人と人の、愛しく美しい心の触れ合いがたまらない作品です。
主人公・長谷くんは、美少女の時雨さんに好きが全開。
「私をときめかせてくれたら、付き合ってあげる」という時雨さんの条件に、律儀に挑戦しつつも独特なアンサーばかり出してしまう、キュートでじれったいラブコメ感も非常に楽しい……のですが。
本作の真骨頂は、時雨さんが抱える悲しみを巡る「絆の結び直し」にあると感じます。
君が大好きだから、自分の恋人にしたい――だけでなく、それ以上に。
大好きだから、心から幸せでいてほしい、君の大切な人と笑い合ってほしい。
巧くも狡くもなれないけど、愚直に優しく。純粋な願いで歩む長谷くんが眩しくて、けど不器用すぎて可笑しくもなる、温かなストーリーです。
男女ラブコメではありますが、中盤からは物凄い女性間巨大感情が迸ってきます、友情百合が好きな方にも全力でオススメ……特に24話がすっごいので……
けどやっぱり、めちゃくちゃ可愛いラブコメです!
冬の寒さにも日々の忙しさにも効く甘々なお話、お見逃しなく!
※事前にレビューで知っていても影響は小さいと思いますが、念のため、途中の回で明かされる設定のネタバレを含んでいます。
人と関係を深めることに逡巡があり、「『恋』ができる気はしないから、せめて『ときめき』を教えてくれる人なら、誰でもいい」という縋るような思いを抱えていた女の子が、「『恋』を教えてくれた、この人がいい」と思えるようになるまでの物語です。
人間関係に面倒を抱える自分をそれでも「好き」と肯定してもらえること、そんな相手を徐々に理解していくことに喜びを見いだし、受け取ったものと同じ想いを自分からも返すようになっていくプロセスは、少し懐かしい時代の青春アイドル映画のようでもあります。
物語の大部分は、彼女に恋をする男の子の言葉で語られているのですが、回を追うごとに彼がどんどん格好良くて素敵な人に見えてくるのも見どころです。
男子に語り手を委ねながらも、「ヒロインから彼がどう見えているか?」という視点を常に持って丁寧に綴ることでクリアになっていく彼の印象の変化は、作者の筆の魔法にかかったような感覚があります。
ライトな青春ラブコメのような文体はテンポが良く、普通に読み進めようとすると、スピーディーに読んでしまう(読めてしまう)ところです。
ただ、個人的にはその読む勢いを気持ち抑えめにして、一つ一つの会話と心理描写を「文庫一冊分の恋愛小説」のように味わって読むことをオススメしたいです。
好きな女の子に、「ときめかせてくれたら、付き合ってあげる」と条件を出された男の子が、ぽんこつムーブしながらがんばるお話です。
超弩級にめんどいヒロインが、気づかないうちに好きになっていく不器用なすがたはとても可愛い…!
主人公くんは慣れないことをするせいで、空回りしたり、(読者からの)好感度が下がったりと踏んだり蹴ったり。
しかし、あちゃ~というレベルの失敗ばかりなのでむしろほほえましい。
登場人物たち一人ひとりが相手を思い合って行動しているので、この物語はやさしさに満ちています。
だけどメインふたりは基本不器用なので、すれ違ったり、意地をはったり、発想が斜め上だったりと七転八倒しています。
そこがこの作品の魅力の一つでもあるのですが。
そんな似た者同士が、付き合ってる(付き合ってない)距離感で積み重ねる今作ですが、なぜか女×女のめちゃくちゃバカでかい感情も飛び交います。
三角関係とかではなく、恋愛というより愛のラブですが男女ラブコメ(そして著者のラブコメ)でしか味わえない百合要素もあります。
彼と彼女の成長譚にときめきながら、ぜひ最後まで見守ってあげてください。