロと転がり、プスプスと煙を上げている。

 ライネスの表情は怒りを通り越して、今にでもキャリバーンを消滅させてやるといった様子だ。


「よくしゃべる機械人形だ、すぐにでも口を効けなくしてやろうか?」

「なんだぁお前!!俺様を蹴り飛ばすたぁ!!いい度胸してんじゃねえか!!」

「ストップ!ライネス!こいつには聞きたいことが山ほどあるんだ!!」

「しかしケイスケ!こいつは騎士を名乗るにはあまりにも、あまりにもだぞ!!」

「何言ってやがる!俺様は創造主ヨコイケイスケ様に作られた!正真正銘、最強の騎士だ!!」

 

 じたばたと暴れる虫の息のキャリバーンにルルルンが溜息混じりにしっかりと説明する。


「聞けエクスキャリバーン、俺はルルルンの恰好をしているが、お前の創造主ヨコイケイスケだ」

「いや、だから!そんなわけ!」

「見た目はルルルンだけど、違うんだ、俺はヨコイケイスケなんだ」

「そんな」

「ヨコイケイスケだ」

「だから」

「ヨコイケイスケだ!!」

「見た目は女だが、本当にヨコイケイスケだぞ」


 次第に増す謎の凄みに、キャリバーンの語気は次第に弱まり。


「だから……え?」

「俺はお前の創造主だ」

「いやでも、見た目がルルルンだし」

「この世界に転移したときなぜか、こんな姿になったんだ、原因は俺にも分からん」

「だったら!!だったら証拠を証拠をみせろ!!」

「製造年GB260年、12月1日のキャラクター企画会議で俺が周囲の反対を押し切ってマスコットの一つとして捻じ込んだ、エクスキャリバーンの名づけ親はミズノカオリ、最初の段階では「轟剣介とどろきけんすけ」って名前で、みんなに猛反対された、同時期に発表したルルルンの方が人気で、俺は毎日憂いていた、あぁやっぱロボットってもう人気ないのかなぁって、でも俺はお前に誇りをもってるぞ!!ってお前に毎日話かけてた!!」

「ロボットは」

『漢のロマン』


 一人と一体の声が揃う。


「まじ……で?」

「どうしてこうなったのかは俺が聞きたいくらいだ……でも信じてくれキャリバーン、俺はお前の生みの親、ヨコイケイスケだ」


 よく分からないが、話を聞いていたライネスも深くうなずく。状況の理解が少しずつ追いついたキャリバーンが、小さな声でルルルンに問う。


「あなた、本当に……ヨコイケイスケ様?」

「そうだよ、俺はヨコイケイスケだ!!」


 全ての誤解を理解したキャリバーンが取った行動は、実に単純にシンプルで分かりやすく。


「ごめんなさぃ」


 しょんぼりと、すごく静かに謝った。

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起動魔法少女株式会社ルルルン~魔法少女に生まれ変わったけど、異世界で絶対起業する~ うどん粉 @udonko5678

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