第51話 竜殺し

十階層目のボス部屋の奥にあった階段を降りた先、迷宮の十一階層目には草原が広がっていた。


『えっ、外? えっ、えっ、ここダンジョンの中ですよね?』

迷宮に入った経験の無かったメカ娘がまるで地上のような階層の風景を見てキョロキョロしている。


「そうだ、ダンジョンの中だ」

騎士団の訓練で迷宮に何度も入った経験があるガブリエラが肯定する。


『でも、太陽とか?』

メカ娘が指差す先にはまるで地上のように太陽が大地を照らしている。


「ここは迷宮の中で間違いないにゃ、外に出た訳じゃないにゃ」

冒険者として経験豊富なタマがここが迷宮の中だと明言する。


『社長さん、どーなってんですか?』

『わたしに説明を求めるなよ、迷宮の中ってのは色々と解明されてない謎だらけなんだ』

まあ諸説あるがそれをメカ娘に言っても…


「メカちゃん、迷宮の中は別次元の空間だとか、魔力で創造された人工的な亜空間だとか、別の平行世界との…」

『あっ、スイマセン、難しそうなのでもう良いです』

ヒルデガルドの説明をメカ娘が興味無さそうにぶった切った。


~・~・~


『たあーっ!』


ずんばらりん


気の抜けたかけ声と共に、メカ娘は聖剣エクスカリバーver8.0を振り抜いた。


ぎいいぃん ぽきん ずずーん


アースドラゴンの巨体が真っ二つになって倒れ伏す。


『お前、いい加減にしろよ』

また聖剣が折れた。

この十八階層に来るまでの度重なる修復で既にver8.0になっている。


最初に宝箱から出てきた時は両刃の片手剣だった聖剣は、片手半剣バスタードソード両手剣クレイモア、へと姿を変え、現在は大剣にまで成長している。


『社長さ~ん』

甘えた声を出して折れた聖剣を差し出すメカ娘…


『…』

私は黙ってミノさんの遺品の戦斧をインベントリから取り出して差し出した。


『ちょちょいと修理して下さいよ~』

メカ娘は折れた聖剣を手にイヤイヤをしている。


『修理しようにも、もう材料がないんだよ』


ミスリルゴーレムからドロップしたミスリル塊もオリハルコンゴーレムからドロップしたオリハルコン塊も修理の為に既に使いきった。


『えー!』

不服そうにしているが、聖剣をポキポキへし折るお前が悪いんだぞ!


「トニー様、亜竜レッサーだが、アースドラゴンのドロップ品なら剣の素材になるのでは?」

ガブリエラがそう言ってくる。


「トニー、アースドラゴンから牙と鱗がドロップしたにゃ」

タマが手に持ったゴツい牙と分厚い鱗を見せる。


『あっ、それで良いです』

それで良いですじゃない、亜竜のモノとは言え、竜の牙も鱗も高く売れるんだぞ!


【聖剣エクスカリバー ver9.0】

竜の牙や鱗を素材に錬金術で修復した聖剣はますますゴツい剣になった、既に剣と言うよりだ。


『命名“竜殺し”!』

巨大な剣を手にメカ娘が大人の事情的にヤバい事を言っている、命名しなくてもその剣には“エクスカリバー”って名前があるだろ!


ばっさばっさ

「あっ、グリちゃんが帰って来た!」

ヒルデガルドの使い魔のアンデッドグリフォンが偵察から戻って来た。

上半身が鷹、下半身が獅子の大型で強力な魔物だ。

「しゃちょ~、十九階層への階段は向こうだってー」


このだだっ広い草原で当てもなく階段を探すのは時間のムダなのでアンデッドグリフォンに空中から階段を探して貰っていた。

おかげでここまで最短時間で階層を踏破している。


『よし、階段に向けて移動しよう』

「じゃあ、貴方達、露払いをお願い」

ヒルデガルドが“死霊使いの杖”を振った。


『しゃああー』『がるるるっ』

十七階層でヒルデガルドが使役したアンデッドバシリスク(一つ目の巨大な蛇)と十六階層で使役したアンデッドオルトロス(双頭の魔犬)が私達のパーティーに先行して進んで行く。

どちらもフロアボス級の強力な魔物で雑魚魔物は蹴散らしてくれる。

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突撃メカ娘! さまようよろい @T-850

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