1 新入生歓迎会殺人事件(7)
新入生がいなくなり、片付けの時間になっても
「どうしたんだ、松岡先生?」
『三角巾』が心配そうな顔をする。
「松岡、最後まで嫌がらせする気かしら?」
「いや、いくら松岡先生でもそれはやんないだろう?」
歓迎会の中心になっていた三人が集まる。他にも、後片付けで各部活一人ずつ残ってもらっている。何気にユキも残っていた。
嫌がらせだったとしても、松岡先生はさすがに最後の挨拶には出る気がする。自分の顔が潰れるようなことを嫌う性格だ。それに、なんだか妙に嫌な予感がした。
ちょうど近くに
「師岡先生、すみません」
「どうかしたの?」
師岡先生はいつも通り生気がない返事をする。せっかくの二枚目が三割ダウンだ。
「松岡先生を知りませんか?」
「松岡先生? 見てないけど。さっき、挨拶が松岡先生じゃなかったのは、先生がいないからだったんですか?」
いかにも社交辞令っぽく質問された。せっかくなので、話に巻き込むために説明する。
「──というわけです」
師岡先生の顔がいかにも聞かなきゃよかった、と語っていた。聞いた以上何もしないのも罪悪感があるらしく、ポケットからスマホを取り出した。
「一応、松岡先生にかけてみるけど、それでいい?」
「お願いします」
部長たちも師岡先生に注目する。師岡先生は本当に居心地悪そうだ。
「……取ってくれないな」
「電源は切られてないんですか?」
「電源は入っている」
じゃあ、どこかにスマホを置きっぱなしにしているのだろうか。
考えていると、後ろから足音と共にスマホのバイブレーションの音が聞こえた。
「おい、
ユキが使い込まれたスマホを持ってきた。片付けの最中に見つけたんだろう。
「左端?」
「ええっと向かって左側。演劇部か、オーケストラ部が落としたんじゃないか。一番後ろの幕のところだったから」
ステージの左側を見る。確かにステージ全面を使っていたのは、その二つの部活くらいしかない。
「ちょっと待って」
「そのスマホ、
「えっ?」
俺はスマホを確認する。
「じゃあ、松岡先生はどこにいるんですかね?」
俺はユキたちが言っていたステージの左側へ移動する。
なんだ、これ?
床に水滴が落ちて湿っている。あとかすかに汚物の臭いがした。演劇部が使ったであろう脚立の前だ。
「きゃあっ!」
ユキにくっついていた女子生徒の一人が目を見開き、尻もちをついていた。彼女は口をパクパクさせながら、震える指でステージの左上をさしていた。
俺はそれを目で
すると──。
引き割幕とかすみ幕に隠れるように、変わり果てた姿の松岡先生が首を
脚立の上には靴が
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試し読みは以上です。
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迷探偵の条件【増量試し読み】 日向夏/MF文庫J編集部 @mfbunkoj
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