第10話 二人の復讐者
自分の手で人を殺したのに不思議と罪悪感は無かった。
手に残っている感触が復讐を達成した証のように思えた。
「終わったか……」
手に付いた血を拭いルカの元へ向かう。
「終わったぞルカ」
「終わりましたか……」
「どうした?」
「いえ、何も出来なかった自分が情けなくて……」
「情けなくなんかない。ルカのおかげでアイツをやることが出来たんだ。決して無駄じゃない」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「二人の手柄だ」
俺達は生きている盗賊を拘束し、街へと戻った。
街へ戻るとギルドの前には俺が解放した少女達がこちらを見ていた。
「無事街まで辿り着いたんだな」
「はい、本当にありがとうございました。感謝してもしきれません……」
「無事で何よりだよ」
俺達は依頼達成の報告のためギルドの中へと入るといつもと違って少し騒がしかった。
「どうかしたんですか?」
「ライト様ですか!?ご無事でしたか?」
「一応大事には至っていませんけど何かあったんですか?」
「ライト様が受けた緊急の依頼の盗賊が大盗賊団の『黒羊の影団』ということが発覚しました。直ちに騎士団を向かわせていますのでご安心ください」
「えっと……」
俺達がやった盗賊団のことだよな……。
確かに弱くはなかったけどそんなにヤバい奴らなのか?
てか騎士団が向かってるって…、もう全員やっちゃったんだけど…。
「その盗賊団、もう拘束してあります」
「はい?」
「いやだからもう全員捕まえてあります」
「それは本当ですか?」
「はい」
「『黒羊の影団』のリーダーのレベルは30は超えているんですよ?流石にライト様でもそんなこと出来るわけが――」
「ギルドマスターはいるか!?」
野太い声がギルド内に響く。
入口に目を向けると鎧を着た一人の男が立っていた。
「騎士団長様ですか!?」
「嗚呼、今すぐギルドマスターを呼んでくれ」
「た、只今――」
騒がしかったギルド内が静まり返っていた。
騎士団長と呼ばれたその男がギルド内を見渡す。
すると貫禄に圧倒されていた俺と目が合った。
騎士団長は一歩一歩力強く俺に近づいて来る。
そして目の前まで来ると何も言わずに俺の目を凝視する。
凝視というより睨んでいると言った方が正しいか。
「あのー…」
「貴様、ランクはなんだ?」
「Eランクです…」
「ふん、ただの世間知らずか」
コイツは何がしたかったんだ?
世間知らず?
どこを判断して世間知らずだと思ったんだ?
「騎士団長様、お待たせしました」
「ガウン久しいな」
「お久しぶりです」
「単刀直入に聞く、このギルドで今日盗賊の身柄の拘束の依頼を受けた者はいないか?」
「今すぐ確認いたします―――確認出来ました。Eランクのライトという者と同じくEランクのルカという者が依頼を受けていますね」
「それはどいつだ?今このギルド内にいるか?」
ライトとルカって完全に俺たちのことじゃないか。
盗賊団をやったのがそんなにまずかったか?
めんどくさい事になりそうな予感がする。
ここは一旦ここを離れよう。
俺はルカと一緒にギルドを出ようとするがそれは叶わなかった。
「ライト様とルカ様はあのお二人です!」
いつも俺達の依頼を見繕ってくれる受付嬢が言った。
ギクッ。
おいおい何言っちゃってるんだよ!
わざとじゃないんだろうけど空気読んでくれよ。
確実に俺とルカが面倒な事に巻き込まれるだろうが。
「お前達か。やっぱり何かあると思っていたんだ」
「何ですか?」
「お前達が『黒羊の影団』をやったのか?」
「多分そうです」
「お前達は一体何者なんだ?報告された場所に着いたら全員拘束されていた。リーダーのグランに至っては死んでいた」
「俺達を捕まえるつもりですか?罪に問うなら俺だけにしてください。俺がアイツを殺しました」
「そんなことはどうだって良い。盗賊に情けなんかない。死んでも死んでいなくても私には関係のない事だ。さっさと答えろ。アイツらは全員20レベルを超えている猛者ばかりだ。お前達は一体何者なんだ?」
「ただの冒険者ですよ」
「ただの冒険者だと?ふざけるのも大概にしろ。ただのEランクの冒険者があの盗賊団をやれる訳がない」
「本当にただの冒険者ですよ。ていうか相手は強くても約30レベルですよね?それは倒せるに決まっていますよ」
「…お前は何を言っているんだ?」
「はい?」
「30レベルって言うと王直属騎士団に入れるくらいと強さだぞ。Eランクのお前が倒せるわけがないだろう」
ゴブリンを倒しただけだ上がったレベルだぞ。
30レベルでそんな強いわけがないだろう。
コイツ、俺を試しているのか?
「これが俺のギルドカードですけど」
俺はギルドカードを見せる。
そこには俺のステータスが書かれている。
これを見れば一目瞭然だろう。
―――――――――――――――――――――――
【ステータス】 保有SP : 0
〈名前〉 ライト=ミヤシタ
〈レベル〉 68
〈称号〉 ――――――
【体力量】100〔+〕
【魔力量】100〔+〕
【攻撃力】100〔+〕
【防御力】100〔+〕
【敏捷性】100〔+〕
【回避力】870〔+〕
【幸運値】1.0 〔+〕
―――――――――――――――――――――――
「何だこれは…!」
「俺のギルドカードですけど…」
「これは…貴様、偽造しているな」
「してないですよ」
「何だこのふざけたステータスは?レベルが68だと?こんなレベルありえない。ステータスもふざけてるな。【回避力】しか上げていないなんてバカ同然だな」
ピキッ。
コイツ俺のステータスをバカにしてるのか?
レベルにもいちゃもんをつけやがって。
今すぐ殴り倒してやりたいが耐えろ。
相手は騎士団長だ。
俺なんかが勝てんわけがない、我慢だ。
「ふざけてなんかないですよ。これが俺の本当のステータスです」
「まだそんなことを言うのか。時間がもったいない。じゃあここで本当のステータスを確認してみろ。ここには機材が揃っている。さあやってみろ」
「分かりました…」
俺は冒険者登録をした時と同様、水晶に手を乗せる。
そして石板に俺のステータスが映し出された。
「これは…まさか本当に…」
「だから言ったでしょう。ついでにルカのも見せてやってくれ」
ルカのステータスが映し出される。
「……」
空いた口が閉まらないとはこのことと言わんばかりの反応だった。
「これで分かったでしょう。本当に俺達が盗賊をやった。もういいですか?」
「……ああ、すまなかった。だが一つやってもらわなければならないことがある」
まだ何か言うつもりか?
「何ですか?」
「お前が本当に盗賊を倒したのなら王都に来てもらう必要がある。あの盗賊団はかなり有名な盗賊団だ。倒した本人が王都のギルド本部にて報告をするのがこの国義務となっている。だから王都に来てもらう必要があるのだ」
「……まじですか」
こんな事になるんだったらこんな依頼受けなきゃよかったな。
しかも義務だってよ。
俺はゆっくり冒険者をやっていたかったんだが。
ふとルカの方を見ると何故か目が輝いていた。
「どうしたルカ?」
「王都って言えば大都会ですよね、一度でもいいから王都に訪れるのが夢だったんです」
「そうなのか、じゃあ行こうか。どうせいくのなら楽しもうか」
ルカが行きたいのなら行くしかない。
王都に行けば何か面白いものが見つかるかもしれないしな。
どうせ行くのなら楽しみたい。
「分かりました、王都にご一緒させて下さい。いつ出発するのですか?」
「一週間後にここを出るつもりだ」
「分かりました」
こうして俺達は一度この街から離れることが決まったのだった。
【回避力】を極めた俺は異世界にて無双する〜当たったら即死?そんなの当たらなければ無意味だよ?だから俺は【回避力】に全てを賭ける〜 御霊 @ryutamatama
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