第3話

 アレスが安心したのも束の間だった。すぐに先生達が何事があったのかと駆けつけてきた。そこには廊下の床でのびるデノスと、そばに佇むアレスの姿があった。アレスは必死に事情を説明しようとしたが、学校内で喧嘩をした事をこっぴどくしかられた。


アレスは疲れ切って1日の学校生活を終えた。最後の授業を終えると、アレスは真っ先にトイレに向かおうとした。しかし、その時さらにアレスに声を掛ける者があった。


「アレス様、聞きましたよ。先程あのデノスと喧嘩したんですって?お怪我はありませんでしたか?」


声を掛けてきたのはフィファニーだった。その隣には水の神の子、セイラーンもいる。


「特にケガはないよ。ところでフィファニー、僕は今急いでいるんだけども、何か用事があるなら明日でもいいかな?」


しかしフィファニーは許してくれない。


「ダメですよ。今日は是非幻の湖に一緒に行って欲しいのです。今日は500年に一度の特別な日なのですから。」


アレスは焦る。少し、足をモジモジと動かす。

朝からトイレを我慢しているのだ。もう限界が近い。


「分かった。一緒に行ってもいいからどうか先にトイレに……」


「まぁ!本当ですか!?嬉しい!行きましょうアレス様!」


フィファニーは顔をパッと輝かせると、アレスの腕を掴んだ。その瞬間、アレスはその腕を強引に振りほどくとトイレに向かって駆け出す。もう我慢の限界だ。


「アレス様!どこに行くのですか!?」


 後ろからフィファニーの声が聞こえたが、無視して走った。走ると膀胱がはち切れそうになって、変な走り方になる。西日が窓から入ってきて、紅く染まった廊下をひたすら走った。この歳で学校でお漏らしをするなんて屈辱を味わいたくはない。アレスは涙目になりながら走っていた。トイレはすぐそこまで迫っていた。赤と青のトイレのマークが見える。青い男のマークと赤い女のマークでは、背中から生えている翼の形が少し違う。


アレスがトイレの看板を見て安堵したその時だった。アレスは誰かに強く右腕を掴まれる。


「待ってください、アレス様。いきなり逃げるなんてあんまりじゃあないですか!」


そこには同じく少し涙目になったフィファニーの姿があった。


「フィファニー……。もうダメなんだ。」


「え?なんの事ですか?」


 アレスは股間の辺りに温かい感触がじんわりと広がっていくのを感じた。朝から我慢していたので、大量のおしっこが溢れ出てくる。やがて下着の吸水範囲を越え、おしっこは床へと滴るりおちる。床へと滴ったそれはやがて床下へと広がり、さらに地面をつたって下界へとぽつりぽとりと落ちていった。


その日、下界では急な夕立が降った。

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夕立 上海公司 @kosi-syanghai

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