第14話 人外獣理第二番・ダミアン
違和感はあった。いつでも、どこにでも。
それを見逃していたのは自分達だ。
呪われた身になって、ようやくそれに気づいた。
自滅したルーガルー達は復活のための生贄だった。
そう、彼女こそが呪いの根源。
セシルは語る。
「まず、私達が第二番を倒したかに思えた、その日がおかしかったんです」
「なにが?」
「貴女は身体を庇って第二支部へと入って来ました」
「それだけ?」
「貴女はいつも単独でルーガルーを狩りに行きます。それもまだ被害が明るみに出てないものばかり。特攻弾も持ち歩かずに」
そんなところまで見ていたのかとブレーズは驚きにくれて会話に入れない。
「うんうん、それで?」
「そして、最後、ルーガルーたちの言葉です。『王位の復活は近い! 王位は眼前に!』王位が眼前にと言ったんです。目の前に第二番が居ると眷属がその口で」
「なるほど、それがなり損ないちゃんの推理だ。んじゃ容疑者の反論と行こう」
ダミアンは口が裂けるような獰猛な笑みを浮かべた。
「正解! いやぁ、こういう堅っ苦しい立場ってのは疲れるんだよなぁ」
「そんな!? 一体いつから――」
「ん? そうかブレーズにとっては衝撃なのか。そんなの最初からだよ。
「ダミアン課長が最初からルーガルーだった……?」
「先輩、構えて下さい。わたし達で倒すんです。第二番を!」
「いいねぇ、その殺気。そうでなくっちゃ
夕暮れの時、決戦が迫る。
ライフルを構えるブレーズ、爪を地面に立てるセシル。ジャポネーゼ仁王立ちで二人を見つめるダミアン。
決戦が始まる。
「
「
天よりの一撃と、地面から生えた岩山がぶつかり交差する。その衝撃に必死に耐えるブレーズ。地面がたわむ。世界が揺れる。
「先輩、お願いです。信じさせてください」
「……セシル。分かった。やってやるよ。お前を美人のお姉さんだと思ってな」
「一言余計です。ブレーズさん」
二人してダミアンへと戦いに入る。より強化された高周波ブレードを構えるブレーズ。セシルが先行する。爪と腕がぶつかり合う。
「弱っちいんだよォ! なり損ないがァ!」
「きゃっ!?」
「セシル!?」
岩山に叩き付けられるセシル。半獣でなければ血の霧に変わっていたであろう一撃。ブレーズは思わず身震いする。
「ほらほら、どした? お前の番だブレーズ。私を殺しに来い」
「言われなくても……」
高周波ブレードと腕が交差――しない。内に潜り込んで喉元を狙う。
(このまま掻っ切る――)
つもりだった。ブレーズの視点が百八十度回転する。天と地が逆転する。
「
ブレーズは頭から落ちていた。下に岩山が遠く見える。かなり高空へと吹き飛ばされていた。このまま激突したら血飛沫と化すだろう。どうにかしなければ。
「セシルーッ!!」
「ホントに、世話の焼ける先輩だなぁ」
岩山から飛び出す影にキャッチされるブレーズ。それはボロボロになったセシルだった。
「悪い、信じさせてやりたかった」
「いいえ、充分です。力は溜りました」
「力?」
「はい。アイツを喰らい尽くせるだけの力です。いっぱいぎゅってしてください先輩」
「……なんか恥ずかしいんだが」
「いいじゃないですか、減るものじゃないし」
セシルに抱き抱えられていたブレーズは抱き返す。
「これでいいか?」
「……はい、行きます。
光を纏う二人、それは一筋の流星となって、ダミアンへと降り注ぐ。
「ハッ! いいじゃねェか! そう来なくっちゃなァ!
力の奔流がダミアンへと集まって行く。それを一気に流星へと放つ。ぶつかる力の奔流と一筋の流星。空中でぶつかり、流星が突き抜けた。
「なっ!? そんなわけ――」
あるはずがない、そう言い切る前に。ダミアンは上半身と下半身で両断された。ブレーズが構えた超高周波ブレードによって。降り立つ二人。ダミアンが己の下半身へと腕だけで近づこうとしている。
「まだだッ! まだッ!」
「チェックメイトだ。課長」
心臓に特攻課特製ライフルを突きつけるブレーズ。
「……まだ私を課長と呼ぶのか」
「正直、好きでしたよ。貴女の事」
「ハッ! 私は嫌いだったね。お前みたいなナンパ男」
「そうっすか。さよならです」
銃声が一つ。街に
「終わりましたね」
「だな。帰ろうか」
「はい」
二人はそっと帰路に着く。岩山のテクスチャはもう消えている。そして。
「あっ!?」
「うおっ、どした」
「あれ? あれ?」
「なにそのにゃんにゃんポーズ……」
「獣化出来ません!」
「あー……呪いが解けたんだな」
「やりました!」
しばらく悩むようなフリをしてブレーズが。
「猫も可愛かったけどな」
と言った。
かんかんに怒ったセシルにしばらく追いかけまわされる羽目になるのだが、それはまた別のお話。
呪われた獣に弾丸を 亜未田久志 @abky-6102
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