05:ママ⋯⋯
月曜日、それは気分が滅入る週の始まりの日。
昨日の最高な一日を思い出すと、早く休みが来て欲しいと考えてしまう。
「んー! 今日も学校行ってきますかぁ⋯⋯」
けのびをしながら呟くと私は部屋から出る。
「それじゃお母さん行ってきまーす」
「しずく、気をつけてね」
「うん! 分かってるよ!
お母さんもお仕事頑張ってね!」
お母さんに声をかけて家を出ると、通学路で沙樹くんと合流する。
「沙樹くん、おはよ」
「しずくちゃんおはよう」
「沙樹くーん、最近急に暑くなってきてだるいよぉー」
「しずくちゃん本当夏苦手だよね」
「夏は嫌いじゃないよ? もうすぐ夏休みだし」
「夏休みは一杯勉強しないとだよ?」
「うぅ⋯⋯勉強、しないとダメかな?」
「僕はしずくちゃんと同じ大学行きたいなぁ」
「⋯⋯勉強します」
「で、でも? ずっと勉強も厳しいと思うから、毎日コツコツ少しずつでも良いと思うけどね? モチベーションって凄く大事だし、ね?」
「沙樹くん⋯⋯分かってる!」
「え、えっと、ね、しずくちゃん」
「どうかしたの?」
「実はお母さんに、遊園地のチケット、貰ったんだ⋯⋯」
「へっ?」
「だからさ、夏休み、一緒に行かない、かな?」
「うん!良いね! 楽しみにしてる!」
「えへへ、僕も楽しみにしてるね!」
そんな事を話していると学校はもう目の前に。
「それじゃ今日も頑張ろうねしずくちゃん」
「うん⋯⋯だるいけど頑張る⋯⋯」
そして私は気怠さを我慢しながら授業を受けた。
「疲れたぁ⋯⋯」
放課後になる頃には暑さや授業の疲れがドッと出てきて物凄い倦怠感に襲われた。 でもちゃんと授業を受けたのは我ながら偉いと思う! えっへん!
「しずくちゃんお疲れ様」
「沙樹くんもおつかれさまー」
「ふふっ、しずくちゃんってばぐでぐでになっちゃってるね」
「だって疲れたんだもんー」
「じゃあそろそろ帰ろっか」
「うん」
そして私たちは二人揃って学校から帰ると、今日は私の家に集合する事になった。
軽くシャワーを浴びて汗を流し、沙樹くんが来るのを待っていると、すぐに沙樹くんは私の家にやって来た。
「おじゃましますー」
「沙樹くんいらっしゃーい」
「しずくちゃん、本当にぐでぐでになってる⋯⋯」
テーブルの上でだるーんとしている私を見て沙樹くんは笑いながらそう言った。
「だってやる気出ないんだもんー」
「じゃあどうしたら元気出るかな?」
「うーん、女装した沙樹くんによしよしして貰ったら出るかも⋯⋯なんて」
「えっ」
「じょ、冗談だよ?」
「本当に、それで元気になってくれる?」
「も、もしやってくれたら元気百倍だと思うけど⋯⋯」
「きょ、今日は無理だから⋯⋯明日⋯⋯ね」
「えっ!? いいの!?」
「最近しずくちゃん苦手な勉強頑張ってるし、特別、特別だよ?」
「やったー!」
「それじゃ、しずくちゃん今日は勉強頑張ろっか」
「う、うん⋯⋯お手柔らかにね?」
「しずくちゃん次第かなー?」
「が、頑張ります⋯⋯」
それから私たちは滅茶苦茶勉強した。
♢
そして待ちに待った次の日、放課後になり爆速で家に帰った私は爆速で準備を終えると沙樹くんの家に遊びに行った。
「おじゃましまーす!」
「あら、しずくちゃんいらっしゃい。
凄く機嫌が良いのね? やっぱり沙樹ちゃんの女装かしら?」
「うぇぇぇ!? も、もしかして沙樹くんに女装教えたのって⋯⋯」
「もちろん私よ?」
「本当に最高です⋯⋯」
「ふふっ、ありがとう。
今日の沙樹ちゃんも可愛く出来てるからきっと満足してもらえると思うわよ?」
「ごくり⋯⋯」
「それじゃ、沙樹ちゃんも待っているから部屋に行ってあげてね」
「は、はい!」
私は凪さんに挨拶を済ませると沙樹くんの部屋に入った。
「しずくちゃん、お疲れ様」
「あぁ⋯⋯沙樹くん可愛いねぇ⋯⋯」
「ふぇっ!? 部屋に入って第一声がそれなの!?」
「だってこんなに可愛いんだもん⋯⋯褒めたくもなるよ!」
今日の沙樹くんは薄手の長袖の上にエプロンドレスを着ている。
しかもスカートを着てるからもう見た目が完全にママ⋯⋯でも、暑くないのかな?
「と言うか今日の沙樹くんは完全にあれだよバブみが深いよ⋯⋯」
「バブみって何!?」
「そんな事より昨日言ってたやつやって欲しい!!」
「凄いがっついてくるねしずくちゃん!?」
「今日は沙樹くんママに甘えるの!!」
「ママになんてなってないよ!?」
「ほら!なでなでしてー!」
「はいはい、これでいいかな?」
沙樹くんは立ち上がると座っている私の頭を撫で始めた。
「はふぅ⋯⋯」
「よしよし」
そんな風に頭を撫でてくれる沙樹くんの声は非常に優しい声をしていて、とても心地いい。
「ねぇ、膝枕しながら撫でて欲しいな⋯⋯」
「⋯⋯特別だよ?」
「うんっ!」
「夏休み、勉強頑張る?」
「がんばる!」
「じゃあやってあげる。 はい、どうぞ」
「わーい!」
「しずくちゃんお疲れ様、いっぱい頑張ったね」
「はふぅ⋯⋯」
「よしよし」
「ママ⋯⋯」
「ママはやめて!?」
それから私は一時間ほど膝枕なでなでを堪能してやる気エネルギーを大量に補充した。
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「沙樹ちゃんってば、やっぱり才能あるわね⋯⋯流石私の子⋯⋯」
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