第23話 元魔王の思い

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ラブコメ?回 勇者と魔王と勇者と聖女編

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 「イノ、ゴンタがいたぞ!」


ティコアが地上に降りると、ゴンタがすかさず駆け寄ってきた。


「ご主人、ワイのご飯忘れてたでしょ?」


ベロベロと顔を舐めまわしながら、じゃれつくゴンタ。


「餌を忘れたのは悪かった! くすぐったい、やめろ、ゴンタ!」


一通り顔舐め終わると、満足したようにお座りの姿勢になった。


「イノ、あの子は誰ですか?」


ティコアが視線を投げる方向には、所どころ露出の多いパッツンパッツンの服を着た


少女が立っていた。


「わわわわ!!!!!」


少女の姿を見て、バツが悪そうに背を向けるイノ。


「何でそんな格好の少女がゴンタといるんだ?」


「ワイ、お肉食べてたら、小さい子が大きくなってた」


犬に聞いたのが間違いだった。


それだとゴンタが肉を食えば、少女が皆成長する事になるじゃないか。


「イノ」


少女がイノの名前を呼びながらイノの元に近づいてくる。




 後ろから抱きついたキュラは、イノを力一杯抱きしめる。


「わあああああああ!!!!」


イノの背中に当たった、キュラの柔らかい胸の感触は刺激的だった。


そして、その甘い匂いはイノの心拍数をあげていく。


「あ、あのぉ、ど、どこかでお会いしましたっけ?」


今だ童貞のイノには刺激が強すぎるためか、興奮気味に口ごもってしまう。


「ひどいなぁ、私の裸見たのに忘れちゃったの?」


「え、え、えぇ……!!!! じゃぁ、あの時の赤ん坊で幼女になって、


今は少女に姿を変えたって事……」


「そうだよ!」


「ところで、お前何者なんだ?」


顔の血管を浮き出しながら、質問するティコアは、


今にもライフルをぶっ放しそうな勢いで質問する。


「私? 私は元魔王のキュラだよ!」


「えっ?えっ?えええええええ!!!!!」


名前を聞いて、驚きを隠せないイノに対して、


ティコアはライフルを身構える。


「全然気づかなかったよ! 性懲りもなく、また、転生しやがって!


ビッチはビッチらしく、雌犬にでも転生した方がいいんじゃねぇか?」


「ティコアさんやめて! 俺も無事じゃすまないから、撃たないで!!!!」


「やだ――!!! イノ、あのおばさんが妬いてる!!」


「誰が妬くか!! 焼くなんて手間かけねぇよ!! 


影も形も残さず全部ぶっ飛ばしてやる!!」


「やめてええええ!! ティコアさんお願いだからやめて!!


それにほらキュラも敵意が無いみたいだし、話聞いてからでも遅くないでしょ?」


「そうですねイノ! 納得のいくご説明だったら、影ぐらいは残してあげましょうね!」


血管が浮き出し、目が吊り上がり、顔が強張っているティコアの顔は夜叉そのものだった。


慌てふためくイノを気にせず、キュラが話し出す。


「私、イノの奥さんになるんだ!」


「はっ?」


キュラの発言に、その場にいた全員の口が開いたままになった。


「だって、イノの事好きになっちゃたし、この世界に転生もできたし、


裸も見られたし、もう結婚するしかないでしょ!!」


「ふざけるな!! 裸見せたぐらいで、奥さんになれるんだったら、


私がイノに毎日見せてやるわ!! 第一、お前は転生したとはいえ魔王だろ!!」


「ちょっと、二人とも落ち着いて!!」


「オバサンの裸見たって、イノは満足できないわよ!!」


二人の言い合いが過激になっていく中、ニャムが口を開いた。


「あの―!」


皆が一斉にニャムの方を見る。


「イノ様に裸を見せれば、ご結婚できるのですか?


それなら、私も参加させてほしいのですが……」


身体をモジモジさせながら、恥ずかしそうに話すニャム。


「はっ?」


何だこのエロゲーみたいな展開は、何でアホ犬を探しに来て、


裸見せたら結婚の流れになっている?


「一旦、城に戻ろう! それから、話し合っても遅くはないだろ!!」


イノが皆を説得すると、頭に肉球が置かれた。


「ご主人、ワイはいつも尻の穴まで見られたけど、


子孫は一杯いるぞ! メスが沢山いても決して悪い事ではない!」


偉そうに語りだす、アホ犬は誇らしげに胸を張っていた。


「お前は犬だろうが……!!」


イノがその場を落ち着かせると、一行はゴンタの背中に揺られて、城に戻って行った。




 イノたちのやり取りを息を潜めて、見ていた者がいた。


神獣の後をつけて、少しでもイノたちに取り入ろうとするのが目的だった。


襲わせる予定だったネズミたちは、餌を捲いていたのに神獣の姿を見るや否や


散り散りとなって逃げて行った。




 魔王?魔王は確か勇者が倒したはずなのに……


その魔王が勇者と結託していたとは、しかも妖精まで加担してたとなれば、


これは王に……いや、あの王に伝えたところで聞く耳を持たないか……


それよりも、ビアトルにこの情報を手土産にすれば、ビアトルで地位も約束されるだろう


そしたら、私の暮らしも以前より良くなるはずだ。


あわよくば、ルターに攻め入った時にそのまま領主の地位も夢ではないな……


男はゴンタたちに背を向け、ビアトルに足を進めた。




 数日後、


ビアトル王国で召喚された宗一と加奈は、


傲慢な態度に拍車がかかっていた。


困り果てたのは、ビアトルの家臣たちだった。


勇者や聖女らしいことを何もせず、毎日、宴に明け暮れ、


家臣たちを顎でこき使っていた。


「王様どうか、勇者様たちに伝説の剣を取ってきてもらい、


せめて、国をたびたび脅かしている、北の火山のドラゴンを退治してもらいませんか?」


そう進言するのはビアトル国の大臣たち。


「確かに、勇者や聖女らしいことは、未だにしておらぬな……」


「はい、このままでは城中を始め、いずれは国民たちからも不平不満が


出るかと思われます」


「そうだな! では勇者殿にはまずは伝説の剣を取って来てもらうとするか」


王は勇者と聖女を王座へ呼ぶと、大臣たちからの話をする。


「わかりました!! すぐにでも向かいましょう!!


ただ、俺はこの世界を知らないので、道案内に兵がいれば助かるのですが……」


宗一は伝説の剣を取りに行くのに、遠まわしに兵たちを貸し出すよう要求した。


「よかろう、我が兵を連れて行くがよい! それとこの装備を


勇者殿と聖女殿に渡そう」


家臣たちが持ってきた、装備は一般兵に手が出せない高級なものであった。


「ありがとうございます! それでは準備してまいります」


宗一たちが王座を後にする。


「ねぇ? 宗ちゃん! 本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよ! いざとなったら、兵たちを盾にして逃げればいいんだから!」


「うわっ、宗ちゃん悪い人!」


「加奈が教えてくれたんだろ!」


「でも、そういう悪い宗ちゃんも好き! チュッ」


支度をした二人は城門を出るとそこには、重武装した兵隊が二十名ほど待機していた。


勇者と聖女は馬車に乗り、伝説の剣がある洞窟へと向かって行くのであった。


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ここまで、お読み頂きありがとうございます。

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次回の話はまだ決まっておりませんが……

勇者の続きになると思います。

ご期待ください。

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