きつねの嫁入り

作者 霧野

99

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★★★ Excellent!!!

『きつねの嫁入り』と聞いてよぎるのは、連なる赤い鳥居と白無垢姿。
子供の頃に二人でめくったカップ麺の赤い蓋。険しい階段も手を取り合って上り、遠くに見えた白い舟。

暮らしも将来も白雲を掴むような不安げな子供時代に握りしめていた補色の赤と緑は、〈ソレ〉を手放した今も、様々な色の面白さを知った今も、大人になってそれぞれの道をゆく二人を、見えない糸のように確かに繋ぐ。

しっとりと優しく沁み入る、美味しいお出汁でした。

★★★ Excellent!!!

人生は山あり谷あり、という言葉がありますが、実はなかなかに苦しいことの連続だという気がします。
そんな苦しい時間の中を歩く時、本当に大切なものって、何だろう?——この物語には、そんなメッセージがぎゅっと濃縮されています。
どれだけ寒くて辛くても、温かなものを食べながら笑い合える人がいれば。心から信じ合い、手を取り合える人がいれば。嵐はきっといつか通り過ぎていく。
ここに描かれた兄と妹を支えたものは、お互いを深く思い合う温もりと、「赤いきつね」「緑のたぬき」でした。
ひとりきりでいないで。心寄せ合える誰かと、熱々のカップ麺を食べて、何気ないお喋りをして笑って。そんなかけがえのない幸せを作ってみようかと素直に思える、心温まる物語です。

★★★ Excellent!!!

 幼い兄と妹が特別な日に食べる特別な食べ物は「赤いきつね」だった。二人が「赤いきつね」を食べる描写はぐっとくるものがあります。さらに、後半部分には、そうだったのかぁとぐぐっとさせられます。

 自分にとって家族を思い出す特別な食べ物ってなんだろう?って自問してしまうくらい、家族のことを考えさせられた素敵な物語でした。

★★★ Excellent!!!

辛い時期、苦しい時期。そんな中でも、決まり事を設けて家族一つとなる時を作れば、それはたちまち古き良き懐かしの思い出として刻まれ、家族の絆が深かったことを改めて認識させられる。そして、これからも絆の固さは揺るがない。そのアイテムが「赤いきつね」と「緑のたぬき」だった。無理に背伸びして特別感を出す必要は無い、家族が一つとなって過ごす時間が大切なのだと読者に訴えるパワーが溢れまくった作品。
前半部分の重苦しい雰囲気を綴った描写に引き込まれ、後半ラストのタイトル回収に胸がスッキリすること間違いなしです☆

★★★ Excellent!!!

 DVを繰り返す父親から逃れた母と幼い兄妹。
 月に一度の母の特別なお出かけの日は、兄弟で一つの『赤いきつね』をすする。
 妹を大切に思う兄の気持ち、兄を信頼しきった妹の気持ちが、とても丁寧に綴られていて胸に迫ってきます。
 私はもう、そこから涙が溢れてしまいました。
 母のお出かけもまた、兄妹を思うがゆえ。後に理由が明かされます。
 温かい家族の思いに満たされて、私の心も癒されました。

 大人になっても忘れられない味。優しさに包まれた味を、皆様も一緒に味わってみてください。
 ちょっぴり涙で塩味が濃くなってしまうかもしれませんが、そこも含めて絶品ですよ。