第24話 勇者と聖女の功績

*******************************

アクション回 勇者と魔王と勇者と聖女編


読んで楽しんで頂けたら、応援ポチをお願いします。

*******************************

 

 砂利道をガタゴトと勇者と聖女を乗せた馬車は、ゆっくりと伝説の剣が置いてある洞窟をめざす。


「あ――! 楽だね!」


馬車の中で背伸びする宗一。


「本当ね! もっと揺れなきゃ、最高なんだけど!」


「揺れてる方が楽しめることもあるんじゃないか?」


「だーめ! 皆に見られたらどうするの!」


「堅い事言うなよ! ちょっとだけ、ねぇ?」


「お城に帰ったら、一杯楽しませてあげるから、それまで我慢しよう」


「ちぇ、わかったよ」


宗一は、馬車の中で楽しめると思ったのに、加奈の思いもよらぬ返答で


さっさと伝説の剣を手に入れて、城に帰りたいと思っていた。


「おぃ、モンスターが出たぞ!」


外から、護衛兵たちの怒鳴り声が聞こえてきた。


「トロールだ!!!」


「全員、防御の布陣を取れ!!」


「モンスター共は三体のみです。 全員でかかれば倒せないことはないでしょう」


護衛達の声が馬車の中まで響く。


「全員、構え!」


「一班と二班は突っ込め、三班は援護しろ、四班馬車を護衛しろ!!」


「我らの力を見せてやれ!!! 突撃!!!」


「うぉおおおおおおおおおお!!!」


兵たちの突撃する声が響き渡る。


こそっと窓から加奈が覗き見ると、モンスターに突撃した兵士たちは弾き飛ばされ、


地面に転がってのたうち回っていた。


「ねぇ、宗ちゃん! 宗ちゃんマジヤバイよ!」


「何がヤバイの?」


宗一も窓から外を見ると、護衛の数が半分ほどしか見えない。


「何が起きたんだよ!」


宗一と加奈が状況を固唾を飲んで見守っていると、


馬車のドアを叩く音がする。


「勇者様、どうか加勢をお願いします!! このままでは隊が全滅してしまいます!!


聖女様も馬車から降りて兵たちの治療を!!」


「おぃ、マジかよ……戦闘も何もしたことないのに……」


「とにかく馬車から出よう」


「馬鹿、そんなことしたら、あいつらに殺されちまうぞ」


「でも、ここにいても同じじゃない?」


恐る恐るドアを開けると、怪我をした兵たちを護衛の兵士たちが応急処置をしている。


「勇者様! あのモンスターです!!」


「誰か勇者様に剣を貸せ!!」


兵士が急いで駆け寄り剣を差し出してきた。


震える手で剣を受け取ると、護衛が身構えてる方向に目を移す。


身長二メートルは軽く超えているだろう。


三体の木槌を持った巨人がこちらに向かってきている。


「勇者様どうか我々を御救い下さい!!」


護衛の兵士たちが宗一に泣きついてくる。




 おい、おい、冗談だろ。


いくら、何でもいきなりすぎるだろ!!


ろくに剣の練習もしていないのに……


後ろを振り向くと、傷ついた仲間を必死に処置している。


「聖女様、どうか治療をお願いします!!」


加奈に目をやると、青ざめて不安げな顔になっているのが一目瞭然である。


腹を括るしかないか。


「加奈は手当しろ、どうなるか、わからないけどやってみるよ!!」


宗一の言葉に押され、加奈は兵の前に座り込んで、傷口の確認をする。


こんな傷どうすればいいのよ!!


何か方法は無いかと考えるが、医者でもない加奈が考え付くことなどは無かった。


しかし、兵士の傷口に触れると、自分の手から白い光が出てくる。


気のせいか、傷口も徐々に塞がっていくのだ。


両手で傷口を触ると光が強くなり、塞がる速度が格段にあがった。


「うぅ……は! すごい傷が完治した!! さすが聖女様だ!!」


兵士たちは聖女の奇跡を目の当たりにして、喜び始める。


加奈の偉業を宗一が確認すると、もしかして、


自分も何か不思議な力を持っているんじゃないかと思い始めた。


「うぉおおおおおおおお!!!!」


兵士から借りた剣を持って、トロールに特攻をしかける。


剣は不気味な青白い光を放ち始めた。




 あれ?あいつらの攻撃が見える!!


スローモーションのようにトロールたちの動きの軌道が、見える。


特攻を止め、その場に立ち止ると、見えた軌道と同じところに木槌が叩きつけられた。


「やっぱり、そうか! 俺には先読みみたいな能力があるんだな!!


そうとわかれば!!」


再度、特攻の姿勢を取り、トロールに向かって行く。


先ほど同じように木槌の軌道が見える。


相手の攻撃を縫うように進み、トロールの足を目掛けて、剣を振るう。


足が綺麗に切断されると、バランスを失ってその場でトロールは倒れこんだ。


護衛達が傷つけられなかったトロールをいとも容易く倒し、


すぐさま二体目の腹を切りつける。


力を入れることもなく、あっさりした感触が手に伝わると


トロールが倒れこみ、のたうち回っている。


「こいつら、見た目だけで弱すぎだな」


自分の実力を確認した宗一は、残り一体のトロールに突進をする。


木槌ごと貫いた剣はトロールの胸に深々と刺さり、絶命させた。


まだ生きているトロールにトドメを刺し、馬車に戻ると


傷ついた兵士たちは加奈の治療で全快になっていた。


「終わったぞ!!」


「こっちも終わったよ!!」


宗一と加奈がお互いを確認すると、兵士たちから歓喜の声があがる。


「さすが!! 勇者様だ!!」


「聖女様ありがとうございます。無事に国に帰れます」


兵士たちは感謝の声をあげ、勇者と聖女を激励する。


勝利の記念品としてトロールの首を切り落とし、馬車は伝説の剣場所へと向かうのであった。


*******************************

ここまで、お読み頂きありがとうございます。

お楽しみ頂けましたでしょうか?

気にいって頂けましたら、レビュー、ブクマ、コメントお願いします。




次回の話はまだ決まっておりませんが……

勇者の続きになると思います。

ご期待ください。

*******************************

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神見習いになった俺は見聞を広める為に異世界に放り込まれる 夢幻成人 @mugenseijin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ