最終話 同じ
志摩くんを疑ってしまった。申し訳ない気持ちだ。
このフランスぬいぐるみは美絵からのプレゼントだ。どうして美絵がカメラを仕込んだぬいぐるみを私に……。
もう何がなんだか分からない。怖い。今頼れるのは志摩くんだけだ。
私は志摩くんにメールを打った。ぬいぐるみはクローゼットに隠したけれども、盗聴器もあるので通話はまずいと思った。
―今すぐ相談したいことがあります。これから部屋に行ってもいいですか?―
志摩くんからは快諾の返信が来た。
すぐに志摩くんの部屋に行く。ようやくカメラと盗聴器から解放された気分になった。
志摩くんは友達が多いのできっと解決の糸口が見つかるだろう。
志摩くんの部屋には楽器や機材、よく分からないお面などがあった。友達と同様に、趣味も多いようだ。
面白くてつい、部屋を見回してしまう。
見覚えのあるぬいぐるみが、飾ってあった。
私の部屋にあるフランスぬいぐるみと同じぬいぐるみが。
時計型ベルトのデザインも黒いプラスチックの目も同じだった。どうして?
どくん……。心臓の音が聞こえる。落ち着け。
「もしかしてまた、音が聞こえました? 整理して考えてみましょう。最初に音を聞いたのはいつ頃か覚えていますか?」
志摩くんは、私が音のことで来たと思っている。
音は、いつからしていたんだっけ。
「由里子さんから最初にメールが来たのは九月の頭ですね。その前からだとすると、八月からですか?」
志摩くんは自分のスマホを見ている。メール履歴を見ているようだ。
八月……。
そうだ、まだ暑かったから最初は虫だと思ったんだ。
そのあと、寒くなってから美絵と喫茶店で会ってぬいぐるみを貰ったんだ。
あれ? ぬいぐるみを貰う前から音がしていたことになる。
あれはぬいぐるみに仕掛けられたカメラの音じゃなかったの?
どういうことだろう。何を考えたらいいのかも分からない。
私は志摩くんの部屋にあるフランスぬいぐるみを見ていた。
志摩くんが私の視線をつかまえた。
「ああ、不思議な人形ですよね。金髪に黒い目って。これ、美絵さんの彼氏が作ったんですよ、あの人器用だから」
メール到着音がした。斗真と美絵から同時に。文面も同じだった。
―今どこにいる?―
音がする 青山えむ @seenaemu
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