見た目

バブみ道日丿宮組

お題:謎の同情 制限時間:15分

見た目

 母が死んだ。父も死んだ。残ったのは幼い妹と自分の二人だけ。

 原因は火事。しかも放火。犯人は私と同じぐらいの中学生。親戚の家をたらい回しにされてる間に捕まったと警察に聞いた。

 面会時に謝罪の言葉はなかった。

『お前らは気持ちが悪い』

 浴びせられたのはそんな言葉だった。純正な人種のみがこの街で生きる価値があると少年は笑ってた。世界はそうやって出来てるんだと私たちに説教をするくらい愉快そうだった。

 嗚咽まみれの妹を慰めるために、私たちはデパートのちっちゃな遊び場を選んだ。小さな遊園地。妹は他の子どもたちとじゃれ合いながら遊んでる。そこに純正な人種というのはない。

 親たちも別にこれと言って変な視線は向けてはいない。

 だが……その心まではさすがにわからない。

「……」

 ゆえに私の近くの休憩用の椅子には人がいない。数にして10人はまだ座れるというのに反対側の椅子に皆が押しくら饅頭のように座ってるのが見える。

「……」

 これが現実なのだ。

 見えないだけで、壁がある。

 ふぅとため息をつくしかなかった。もう家族は妹しかいない。守れるのは私しかいないのだからしっかりしなきゃ。

 ……少年は少年院に入ってもすぐ出てくるのだから。強くならなきゃいけない。

 おそらく同じことを繰り返すだろうと、私たちを今保護してる警察官は悲しそうに表情を曇らせてた。法律がある限り、守られるものは守られる。そこに正義も悪もない。

 同じ人間だから、時間を与えれば許される不平等な世界。

「……」

 そんなことはわかってる。

 私たちが気持ちが悪いというのは、わからなくもない。

 手鏡で自分自身をみても、他に遊んでる子どもや親、その他の人と違うとはっきり笑う。

 ハーフ。しかも叔父も叔母もハーフ。つまりはクォーターの血が私たち。

 髪の毛は中途半端に白髪と金髪。瞳は赤。妹は黒と金髪、瞳は薄い銀。

 変だと思われないのが不思議なくらいだ。

 だからって、放火される所以はどこにもない。警察官が私たちを撫でながらいってくれた。

 

 そして、私たちは警察官の養子となった。


 そこには何の同情があったのかはわからないけれど、彼女が見る私たちはとても優しい。それだけはわかってる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

見た目 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る