6:期末テストからの夏休みの始まり!

 夏休みの前と言えば、学生なら皆嫌がるアレが来る。 そう、期末テスト。


 かく言う私もテストは嫌いで、出来ればやりたくない。 でも少しだけメリットもあって、それは普段より少しだけ早く帰れる事。


 そして今回のテスト、なんといい点を取ると沙樹くんがご褒美をくれるらしい。


 一体何をくれるんだろう?


「と言うわけで、僕の言った目標点数取れたら、ご褒美だから頑張ろうね!」

「うん!! 絶対目標点取る!!」

 最近の沙樹くんは私に妙に甘い。

 だけど、今回の目標点数はかなりシビアな点数で正直取れる自信は無かったり。


 それから教室に入った私達はテストを受ける準備をすると、いよいよ期末テストが始まった。



「あああああああ! 疲れたよおおお!」

「しずくちゃんおつかれ様。

 テストはどうだった?」

「これがね、思った以上に出来た気がするの!

 ふっふっふ、これはご褒美ゲットかなぁ⋯⋯?」

「もし取れたら、その、女装とかしながらお出かけもOKにしちゃうよ」

「えっ?」

 今、なんと?


「だから、僕が女装しながら、一緒にお出かけしてもいいよ⋯⋯?」

「ほ、本当に!?」

 デートじゃん! 女装した沙樹くんとデートじゃん!!


「で、でも沙樹くんは良いの? 恥ずかしくない?」

「しずくちゃんが喜んでくれるなら⋯⋯それに今回すごく頑張ったの僕は知ってるから⋯⋯」

「先生脅してでも取ってくる」

「それはダメだよ!?」

 そして私はテスト返しの日まで結果が気になって夜以外眠れない体になってしまった。



「今日⋯⋯やっとテスト返しだ⋯⋯」

「し、しずくちゃん大丈夫?」

「テストの結果が悪かったら大丈夫じゃないかも」

「そればかりは僕にはどうしようもないかなぁ」

「でもなんとなく大丈夫な気がする」

「本当?」

「まぁまぁ、見ててよ沙樹くん!」

「ふふっ、取れてると良いね?」

「沙樹くんと女装デートするんだ⋯⋯」

「⋯⋯そんなに楽しみなの?」

「だって沙樹くんの女装本当にクオリティ高くて好みなんだもん!」

「ほ、本当?」

「本当だよ本当!」

 私がそう言うと、沙樹くんは嬉しそうな顔をした。 可愛い。


 あれ?私、男の子の状態の沙樹くんに可愛いって思った⋯⋯?


「⋯⋯まさかね」

「どうかしたのしずくちゃん?」

「ううん、なんでもないよ!」

 それからテスト返しが始まると私の顔は笑顔に染まって行った。


「やった⋯⋯」

「しずくちゃん結果はどうだった?」

「ふっふっふ⋯⋯聞いて驚いたらダメだよ沙樹くん」

「じゃあ聞いちゃおうかな?」

「なんと! 全部八十点越えだったよ!!」

「おぉー! しずくちゃんやったね!」

「ありがとう沙樹くん!

 ⋯⋯ちなみに沙樹くんは何点だったの?」

「五教科で四百九十点だったよ」

「私、一緒の大学行けるかな⋯⋯?」

「いや、僕そんな難関大学入るつもり無いからね!? ⋯⋯それにしずくちゃんと一緒に行けなくなるの嫌だし」

 ボソリ、と最後に何かを呟いた沙樹くん。

 私にはその声は届かなかった。


「えっ?何か言った?」

「う、ううん! 何でもないよ?」

「それじゃ、ご褒美は何がいい?

 僕に出来る事なら、何でも良いよ!」

「じゃあ遊園地行く時、女装して欲しい!」

「⋯⋯わ、分かったよ」

「やったああああああああ!!」

「で、でも、遊園地行く前に夏休みの課題を終わらせる事、これも条件だからね!」

「秒で終わらせるよ」

「本気度高くないかな??」

「だって楽しみだもん!」

「⋯⋯楽しみにしてくれてるなら良かった」

「絶対女装してね沙樹くん!」

「約束は守るよ! 男だもん!」

「女装してる時点でどうかと思うけど」

「しずくちゃん、それ言ったらおしまいだよ」



 そして期末テストも無事終わりやってきた夏休み!


 そう、今日私は!


「うぅ⋯⋯さきくーん⋯⋯ここおしえてぇ⋯⋯」

「しずくちゃん、聞くの早いよ!?

 こう言う計算はちゃんと自分で答えを出す癖を付けないと!

 ⋯⋯一応公式のヒントはあげる。

 この中のどれか、だよ?」

「あっ、これ!」

「んっ、正解。

 公式分かったら後は大丈夫だよね?」

「うん! 沙樹くんありがとう!」

 沙樹くんと勉強をしています。


 はい。 課題の一部が全く分からなくて沙樹くんに頼ってました。


「これで数学も半分終わったよぉ⋯⋯」

「まだ夏休み始まって三日なのに頑張ったねしずくちゃん」

「沙樹くんありがとう⋯⋯ちなみに沙樹くんは?」

「あとは国語と化学だけだよ」

「早くない?」

「結構急いで終わらせたからね⋯⋯しずくちゃんと一杯遊びたかったし」

「沙樹くん⋯⋯ごめんね⋯⋯私が遅いせいで⋯⋯」

「大丈夫だよ! その分僕も教えてあげられる時間増えるからしずくちゃんの為にもなってるし!」

「うぅ、沙樹くんええ子やぁ⋯⋯婿に欲しくなる⋯⋯」

「む、婿!?」

「まぁ、例えだけどねぇー」

「た、例えなんだ⋯⋯」

 ちょっと沙樹くんがしゅんとしたような気がするんだけど、気のせいかな?

 いやいや、まさか⋯⋯ね。


「しずくちゃん、今日中に数学終わらせよっか」

「えっ?」

「終わらせられる、よね?」

「アッ、ハイ⋯⋯」

「出来たら、ご褒美、あげるよ?」

「!?」

「何して欲しい?」

「じゃ、じゃあ⋯⋯またひざまくらを⋯⋯頭も撫でてくれると⋯⋯」

「いいよ」

「ちょっと集中するね沙樹くん」

「現金すぎない!? しずくちゃん!?」

「人間とは愚かな生き物なのだよ沙樹くん」


♢(テスト終わった後のクラスメイト達の会話)


「なぁ、水城さんと沙樹ってさ、付き合ってるのか?」

「いんや、付き合ってないらしいぞ?」

「いやあれ相当長い事付き合ってるカップルだろあのイチャつき方」

「俺もそう思う」

「男子ぃー面白い話してるねー」

「いやさ、水城と沙樹って付き合ってるようにしか見えないよなって話してて」

「あーやっぱ男子にもそう見える?

 あたしたちもそう思ってたんだよね」

「今年、二人くっつくと思うか?」

「どーだろ、幼馴染って結構負けるらしいし微妙なとこじゃない?

 それに沙樹くんって女子からの人気凄いから、うかうかしてると取られちゃうんじゃないかなぁ」

「やっぱ女子ウケいいよな沙樹って」

「可愛いし、優しいし、頭も良い。

 良物件っしょ」

「「だな」」

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仲の良い男の子に女の子好きだとバレたら次の日から女装してくるようになりました 二兎凛 @nitorin

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