第9話 決着
俺は新たに現れた盗賊のもへと向かう。
数は先程の三倍はいるな。
だがやれない訳じゃないだろう。
俺は短剣を握りしめる。
「にいちゃん諦めたほうがいいぜ。どれだけ腕に力があってもこの数だ。観念して死ぬんだな」
「戯言は勝ってからほざけよ雑魚どもが」
男達は馬鹿にするように笑う。
先に仕掛けよう。
数で押されたらどうしようもない。
俺は敵目掛けて突っ込む。
そして男達の間をするりと抜け、裏へと回り込んだ。
そして出来るだけ多くの数を剣の柄で気絶させた。
「いつの間にそんなところにいたんだ!?」
男達は驚いているがそんなことはお構いなしに気絶させ続ける。
少なくなれば何も怖がる必要はない。
しかしその攻撃は最後の一人の男に弾かれた。
「遅い…」
「少しはやるようだな」
丁度味気ないと思っていたんだ。
少しはやる奴が居ないとつまらない。
日本刀のような剣を握るこの男は他の盗賊とは違うものを感じた。
「今すぐやってやるよ」
「やってみろ」
俺が近づこうとすると気付いたら背後にいた。
速い!?
俺は腰を屈め、斬撃を回避する。
そして一度距離を取る。
恐らく【敏捷性】特化型のステータスだな。
攻撃の速さ、移動の速さでは勝てないと思った方がいい。
狙うは攻撃を交わした後できる隙。
【敏捷性】は単なる移動のスピードが速くなるだけ。
決して回避の速度が上がる訳では無い。
必ずそこに隙ができる。
そこを狙うしか――
連続する斬撃が迫る。
隙がない!?
回避してばかりじゃ状況は何も変わらない。
攻めないと。
俺は回避するのをやめ、斬撃目掛けて突っ込む。
一つ一つの斬撃がものすごい威力だ。
受け流そうにも衝撃を緩和しきれない。
【攻撃力】もかなり上げているな。
意識を集中し、全て受け流すか回避する。
「!?」
俺の行動が予想外だったのか男は驚く。
男は更に斬撃を増やす、がそれを全て回避する。
もう読めた。
慣れればこっちのもんだ。
俺の攻撃が届く距離になると相手の剣を弾き飛ばす。
「なっ!?」
剣がなければ何も出来ないだろう。
俺は首を掴み、地面に強く叩きつける。
鈍い音が響く、そして男は気を失った。
「ふぅー」
後はあの大男だけだ。
ルカ、今すぐ行く。
○○○
コイツは私の身体を舐め回すように見入っている。
今のうちにやれる。
手加減はしない。
「
水の弾が大男の身体にぶつかる。
しかしその攻撃は何もなかったかのように消滅した。
「痛いな嬢ちゃん。大人しく俺と一緒に来ないか?俺と一緒にいたいなら良い思いさせてやるよ」
「黙って」
「こりゃ力尽くしかないな…」
やれやれと大男はルカへと近づく。
ルカはもう一度魔法を放つ。
しかし致命傷にはならない威力の攻撃だった。
「くっ…」
コイツ相当【防御力】を上げている。
私の魔法が通用しないなんて……。
「出来るだけキズはつけたくなかったんだけどな」
大男はルカの間合いに入ると拳を振り上げルカの頬目掛けて拳を振るう。
【回避力】を上げていないルカはその攻撃を回避する事が出来なかった。
「うっ……」
軽く吹き飛ばされたルカは感じた痛みに悶える。
痛い……。
だけどここで倒れたらお母さんとお父さんの仇がうてない。
立たないと。
立って戦わないと。
だけどどうやって倒すの?
私の攻撃は意味を成さない。
そんなことを考えていると大男はルカの目の前まで迫っていた。
「少し寝てもらう。目が覚めたらお前はもうオレのものだ」
大男の手がルカの首に迫る。
ルカは動くことが出来なかった。
あぁ…。
ライト様の気体に応える事が出来なかった。
私はライト様の役に立てたのだろうか。
復讐の機会を貰ったのに復讐を果たす事が出来なかった。
もっと私が強かったらお母さんもお父さんも死なずに済んだのに…。
大男がルカの首を捉える。
徐々に強くなっていく握力で息をするのが困難になる。
しかしルカに苦しいという感情はなかった。
自分の無力さに打ちひしがれるだけだった。
【体力量】が少なくなり意識が朦朧とする。
どうやらここまでのようだ。
ライト様には申し訳ない結果しか残せていない。
ライト様も私には興醒めしただろう。
ごめんなさい……。
一筋の涙が頬をつたり地面に落ちる。
それと同時に肉が切れる音と同時に目の前が赤で染まった。
「遅くなったな」
「ライト様…、申し訳ありません……」
「いいや、ルカがここまで耐えてくれたおかげでルカが死なずに済んだだろ」
「しかし私は……」
「大丈夫だ。あとは俺に任せろ」
なんとか間に合ったな。
もう少し遅かったらルカが危なかった。
ここまで耐えてくれたルカのおかげだ。
あとは俺に任せて休んでもらおう。
「ルカ、少し下がってろ」
「お前…俺の手を…」
大男は手首から血を垂れ流していた。
俺が手を切ったからだ。
しかし大男はポケットから液体の入ったビンを取り出すと傷口にかけた。
すると瞬時に血が止まり、傷が塞がった。
恐らくポーションってやつだろう。
他にも待っているかもしれない。
時間をかけると回復をし続けられるな。
大男は傷が塞がると俺の方を睨んだ。
「おい、お前俺に何をしたか分かっているのか?簡単には死ねないぞ」
「そうか」
「ナメた態度取れるのも今のうちだ。今すぐその顔を恐怖で溺れさせてやるよ」
大男は身体に見合わない速さで俺の方へ迫ってくる。
そして大剣で俺を狙う。
その件筋は確実に俺を捉えていたが俺は回避し、大男の後ろへと回り込んでいた。
俺はあえて剣を使わずに攻撃を仕掛けた。
少し
「ぐはっ!」
そしてすぐさま服を掴み足を払い馬乗りになる。
俺は拳を振り上げ殴りつける。
「一つ聞いても良いか」
殴りながら大男に問う。
「お前みたいなクズは殺しても良いよな?」
「……」
大男は意識が朦朧とし俺の言葉が届いていなかった。
そして更に強い力を拳に込める。
そして――
「死ね、クズめ」
俺の拳が大男の顎に直撃し、命を絶った。
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