農民の娘である『マキ』は、ムサシの国において絶対強者である武人に売られそうになるが、偶然出逢った謎の男によって助けられる。本名も経歴も不明な『忍』の弟子となったマキは、世の中の理不尽や、何よりも己の『弱さ』が許せず、旅の中で『強さ』を求めていく――。
和風な世界観の中で、少女と忍が繰り広げる成長ストーリーといった内容です。まず何よりも、キャラクター達にに個性があって魅力的でした。
過酷な境遇でありながらも明るさやユーモアを失わないマキのおかげで、重苦しい雰囲気を感じないまま、愉快な掛け合いやテンポの良い文章を終始楽しむことができました。圧倒的な強さを持ち、スパルタ全開でマキを鍛える忍も、不愛想でありながら根底には優しさを感じられて好印象です。
そんな二人の軽快なやり取りや、バトルにおいてもスピード感のある描写のおかげで、最新話までサクサクと読み進められました。忍術ではなく『魔法』も登場し、テーマや設定においてもオリジナリティを感じます。
ただ、そんなライトなノリの作風である割には、第1話が『本格時代劇』っぽくて、そこだけ違和感がありました。
冒頭の雰囲気のまま進むと予想した読者からすれば「急にノリが軽くなったな」と感じるでしょうし、本編全体の雰囲気が好きな人からすれば第1話で「ちょっと私には重たくて合わないかも」という印象を抱いてしまう可能性もあります。
第1話以降も、ちょこちょこ作品の雰囲気に合わない表現や文体が見受けられ、チグハグな感じがありました。作品全体を通した雰囲気作りや文体・視点というものは、シッカリと統一した方が良いと思います。
とはいえ、活発な性格のマキが「強さとは、弱さとは」というテーマに真剣に向き合う姿は魅力的だと思うので、今後の展開にも期待が持てます。忍の過去や、二人の旅路の行く末など、気になる部分ばかりです。
赤髪の忍は強い。
その切先は鋭く、素早い。
強い忍びは寡黙で容赦なく冷たい……
赤髪の忍もそのイメージを裏切らない。
一見。
そこに農家の娘であるマキが加わると、不思議に無表情と思われた忍に表情が宿る。
マキはまるで短大を卒業して大手企業に就職しました的な現代っぽさ満載の語り口で、忍と相対する。
そのあたふたとしたマキと何事にも動じない風体の忍のやり取りが滑稽であり、また温かい。
なぜ人は強さを求めるのか?
強さを得た者はその過程で何を成し遂げ、何を失ったのか……?
きっと、忍とマキの道行きにはその答えが待っているのだろう。
あなたもそんな二人の旅路に同行してみませんか?