人生は山あり谷あり、という言葉がありますが、実はなかなかに苦しいことの連続だという気がします。
そんな苦しい時間の中を歩く時、本当に大切なものって、何だろう?——この物語には、そんなメッセージがぎゅっと濃縮されています。
どれだけ寒くて辛くても、温かなものを食べながら笑い合える人がいれば。心から信じ合い、手を取り合える人がいれば。嵐はきっといつか通り過ぎていく。
ここに描かれた兄と妹を支えたものは、お互いを深く思い合う温もりと、「赤いきつね」「緑のたぬき」でした。
ひとりきりでいないで。心寄せ合える誰かと、熱々のカップ麺を食べて、何気ないお喋りをして笑って。そんなかけがえのない幸せを作ってみようかと素直に思える、心温まる物語です。
DVを繰り返す父親から逃れた母と幼い兄妹。
月に一度の母の特別なお出かけの日は、兄弟で一つの『赤いきつね』をすする。
妹を大切に思う兄の気持ち、兄を信頼しきった妹の気持ちが、とても丁寧に綴られていて胸に迫ってきます。
私はもう、そこから涙が溢れてしまいました。
母のお出かけもまた、兄妹を思うがゆえ。後に理由が明かされます。
温かい家族の思いに満たされて、私の心も癒されました。
大人になっても忘れられない味。優しさに包まれた味を、皆様も一緒に味わってみてください。
ちょっぴり涙で塩味が濃くなってしまうかもしれませんが、そこも含めて絶品ですよ。