きみえちゃんは綺麗

きみ *え»ちゃ ん、は糸奇. 麗

　女子は、男子より確実に容姿差別を受けている。

　それはクラスメートや教師、更には他クラス他学年にまで、常に容 姿に優劣をつけられているといっ*も過言ではない。

　容姿が良い者はどんな振る舞いをしても大概は許されるもので、スクールカ^ーストだって上。その逆はどん底、酷ければ存在す ら*£してもらえないときもある。男¢にはあまり当てはまら ないのに。

　言葉にすれば恐ろし`いシステムだが、皆当然のように■子に·対して可愛い:から良、不細”工なの‘で不‹可›などのレ*ッテ‰ルを、■分に○他人に▽も無→*:識=的に貼°り付#けて※ い-る。

「たぁこ。帰ろう」

「うん」

「寄り道、たぁこが行きたがってたあのドリンク店に行こう」

「いいね、楽しみ」

　平凡、一般的、中の下。

　一高校生として過ごすには、目立ちさえしなければ特に問題もない丁度良いところ。私はそれくらいに属している。

　この学校には特別目立つ人物も居るが、その人は容姿スクールカーストのトップで私の大好きな人。今から一緒に帰る一番の親友。きみえちゃん。とても美しい愛する恋人。私は彼女のもの。

　大好きな人と一緒に過ごせるなら多少目立っても、やっかみを受けたとしても、私は幸せなのだ。

　初夏の放課後。まだまだ日は高く真っ直ぐに下校しようなんて、勉強の虫でもない限り思わない絶好の寄り道日和。

　少し暑さのある陽気の中できみえと飲む冷たいドリンクはとても美味しいだろう。

　大好きな人と過ごす放課後。高 校生*_だと°実·感できる'この時間¿が好き^だ。

「わぁ、どれも美味しそうだね！　迷っちゃうなぁ」

「チョコレートフラペチーノもいいね」

「ほんとに……あれ」

「どうしたの」

「……財布忘れてきちゃったかも」

「学校に？」

「お昼には持ってたから……そうかもしれない」

　ゴソゴソと鞄を漁るが、一向に財布は見つからない。

「ごめん、取りに戻るから先に帰ってて……明日ジュース奢るから」

「私が払うから、取りに行かなくていい」

「え、でも……」

「取りに行かなくていい」

　語気を強めたきみえの声に、体が凍ったように動かなくなる。きみえちゃんを怒らせた？　きみえちゃんに嫌われたくない。きみえちゃんがいないと私、わ/‘た°しどう§な№€“の？　あぁ、きみえちゃんは怒った顔も綺麗。

　きみえに見惚れていると、不意につっと頬を撫ぜられた。

　体温の低い、冷たい指の感触に背筋がぞわりと粟立つ。

「一緒に、同じの飲もう？」

「……うん。きみえちゃんが、そう言うなら」

　私が我儘なせいで、きみえちゃんを困らせてしまったはずなのに。きみえちゃんはとても優しい。

　悪いことをしてしまったが、きみえちゃんとの関 :係¿«が心地’’よ く.№て/ 笑みがこぼれた。

「はい、おまたせ。同じのでいいよね」

「ありがとう、またお礼するね」

「たぁこが私と一緒にいてくれるだけでいいのよ」

「もう、きみえちゃん……好き」

「私もたぁこが好き」

　くすぐったいやり取りにじんわりと胸にあたたかいものが広がる。あたたかい？　あたたかいものはいけない。溶けてしまったらどうする。すぐに冷やさないと。

　ストローを咥えきみえの選んでくれたチョコレートフラペチーノを口いっぱいに含むと、頭が痛くなる程の温度に安心した。

「そうだ。このあと私の家にこない？」

　問いかけのはずなのに、これは命令。断ってはいけないと、頭ではなく全身の細胞が囁いてくる。

「うん、もちろん……」

*

　きみえの家は狭く古めかしいアパートだった。

　家に上がらせてもらうと、真っ直ぐにきみえの部屋に通された。部屋にはベット以外の物が存在せず、気味が悪いほどに生活感がない。

　そして家族も全員外出しているのか、物音一つせずシンと静まり返っていた。

「きみえちゃん、なんだか……ちょっと寒いや。飲み物で冷えちゃったかな」

「暑いのは苦手なの。たぁこもそうなったでしょ？」

　冷蔵庫の中にいるのか疑わしいほど部屋の空気が冷えていて、体が小刻みにカタカタと震えだした。

　だけどきみえは平然としている。私もそうなると言っている。だから私が寒がっているのが間違っているのかもしれない。

「来て、たぁこ」

　きみえは徐にベットに腰掛け、手招きする。誘われるがままふらふらと足が勝手にそちらへ向かいだす。行きたくないのに！　行きたくない？　なぜ。きみえちゃんが私を呼んでくれている。

　おぼつかない足取りが焦れったかったのか、腕を捕まれ投げるようにベットに押し倒され、きみえの顔が近い。あの日のように手首を抑えつけられている。あの日？　あの日、あの日！

「あっ？　……あ、あっ」

「まだ目覚める、しぶといな。そろそろ私のものになると決定している」

　きみえちゃんがなにかよくわからないことを言っている。身に覚えがある。話が通じない？

　何かを思い出そうと無意識が暴れた。それを感じとったのか、きみえは私を喰らわんと荒々しく口を重ねた。

　とても甘くて冷たくて美味しい液体が喉奥に流し込まれる。きみえちゃんの美しい顔。あぁ。

　血を通わせた陶器人形の肌に、左右対称のアーモンドアイを縁取る柔らかな睫毛。鼻筋は細く通っており、その下の少女性を含む瑞々しい唇は、桜の花びらを重ね合わせた色彩を纏っている。美しい人間を平均したような黄金比のパーツは、配置まで完璧。凛とした長い黒髪は、絹糸の輝きで美貌をさらに際立てた。そんな容姿カーストのトップに君臨するきみえだが、天は二物を与えた。与えました。きみえちゃんは素晴らしい人間で、どんな人物でも彼女のことを好きになった。現に私だってきみえちゃんが大好き。

　要するに頭が少しおかしいのは私。

「ああああ！　きみえちゃん、やだっ！　もっとほしいの、もっと頂戴！」

　きみえの唇が離れると心臓が張り裂けそうなくらいに痛んだ。まだキスして欲しい。もっと飲みたい。それ以上も触って欲しくて切なくて、みっともなく声を上げて泣いた。

「いいよたぁこ。好きなだけ飲ませてあげる、色んなところからね」

　頭がズキズキする、まともに何も考えられない。なにか大切なことを忘れている。

　私のスカートの下をまさぐっている手は、原型を失っているなにか。

　涙のせいで歪んでいるのか、人間とは全く別の見たこともないぐちゃぐちゃのスライムのようなおぞましい姿のきみえが、私に覆いかぶさっている。　

　恐怖心は無かった。なんなら早くしてと強請ると、真っ直ぐに下着を越え秘部を割り開いてどんどん私の中へ侵入してきた。　

　中で律動して、蠢いて、私は快感から声を上げた。

　きみえは人じゃない。だけど、やはり綺麗なものは綺麗だ。