第92話 命令
どうにか湧き上がる怒りをおさえ込んだ俺は一度深く深呼吸をした後、
「アザゼル、メフィスト、居るか?」
と小さく呟く。
すると、
【御身のお側に】
《我が君、ここに》
すぐさま俺の背後に、アザゼルとメフィストが片膝を付きながら現れる。
「俺が見た記憶は共有しているな?」
【もちろんでございます、御方様】
《同じくであります、我が君》
「よし。ならお前らは今すぐ帝都に行って、王女の記憶に出てきたクズ共の情報を集めてこい」
俺が命令すると、
【畏まりました御方様! 全てこの我にお任せくださいませ、恐れ多くも御方様を不快にさせたゴミクズ共に生まれてきた事をたっぷりと後悔させてから、地獄へ落としましょょょょうう!!!!】
アザゼルが両手を広げながらそう叫ぶと、
《ん〜ん。我が君より初めての神言、ああ、喜びで胸が震えるるるぅぅぅぅうううーーーーーーー!!! 必ずや小生が我が君の憂いを晴らしてご覧に見せましょう!!!》
メフィストが恍惚とした表情を浮かべながら叫んだ。
「あんまり目立たない様によろしく。あと、ヤバそうな時は自分の命を優先しろよ!」
【おおー!! 我の様なゴミムシに勿体ないお言葉、ありがたき幸せ!】
《我が君のお言葉、必ずや厳守致します!!!!》
と、歓喜に満ちた声をあげながらその場から消えていった。
「任せたよ二人とも」
二人がいなくなった場所へと視線を移しながら俺はそう呟いた。
■■■■■■■
〜エドワードside〜
圭太がアザゼル達に命令を下す少し前。
人質交換として連れてこられた第二王女を見て、王国側の大臣や重役達は安堵した表情を浮かべるが、逆にエドワードは誰にも気付かれない様に拳を強く握りながら、必死に怒りを抑え込んでいた。
(ふざけるな!!! 外道どもが!! こんな、こんな仕打ちがあっていいのか?!)
王族の血縁であるエドワードは当然、幼い頃から王城へ行く機会が多くあった。そのため第二王女であるティリスとは、護衛などでよく顔を合わせる関係だったエドワードは王女を一目見ただけでその変化に気づくことができた。
まるで老人の様に痩せ細っている体、死人のような生気のない瞳、そして化粧で誤魔化してはいるが顔に痣の痕があるので、明らかに拷問などを受けた事が容易に想像できる。ひとりっ子のエドワードにとって妹のように可愛がっていたティリスへの仕打ちに、エドワードは怒りで今すぐにでも感情の赴くまま帝国へと攻め入り、滅ぼしてしまいたいほどに………
(こい、〈モルガ–––)
エドワードが感情の赴くまま、聖剣を召喚しようとした次の瞬間、
爆発寸前のエドワードを冷静にさせる程の出来事が起こった。
(––––?!こ、この気配は……ケイタの………)
そう、エドワードが聖剣を呼び出そうとしたちょうどその時、馬車の中で会談を見ていた圭太も王女の状態を確認し一瞬だけ怒気を発したのだ。
(そうか、ケイタも気づいたんだね……なら、僕は僕のやるべき事を全うしないとダメだよね)
圭太のお陰でエドワードは冷静になる事が出来た。
その後、無事に人質交換は終了した。
■■■■■■
〜sideドラクル〜
6騎将の1人であり、帝国最強の暗殺者である「死神」ドラクルは、久方ぶりに冷や汗をかいていた。
(なんだ……なんだこの殺気は?!これほどの殺気は師匠くらいしか……)
自らの師匠である初代死神と同等の殺気を感じ取ったドラクルは動揺した。そもそもドラクルが今回の会談に参加した理由は、メリッサの監視と第三皇子であるライナーの始末を命令されたからである。
ドラクルからすれば、
〈風の大精霊〉と契約している程の実力者だ。けれどドラクルはそれを含めてライナーの暗殺は可能だと確信していた。いざとなれば切り札を使えば良いと思っていたからだ。
だがそんな中、自分をも超える殺気を感じ取ったドラクルは焦った。
そりぁもうめちゃくちゃ焦った!
なにせ自分よりも強者が、目の前にいる「剣聖」の他にもう一人居ると言う事実が発覚したからだ。
これでは、計画していたライナー暗殺は実行出来ない。それだけじゃなくてメリッサの監視も細心の注意を払う必要になったからだ。
(さて、どうしたものか……)
ドラクルは一人で頭を悩ませるのだった。
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お知らせです。
仕事の関係で誠に勝手ながらしばらくの間、更新をお休みします。
再開についてはまだ決まっておりませんが出来るだけ早く再開できる様に頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
一つ星シェフの異世界グルメ記 その料理人は最強チートスキルで食材(モンスター)を美味しく料理して行く!! クリームメロンパン @Mutenka4649
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