第8話 復讐心


 次の日、ギルドでは緊急の依頼が張り出されていた。


 「盗賊の捕縛の依頼か」


 内容は盗賊の身柄を確保すること。

 至ってシンプルだがそう簡単には行かないだろう。

 だが報酬はかなりの量の依頼だ。

 薬草採集やゴブリン討伐の比ではない。


 「ルカ、どうする?」


 「盗賊には因縁があります。是非依頼を受けましょう」


 「かなり厳しい戦いになるかも知れないぞ?」


 「はい、ですが今の私にはライト様がいます」


 信頼されて悪い気はしない。

 ここは受けてみよう。

 俺達も強くなった。

 そう易々とやれられることはないだろう。


 俺たちは依頼を受け、記された村へと向かった。


 村へ着くとそこには異様な光景が広がっていた。


 「これは……」


 村の辺りには大量の死体が転がっていた。


 「い、いや……」


 「落ち着けルカ」


 息を荒げ震えだすルカの背中を摩る。

 そしてもう一度辺りを見渡すと森の方向に足跡があることに気が付いた。


 「ルカ、足跡だ」

 

 「行きましょう…」

 

 ルカは唇を噛み締め怒りを抑える。

 森へ入るとハッキリとした足跡がいくつもあった。

 そして足跡を追い続けて行くと森の中にあるはずのない広場が見えた。


 「恐らくあそこだ」


 「はい」


 「ゆっくり近づこう」


 茂みに隠れながら広場を覗くとそこにはキャンプ地のようなものが広がっていた。

 中央には檻がありその中には十数人の少女が捕らえられていた。

 奥の方には男達が寝ていた。


 「やっぱり盗賊か」


 「私の村を襲った盗賊です…」


 「ルカ、落ち着け、大丈夫だ。アイツらを絶対に捕らえよう」


 「分かっています…」


 「作戦を言ってもいいか?」


 「お願いします」


 作戦はこうだ。

 まずルカが広範囲の魔法で盗賊達の気を引く。

 その間に俺が捕まっている少女達を逃す。

 そして二人で盗賊達を拘束するというものだ。


 「いけるか?」


 「はい」


 そして俺達は作戦を実行した。


 ルカが魔法の詠唱を始める。


 「閃光スパーク……」


 そして瞬く間に辺りが眩い光に包まれる。

 男達は瞼越しに光を受けたが苦しむ。

 

 「ライト様今のうちに」


 「サンキュ、ルカ」


 茂みを飛び出し檻へと駆け寄る。

 少女達は何が起きているのか把握できていないようだった。

 腰から短剣を抜きそのままの勢いで檻を破壊する。


 「誰ですか!?」


 「助けに来たよ。もう大丈夫だよ」


 「助けですか…?」


 「嗚呼。すぐに逃げよう」


 「ありがとうございます」


 「お礼は後でいいから今はとりあえず逃げよう」


 少女達を檻から出させ、街の方へと逃げさせる。

 

 「よし、あとは盗賊を拘束するだけか」


 ルカの方へ向かうと盗賊と対峙していた。

 相手もやる気満々といった感じだ。


 「ルカ、大丈夫か?」

 

 「はい、大丈夫です。丁度目眩しが解けた所です」


 俺もルカも武器を構える。


 「お前ら何が目的だ!?何者だ!?」


 「俺達はただの冒険者だ。お前達の身柄を拘束するだけだ、大人しく拘束されてくれたら助かるんだが」


 「ナメた態度とりやがって、殺してやるよ!」


 男達は俺たちに向かい突進してくる。

 俺がルカの前に出ようとするが、


 「ライト様、私にやらせてください」


 ルカの顔は落ち着きを取り戻していた。

 しかしその奥には復讐心がハッキリと存在していた。

 ルカは一歩前に出る。

 

 「風刃ウィンドカッター……」


 男達の腕を跳ね飛ばす風の刃が無数に放たれる。

 だが目的は身柄の拘束。

 殺しはしない。

 

 「お、おまえ何者だ?」


 「ただの魔法使いです」


 しかし男達は伊達に盗賊ではなかった。

 あの威力の魔法を放つルカに恐れは無く、問答無用で襲いかかりにくる。

 

 「氷霧アイスミスト……」


 男達は一瞬で凍らされ動かなくなった。


 「終わったんですか…?」


 「よくやったルカ。カッコよかったぞ」


 「えっ?あ、ありがとうございます…」


 照れるルカもなかなか良いな。

 うん。


 しかしそんな時間も束の間、森の奥から新たな盗賊が現れた。


 「おいおい、これはどういうことだ?」


 その数は先程のおよそ三倍。

 ルカ一人では到底手に負えない数だった。


 「マジかよ…」


 別行動をしていたようだ。

 キャンプ地にいた盗賊達はほんの一部だったようだ。


 「二人で手を合わせればなんとかなるはずです」


 しかしそこからさらなる追い討ちが俺達を襲う。


 「ウルセェな、全く寝れねぇだろうが」


 テントの中から一人の大男が出て来た。

 人間とは思えないほど巨漢な男だった。

 ギルドで喧嘩をしたあの冒険者の男より巨漢な男だった。

 

 「何だ敵襲か?……おいおいかなりの上玉がいるじゃねぇか」


 巨漢な男はルカを舐めるように見入る。

 

 「あ、あの男は…」


 「あの男は何者だ?」


 「あの男は私の父と母を殺した男です…」


 「そうか…」


 俺は男を睨み、殺気を飛ばす。

 すぐにでも殺す準備は出来ていた。


 アイツがルカから幸せを奪ったクズ野郎なのか。

 どうやったらお前が苦しんで死ねるのか考えるのが楽しいよ。


 俺は気付いたら薄気味悪い笑みを浮かべていた。

 

 「はぁ!はぁ!はぁ!」


 「ルカ、大丈夫だ。アイツだけは絶対に仕留めよう。責任は俺がとる」


 依頼は盗賊の身柄の拘束。

 殺してしまっては依頼の意味はない。

 罪に問われるかもしれない。

 だがそれでいい。

 俺がこんなに憎しみを持っているんだ。

 ルカの持っているアイツへの憎しみは測りきれない。

 

 「ルカ、お前がアイツをやるか?」


 「はい…」


 「油断はするなよ。俺もコイツらを倒したらすぐに加勢する。危なくなったらすぐに俺を呼べ、分かったな?」


 「はい」

 

 そして俺達はそれぞれの役割を果たす為、俺は新しく現れた盗賊の元へ、ルカは巨漢な大男がの元へと向かった。





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